[インタビュー]

「オムニチャネル2.0」とは何か?米NCRの上級副社長に聞く

2017年2月8日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

デジタルビジネス時代において何が起きるのかを知る格好の場である米国。2016年末から2017年初めにかけて、Macy'sやWalmart、Searsといった大手小売業が店舗閉鎖に動いていることが明らかになった。例えばMacy'sは店舗網の15%に相当する100店を、Searsも傘下の店舗30店以上を、2017年中に閉めると発表している。オンライン販売へのシフトが進む中で、店舗面積の過剰が限界に来ているためだ。実際のところ、どうなっているのか?

 これに対しオムニチャネルは、物理的なタッチポイントではなく、顧客が望む方法で購買体験を可能にする純粋なソフトウェアだ。ソフトウェアのプラットフォームを使って、店舗や物流、ECなどのタッチポイント同士を連携させ、データを分析し、価格も含めた新たな購買体験を提供する。ソフトウェアなのでオムニチャネルによる変化は見えにくい。日々改良が必要であるにせよ、企業が大きな投資をするのは10年に1回か2回だろう。そのためオムニチャネルによる変化は分かりにくいが、すでに大手を中心に当たり前の取り組みになっている。

 そんな中、登場したのがオムニチャネル2.0という考え方だ。IoTを前提にオムニチャネルをさらに進化させるもので、SNSなども含めて顧客に関わる情報をすべて連携させる次世代のアプローチだととらえて欲しい。

 もう少し説明すると「Me! Economy」という言葉がある。小売業は個々の消費者の好みを予測し、望ましい商品を提供しなければならない。そのためにIoTを使ってデータを集め、機械学習や予測分析を行う。ソリューションの鍵になるのは、モバイルと一貫したデータウエアハウス(DWH)と大規模なデータ統合である。

−−NCRは、オムニチャネルおよび同2.0について、どんなソリューションを提供しているのか?

 「Retail One」というプラットフォームを提供している。実際にはオムニチャネル2.0を実現するためのミドルウェア=ソフトウェアであり、サービス指向アーキテクチャ(SOA)に基づき、小売業に必要な様々な機能やサービスを包含している。特徴はERPなどの既存システムや店舗システム、Web、モバイルなどすべてを相互に連携できること。クラウド上にあるソフトウェアもオンプレミスのアプリケーションも、すべてをつなげるのがコンセプトだ(図1)。もちろんデータアナリティクスの機能も提供する。100以上の言語を変換できる。

図1:米NCRの「Retail One」の概要。オムニチャネルの実現に向け「すべてをつなぐ」をコンセプトに掲げる図1:米NCRの「Retail One」の概要。オムニチャネルの実現に向け「すべてをつなぐ」をコンセプトに掲げる
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 他社、例えば米オラクルや独SAP、その他のソフトウェアベンダーも類似のソリューションを提供している。だがオープンAPIという点では今一歩だ。Retail Oneは、オープンAPIドリブンという面で先を行く。これによってサードパーティ製のアプリケーションを組み込んで使えるようにしている。世界120カ国で展開しているのも我々の強みだ。

−−最後に、電子決済や電子マネーの普及などマネーレス化の動きについて聞きたい。デンマークやスウェーデンといった北欧諸国では現金を扱う銀行が減り、決済もクレジットカードやデビットカードが主流になり「現金を使うのは旅行者だけ」といった話を聞く。NCRのようにATM(現金自動預払機)大手には厳しい状況に思えるがどうか?

 欧州もそうだが、私が見るところ、「Alipay」(利用者は約4億5000万人と言われる)や「WeChat Pay」(同約2億人)などが普及している中国がマネーレス化では最も進んでいる。銀行店舗の展開が遅かったし、物理的に存在する必要もない。偽造紙幣をつかまされる問題もなくなる。これは当社にも、金融機関にとっても当然、脅威だ。

 しかし実際にはATM市場は今も成長している。アフリカやアジア諸国、例えばインドネシアなどがそうだ。タイではATMが銀行代わりになっている。先進国でも現金を必要とされる場面は多く、例えばクレジットカードの利用が進んでいる米国でも、ATMの需要は落ちていない。日本も若い世代ではマネーレスへの期待やその動きがあるが、まだ時間がかかるだろう。

 とはいえ当社のようなATMメーカーとしては、自らを変革し、いずれの動きにも対応する必要がある。そのためNCRはソフトウェアへの投資を続けている。マシンやUI(ユーザーインタフェース)をデザインするためだ。金融機関も同じく、自らを変革しソフトウェアの投資にアクセルを踏むべきだろう。我々は専門ベンダーとして、そうした金融機関の変革もサポートしていく。

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