デジタルトランスフォーメーションでアジアに後れを取る日本企業、課題はどこに:第55回
2018年2月28日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)
この数年で本格的な潮流となったデジタルトランスフォーメーション(DX)。業種や規模を問わない共通課題と言われていますが、実際の取り組み状況はどうでしょうか。その実態を明らかにすべく、IDC Asia/Pacificと日本マイクロソフトがアジア太平洋地域15カ国のビジネス意思決定者1560人を対象に調査を実施しています。2018年2月20日に公開された結果のハイライトから、日本企業のDX成熟度とアジアの中での相対的なポジションを“直視”してみたいと思います。
海外との比較で危機感が生まれにくい理由
日本企業は海外に比べてデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが遅れているとよく言われます。IT分野・業界における「海外動向」と言うと、まずIT先進地域の北米や欧州をイメージして、聞いたとたん「まあ、北米や欧州にはかなわないでしょう」といった諦めの気持ちが生じがちではないでしょうか。クラウドやビッグデータ分析が注目を集め出したときもそのような感じで、日本企業の間で危機感が生まれにくい原因の1つに思えるのです。
そんななか、おぼろげな危機感が明確な危機感へと変わるような調査結果が発表されました。日本マイクロソフトとIDC Asia/Pacificがアジア企業と日本企業の比較に重点を置いて実施したDX調査「Unlocking the Economic Impact of Digital Transformation in Asia(アジアにおけるデジタルトランスフォーメーションの経済効果調査)です。
調査対象地域は、アジア太平洋地域15カ国(豪州、中国、香港、インドネシア、インド、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、スリランカ、台湾、タイ、ベトナム)。調査対象者は、指定規模・業種の企業・組織(従業員数250人以上/金融、政府機関、ヘルスケア、製造、小売、教育機関)のデジタル戦略立案担当者、ビジネス部門およびIT部門リーダーで、日本に本拠を置く企業の150人を含む、アジア1560人の部門リーダークラスが回答しています。
また、共同調査ということで、調査・分析プロセスには製品やサービスを通じて顧客のDXを支援するマイクロソフトの観点が加わり、各調査項目では、各国のエンドユーザーの意識や取り組みを細かに尋ねています。その結果、一般的なIT市場調査よりも、エンドユーザーの実態を詳細にとらえた内容になっていると言えます。
さて、アジア全域でのDX調査といっても、回答企業の間でDXが何たるかが共通認識されていないと正確な結果は得られません。IDCは回答を求めるにあたって、DXの定義を次のように示しています。
――デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通じて、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変化を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること――。
定義にある第3のプラットフォームとは、クラウド、ソーシャル、ビッグデータ分析/ビジネス分析(BA:Business Analytics)、企業向けモバイルの4つを指しますが、今ではこれらの技術を活用すること自体に珍しさはありません。したがって、DXへの取り組みや成果の判断は、外部環境の破壊的変化への対応や新規商品・事業の創出、ネットとリアルの両面対応などといった、スコープやアプローチ面、成果面に重きが置かれることになります。
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