セールスフォースがSlackを買収、目指すは“次のクラウド革命”:第57回
2020年12月2日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)
米セールスフォース・ドットコムとビジネスチャット/コミュニケーションプラットフォームベンダーの米Slack Technologiesは2020年12月1日(米国現地時間)、セールスフォースがSlackを買収することで合意を締結したと発表した。買収はセールスフォースの2022年会計年度の第2四半期に完了する予定。セールスフォースはSalesforce Customer 360のインタフェースとしてSlackをSalesforce Cloudサービス群に統合する計画を明らかにしている。
SFA/CRMをはじめとする企業向けSaaS/PaaSのリーディングベンダーである米セールスフォース・ドットコム(Salesforce.com)が、この数年で急成長を遂げたビジネスコミュニケーションプラットフォームベンダーの米Slack Technologiesを手中にする──12月最初の日に大きな発表がありました。
両社のプレスリリース(画面1)によると、セールスフォースがSlackと最終合意に至った買収額は約277億米ドル(約2兆8905億円)。契約条件に基づき、Slackの株主が、Slackの1株あたり26.79ドルの現金と0.0776株のセールスフォース普通株を受け取ることで成立。手続きは、セールスフォースの2022年会計年度第2四半期(2021年5~7月)に完了する予定としています。
Slackは皆さんご存じのとおり、人・データ・ツールをまとめて個人・組織がどこからでもコミュニケーション/コラボレーションを行ってプロジェクトや作業を進められるようにするSaaS型のクラウドサービスです(画面2)。新興企業から米スターバックス(Starbucks)、米ターゲット(Target)、米TDアメリトレード(TD Ameritrade Holding)といったフォーチュン500企業、各国の政府機関まで、国内でもパナソニック、三菱重工、ヤフー、西日本旅客鉄道(JR西日本)など、150カ国以上で広範なレンジの顧客を有しています。
拡大画像表示
Slackの特徴と言えば、やはりオープンな拡張性でしょう。「Slack Connect」を用いた他のクラウドサービスとのAPI連携が容易で、コミュニケーションやコラボレーションにとどまらす、顧客サポートサービスやワークフローシステムなどを組み上げることもでき、さまざまなユースケースが生まれています。
SlackをSalesforce Customer 360に統合
すでにセールスフォースは、Slackを自社の「Salesforce Customer 360」に連携・統合させる方針を明らかにしています。Customer 360は、「Sales Cloud」や「Service Cloud」など複数のSalesforce Cloudサービスの情報を集約し、クロスチャネルで各顧客との販売/マーケティングの活動を把握できるようにするサービスです。
「SlackはすべてのSalesforce Cloudに深く統合される計画だ。Salesforce Customer 360では、Slackが新しいインタフェースとなって、サービス群全体の顧客情報や、他の業務アプリケーション/システムからの情報を扱えるようにする。それが、接続された顧客体験(Connected Customer Experiences)を生んで、そこから迅速な意思決定を可能にし、すべての人々のコミュニケーションやコラボレーション、アクションの方法を変革していく」(同社)
手続きが完了次第、Slackはセールスフォースの一部門となり、SlackのCEO兼共同創業者であるスチュワート・バターフィールド(Stewart Butterfield)氏が新たな事業部を統括することになります。セールスフォースの会長兼CEO、マーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏とバターフィールド氏はそれぞれ以下の声明を発表しています。
「スチュワート率いるSlackのマネジメントチームは、エンタープライズソフトウェアの歴史の中で最も愛されているプラットフォームの1つを構築し、その周りにすばらしいエコシステムを築き上げている。両社が協力して、エンタープライズソフトウェアの未来を形作り、だれもが、どこからでも仕事ができるオールデジタルの世界で働き方を変革していく(ベニオフ氏、写真1)
「ソフトウェアがすべての組織のパフォーマンスにおいて一層重要な役割を果たすにつれて、私たち(両社)は複雑さを軽減し、パワーと柔軟性を高め、最終的にはより高度な調整と組織のアジリティを実現するというビジョンに至った。SalesforceとSlackはソフトウェアの歴史の中で最も戦略的な組み合わせだと思っており、始まりが待ちきれない」(バターフィールド氏、写真2)
●Next:そういえばChatterがあるけれど……Slackを得てセールスフォースが目指すのは?
会員登録(無料)が必要です
- モダナイズ型の事業創出に注目、コニカミノルタの「Workplace Hub」:第56回(2018/12/13)
- デジタルトランスフォーメーションでアジアに後れを取る日本企業、課題はどこに:第55回(2018/02/28)
- 施行まであと1年半、EUの新データ保護法「GDPR」への備え:第54回(2017/01/31)
- 基盤、機器、管理ソフトが丸ごと揃う「IIJ IoTサービス」はどのぐらい魅力的?:第53回(2016/07/20)
- IoTはグループウェアも次世代に導くか?―テラスカイのソーシャルウェア「mitoco」:第52回(2016/04/13)