三菱化学グループ唯一のIT企業である菱化システムは、グループ会社のアプリケーションを連携させるためのデータ連携基盤をハブ&スポーク型に刷新した。従来のP2P(Peer to Peer)型の連携では、アプリケーションの追加や変更のたびに発生する開発や保守が負担になっていたからだ。グループ内外での企業や事業の統廃合も進む中で、システム基盤をより柔軟にするのが狙いである。新しいデータ連携基盤の導入・運用を担う菱化システムの鈴木輝亮グループマネジャー(販売物流システム事業部 販売物流システム1部)と、平田俊彦グループマネジャー(管理システム事業部 管理システム1部)に、これまでの課題や導入の経緯などを聞いた。(文中敬称略)
−−データ連携基盤を従来のP2P(Peer to Peer)型からハブ&スポーク型に一新しました。その狙いから教えてください。
鈴木グループマネジャー(以下、鈴木):グループ内を行き来するデータの流れを可視化することで、アプリケーション連携に伴う運用負荷を下げるのが最大の狙いです。
これまでグループ内のデータ連携は、データをやり取りしたいアプリケーションを個別に密結合するP2P(Peer to Peer)型になっていました。菱化システムが運用しているグループのアプリケーション数は400種類以上あり、それらを連携するためのプログラムは約4000本が存在しています。これだけの数になるとシステムは複雑になるばかりで、運用負荷も大きくならざるを得ません。システムをバージョンアップする際も連携プログラム側での対応が必要なほか、障害が発生しても、どこが原因なのかを見極めるのが難しいという課題もありました。
そこで今回、ハブ&スポーク型の疎結合方式に一新することを決めました(図1)。連携に必要なデータをハブ部分で一元管理することで、データの流れが把握しやすくなるほか、データを利用する側のアプリケーションに追加や変更があっても、データを提供する側のプログラムを変更しなくてもすみます。グループ企業各社の規模も大きくなってきていますし、例えば2017年4月には、三菱化学と三菱樹脂、三菱レイヨンの3社を統合し三菱ケミカルを発足させるなど、事業の統廃合もいつ起こるか分かりません。そうした経営環境の変化に追従できるデータ連携基盤になると期待しています。
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平田俊彦グループマネジャー(以下、平田):実際、事前検証では連携用プログラムの開発工数は22%削減できるという結果が得られました。単純なもの、中程度なもの、複雑なものを選び、それぞれをP2P型とハブ&スポーク型で開発した場合の工数を比較しました。1対Nでつなげるための仕組みでは、N側の対応は半減するとの結果も出ています。
ハブ&スポーク型を実現するのに採用したのは、米Informatica製の「Data Integration Hub(DIH)」という製品です。ハブ部分にあるデータベースに連携用のデータを一時的に格納し、データを利用する側のアプリケーションが取り出す仕組みです。
−−DIH導入は日本企業では、これが初めてと聞きます。
鈴木:そのようですね。ただ当社では以前から、同社のデータ統合用ソフトウェアの「Informatica PowerCenter」を導入していましたので、PowerCenterとの連携も考慮してDIHを選択しました。グループの拡大に伴い、連携プログラムの数も現状の4000本から6000本規模にまで増えると予測しており、それに対応するためのスケールアップが可能だという点も選択理由の1つです。
Informaticaとは2013年ごろから、次期データ連携基盤のあり方について相談を始めました(図2)。同年10月から2014年3月にかけては、Informaticaの米本社の幹部をはじめグローバルなチームでPoC(Proof of Concept:事前検証)に取り組んでくれましたので“日本初”に対する不安は感じませんでした。
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