ノークリサーチは2018年1月29日、中堅・中小企業における10分野にわたる業務アプリケーションのクラウド活用状況に関する調査/分析の結果を発表した。
「2017年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」によると、XaaS(X as a Service)をすべて合わせたクラウド活用は情報/顧客管理系の方が基幹系よりも依然として高いことがわかった。
基幹系アプリケーションは現在もクライアント/サーバーやスタンドアローンの導入形態が多く、Webアプリケーションが主体の情報系や顧客管理系と比べてクラウドの割合が低くなっていることが確認できる。ただし、これはIaaS(Infrastructure as a Service)/PaaS(Platform as a Service)/SaaS(Software as a Service)といった様々なクラウド形態をすべてまとめて俯瞰した場合の結果だ。
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クラウドを「IaaS/ホスティング利用」と「ASP/SaaS」に分けた場合、IaaS/ホスティングを利用した「パッケージ」や「独自開発システム」では、業務アプリケーション別で大きな差異は見られなかった。一方、「ASP/SaaS利用」を見ると、クラウドの割合が低い傾向のあるERPや会計管理、販売・仕入・在庫管理では低く、クラウドの割合が高いグループウェアやCRM、文書管理・オンラインストレージサービスでは高かった。このことから、「情報/顧客管理系の方が基幹系よりもクラウドの割合が高い」という傾向の要因は「ASP/SaaS」にあると分析している。
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「IT管理/運用の人員規模」や「ビジネス拠点の状況」もクラウド選択を左右する大きな要因だという。会計管理における「パッケージ(IaaS/ホスティング利用)」と「ASP/SaaS利用」の回答割合を年商別およびビジネス拠点の状況別に集計した結果を見ると、IT製品・サービスの多くは年商規模の大きな企業から小さな企業へと普及していくが、会計管理のASP/SaaS利用については年商5億円未満の小規模企業における導入も目立った。
ビジネス拠点の状況を見ると、拠点が2カ所以上かつITインフラを統一管理している企業ではIaaS/ホスティング利用の割合が相対的に高くなっていることがわかった。なお、業務アプリケーションによって、企業属性別に見たときのクラウド活用状況は大きく異なってくるため、ベンダーや販社/SIerにとってはこうした分野別かつ企業属性別の傾向を把握したうえで、今後の販促施策や製品/サービスの展開を検討していくことが重要となるとしている。
また、同じパッケージでも、「社内設置」と「IaaS/ホスティング」では高い評価を得る機能が異なるという。調査レポートでは10分野の業務アプリケーションごとに「評価/満足している機能や特徴」「現状の課題」「今後持つべき機能や特徴」について尋ねている。
例えば、ERPにおいて「評価/満足している機能や特徴」に関する回答結果の一部をクラウド活用状況別に集計してみると、「パッケージ(社内設置)」では「複数モジュール間のデータ連携が容易である」の回答割合が相対的に高い、「パッケージ(IaaS/ホスティング利用)」では「様々なデータを集計/分析して経営に活かせる」の回答割合が相対的に高い、「ASP/SaaS利用」では「導入や保守サポートの費用が安価である」の回答割合が相対的に高いといったように、クラウド活用状況によって機能や価格に関する評価が変わってくることがわかる。
なお、業務アプリケーションの分野によって傾向は大きく異なるため、業務アプリケーションのクラウド活用状況を把握することは、今後の機能や価格の検討を進めていくうえでも重要な観点となってくるとしている。