[市場動向]

AIオペレーターはどこまで人間に近づけたのか?─自律思考のAI音声応対サービス「X-Ghost」が目指すもの

慣習や暗黙知を含めたナレッジを獲得する「Tuning as a Service」とは?

2026年1月29日(木)奥平 等(ITジャーナリスト/コンセプト・プランナー)

ソフトバンクの100%出資で、生成AIを活用したSaaSや企業のAIコンサルティングを提供するGen-AX(ジェナックス)。同社は2025年11月、AIが自律的に思考し、自然な音声対話で顧客対応を行うAIオペレーター「X-Ghost(クロスゴースト)」を提供開始した。「人に寄り添い、おもてなしをカタチにするAIオペレーター」を謳うX-Ghostは、音声モデルのSpeech-to-Speech(STS)や、OpenAIのRealtime APIといった最新テクノロジーを実装し、人間のオペレーターの再現を試みている。その理想に、X-Ghostがどこまで近づけたのかを確認してみたい。

 読者の皆さんは、何かの製品を使っていてトラブルに遭遇し、電話でサポートに問い合わせたところ、AIオペレーターが対応してきて困惑した、という経験はないだろうか。音声認識の精度はもとより、AI側が話の内容を理解できず、解決に至らなかったケースはまだ多いようだ。にもかかわらず、コンタクトセンターでは深刻な労働力不足と高い離職率を背景に、AIオペレーターの導入が積極的に展開されている。

 このようなコンタクトセンター側の事情と、問い合わせをしてきた顧客とのギャップを解消し、顧客満足の向上や新たな価値創出を実現する──そんなコンタクトセンター特化の生成AIプラットフォームの開発・提供に取り組んでいるのがGen-AX(ジェナックス)である。同社はコールセンターの変革を掲げて、自律思考型のAI音声応対サービス「X-Ghost」(図1)の出荷を開始した。国内大手企業の9割以上と取引実績を有するソフトバンクが顧客への提案・販売を行い、エンタープライズ向け導入支援ツールと複数のコンサルティングパートナーとの伴走プログラムにより、導入設計から運用・改善までをワンストップで支援するという。

図1:「X-Ghost」のシステム構成図(出典:Gen-AX)
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Tuning as a Service─ファインチューニングの手法を進化させる

 Gen-AX代表取締役社長 CEOの砂金(いさご)信一郎氏(写真1)は、その実現のカギを握るキーファクターとしてファインチューニングを挙げる。「AIは優秀な新入社員のような存在です。ただし、業務・業界の経験がありませんので、いわゆる新人教育を施していく必要があります」(同氏)。

写真1:Gen-AX 代表取締役社長 CEOの砂金信一郎氏

 それを担うのがファインチューニングで、知識はもとより業界・業務・企業特有の慣習や考え方の特性を大規模言語モデル(LLM)に身に付けさせていくことだという。「当社では、そのためのデータを用意する仕組みを含めて、社内の高度なナレッジを取り込み、生成AIを継続的に賢く成長させていくメソッドを開発しました。『Tuning as a Service』と呼んで、今後さらに洗練させていきます」(砂金氏)。

 ファインチューニングに関して、同社は2024年1月に発表したコンタクトセンターおよびバックオフィス部門の照会応答業務向け生成AIサービス「X-Boost(クロスブースト)」において、すでに独自のコンセプトを披露している。

 それは、業務標準となるLLMをベースに、あえて70%程度の完成度から、差分や各社独自のナレッジを容易に再学習・追加学習させるというもの。テストケースを試しながら容易に本番移行できるというこのコンセプトを、X-Ghostにも踏襲しようとしている。

 「従来のファインチューニングの方法は、ROI(投資対効果)の観点からも現実的ではありませんでした」と砂金氏。業務フロー定義に基づき、Yes/Noベースの遷移で回答にたどり着くルールベースのアプローチでは、複雑な対応が求められる問い合わせ業務では限界があるという。

 「また、業務を細かく分析して膨大なシナリオを用意してAIに再学習させようとするならば、時間がいくらあっても足りません」と砂金氏。そこで、生成AIに業界知識・業務知識を再学習させたり、仕事を教えたりするプロセスを、日々の運用を通じて蓄積されていく照会履歴データやFAQを基に、LLMOps(Large Language Model Operations)の一環として組み込み、自社にマッチした賢いAIモデルにチューニングしていくという仕組みを考案。これを具現化したのが「X-Boost」(図2)である。ID管理に基づき、ベテラン社員の操作ログだけをAIの学習対象に反映し、新入社員や経験が浅い人たちのログは対象にしないということもできるという。

図2:AIモデルを賢く育てていく「X-Boost」のLLMOps全体像(出典:Gen-AX)
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●Next:ファインチューニングを突き詰めた理由

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