[イベントレポート]
アナリティクスのパワーをAIで加速─テラデータが「Teradata Analytics Platform」などを発表
2017年10月25日(水)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
Teradataは2017年10月23日、米アナハイムで開催中の年次プライベートカンファレンス「Teradata PARTNERS 2017」において、データサイエンティストやデータアナリストのための統合的なデータアナリティクス環境「Teradata Analytics Platform」など、新たに4つのアナリティクス関連製品/サービスを発表した。現地からホットトピックをお届けする。
今回発表した製品/サービスはいずれもAIによるアナリティクスの効率化/高速化を重視したポートフォリオで、クラウドやオンプレミスなど顧客の環境を問うことなく、どこからでもアナリティクスを可能にする「Teradata Everywhere」のコンセプトをベースとしている。
Teradata エグゼクティブバイスプレジデント兼最高製品責任者(CPO)のオリバー・ラッゼスバーガー(Oliver Ratzesberger)氏はキーノートにおいて「以前のTeradataのイメージはデータウエアハウス(DWH)やリレーショナルデータベースの企業だったかもしれないが、現在、我々がフォーカスするのはAIによってパワーアップしたモダンなアナリティクスプラットフォーム。顧客のビジネスを加速するために、さまざまな用途や目的に応じたアナリティクス環境を提供していく」と語っており、今後もAI機能の拡充に注力する方針を明らかにしている。
Teradataが今回発表した製品群の概要は以下の通り。
- Teradata Analytics Platform … アナリティクス機能、AIエンジン、アナリティクスツールなどを含むデータアナリティクスのための統合プラットフォーム
- Teradata IntelliSphere … 1つのライセンス(サブスクリプションベース)でTeradataのすべてのデータ関連ツール(QueryGrid、Listenr、AppCenterなど)を利用可能にするマネージドサービス
- Teradata Agile Analyitics Factory & Velocity Portofolio … 個々の顧客に最適なアナリティクス環境を実現するため、アドバイスからアーキテクト設計、実装、最適化までのプログラムをエンドツーエンドで提供するサポートサービス。Teradagaのグローバルサービスが提供するVelocityメニューから22を選び、Factoryのコアとしている
- Teradata AI Momentum … Think BigによるAIにフォーカスしたメニューで、AIのアダプションをサポートするサービスと、AI機能をエンハンスするアクセラレータ「Financial Crimes Accelerator」「AnalyticOps Accelerator」が含まれる
いずれもまったくの新製品というわけではなく、Teradataの既存製品/サービスをベースにリブランディングしたフレームワークであり、その上でさらにAI関連の機能やサービスを拡充している点に注目したい。なかでも今後、Teradataのアナリティクスポートフォリオの中でもキーとなるであろう存在がTeradata Analytics Platformだ。アトリビューション分析やパス分析、時系列データおよびセンサーアナリシスといった主要なアナリティクス機能をひと通り備えており、Teradata Asterのアナリティクスエンジンを統合している。また、「近い将来にSparkとTensorFlowも統合する」(ラッゼスバーガー氏)予定であり、プロプライエタリエンジンのAsterとオープンソースのAIフレームワークの両方をサポートしていく方針を明らかにしている。
さらにデータサイエンティストやデータアナリストにとっての使いやすさを考慮し、PythonやR、SAS、Jupyter、KNIMEといった数多くの標準的なツールや言語をサポート、扱えるデータ形式に関しても、テキストデータや地理データといった非構造化データはもちろんのこと、JSON、Avro、XML、CSV、NVPなど半構造化データを含む多様な種類のデータに対応する。
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Teradata Analytics Platformの競合優位性についてラッゼスバーガー氏は「一つのプラットフォームで、複数のAIエンジン、複数のツールに対応できる」点を強調している。「顧客はデータが一つの環境にしばられるサイロ化にずっと苦しんできた。現在、企業のデータの90%は一つのアーキテクチャ上にデプロイされており、データサイエンティストはその作業の80%をデータのマニピュレーションに費やしている。特にペタバイト級のデータを対象にしている場合、異なるプロセスごとにデータをコピーし、エンジンやツールを変えることはデータサイエンティストにとって負荷が大きくなりすぎる。Teradata Analytics Platformはそうした呪縛から彼らを解放し、AIのパワーをダイレクトにアナリティクスに活かすことができる」(ラッゼスバーガー氏)。
Teradataは今回のPARTNERSで「いつでもどこからでもTeradataのアナリティクス環境を利用できる環境を顧客に提供する」という“Teradata Everywhere”を同社のアンブレラ(最上位のコンセプト)として位置づけており、具体的には以下の4つのピラーで構成する。
- Deploy Anywhere … クラウド(AWS/Azure/Teradata Cloud)かオンプレミス(Teradataハードウェア/VMwareなどコモデティ環境)かを問わず、どこにでもアナリティクス環境をデプロイできる
- Buy Any Way … バンドルサービス、サブスクリプションモデル、オプションサービスなどさまざまな購買ニーズに応える
- Move Anytime … クラウド→オンプレミスなどプラットフォーム間で1つのライセンスをポータブルかつ柔軟に利用できる
- Analyze Anything … どんなタイプのデータであっても分析できる
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当然ながらTeradata Analytics PlatformやTeradata IntelliSphereはこのTeradata Everywhereのコンセプトに沿って開発されている。例えばTeradata Analytics Platformは顧客の用途に応じてクラウドにデプロイすることも、またIntelliFlexなどTeradataハードウェア上に展開することも可能だ。また、Teradata IntelliSphereを利用することで、普段はオンプレミス上で利用しているQueryGridやListnerなどを、追加料金なしで一時的にクラウド上にデプロイして使う、といったユースケースも可能になり、ライセンス費用を30%以上削減することも可能になるとしている。
「CIOを対象にしたある調査によれば、データサイエンスやBIといったAIに紐付くスキルが競合と差をつけるために重要と答えた割合は41%になる。現在、約半数の企業においてはアナリティクスの環境は整ってきているが、その次の段階は“AIジャーニー”、すなわちAIをプロダクションレベルで活用する基盤を整備することだ。Teradataはプラットフォーム(Teradata Analytics Platform)やライセンスモデルの改定(IntelliSphere)、そしてコンサルサービスやアクセラレータの提供(Teradata AI Momentum)を通して、顧客のAIジャーニーを支援する」とラッゼスバーガー氏。
Teradataは基本的に「ラージエンタープライズのためのアナリティクスのみにビジネスとしてフォーカスする」という経営戦略を以前から打ち出しているが、AIにおいても同様の方針を貫くとしている。すでにDansk Bankにおけるオンライン詐欺の検知率向上など金融や小売を中心にAI分野での実績を着実に重ねており、Teradata Analytics Platoformなどの新製品でもって「ラージエンタープライズのためのAIアナリティクスベンダ」としての優位性をさらに固めていく。
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