[市場動向]

あなたのビジネスにドローンが入り込む余地はあるか?

目視外・第三者上空飛行で広がるドローンビジネス

2018年6月20日(水)森 英幸(IT Leaders編集部)

ドローンが注目を集めるようになって久しいが、ここにきてそのビジネス活用の機運が高まりを見せている。なぜ、にわかに盛り上がっているのかと言えば、ドローンに関する規制緩和が進みつつあるからだ。そこで本稿では、ドローンに関する法整備の現状を説明したうえで、ビジネス活用を検討するのに必要な視点について考えてみたい。

ドローンはデジタルとリアルを繋ぐデバイス

ドローン・ビジネス

 デジタルトランスフォーメーション(DX)でビジネスを変える、新たに生み出す――そのビジネスモデルは様々であるが、それがどのようなものであれ鍵となるのは“デジタルとリアルをどう繋ぐか”という部分にある。

 デジタルだけで完結するビジネスは、開発は容易かもしれないが、その規模はたかがしれている。例えば、仮想通貨がこれだけ話題になるのも、リアルマネーとの交換ができるからである。もし交換できなければ、仮想通貨など子供銀行券のようなおもちゃにしかならない。

 では、デジタルとリアルを繋ぐものは何か。それはセンサーであったり、モバイルアプリだったり、チャットボットだったり、VR/ARゴーグルだったりするわけだが、ドローンもその1つと考えて良いだろう。

 今まで人が直接行っていた作業をドローンが肩代わりすることで、サービスデリバリーが迅速化される、手間やコストが大幅に削減されるといったことが期待されている。量的変化だけでなく、質的変化が起こる可能性もある。実際、ドローンによる空撮は、クレーンやヘリでは不可能だった映像表現を可能にした。

法整備が進みつつあるドローン・ビジネス

 ドローンが注目を集めるようになったのは、今から5年ほど前のことだ。だが、この5年間でドローンのビジネス活用がどれくらい進んだかと言えば、実はほとんど進んでいない。定着したのは上述のドローン空撮くらいというのが現状である。

 ところが2018年に入り、状況は大きく変わりつつある。各地でドローンの実証実験が活発に実施されているほか、今年3月には国と千葉市の共同で「ちばドローン実証ワンストップセンター」も設置された。実証実験の内容は過疎地域の物流改革、気象観測、土地の測量、建造物の点検・検査、山岳遭難者の捜索などさまざまである。

 ドローンがにわかに盛り上がりを見せている背景には、法整備の進展がある。具体的には、ドローンを飛ばせる空域を拡張するためのルール作りが進められている。

 現在、ドローンを飛ばせる空域は航空法で定められているが、新しいデバイスであるために規制のない空白期間が存在した。その空白期間に発生したのが、2015年4月の首相官邸ドローン墜落事件である。この事件は、ドローン規制の必要性を広く社会に認識させるものとなり、2015年12月に施行された改正航空法では、ドローンの飛行ルールとして以下が定められた。

  1. 日中(日出から日没まで)に飛行させること
  2. 目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
  3. 人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること
  4. 祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと
  5. 爆発物など危険物を輸送しないこと
  6. 無人航空機から物を投下しないこと

 ちなみに、このルールは絶対的なものではなく、事前申請の上で許可を得れば、夜間や150m以上の上空でもドローンを飛ばすことは可能だ。ただし、申請にはそれなりの手間がかかるし、10開庁日前までに申請することとされている。スポーツイベントや映画・テレビの空撮等、あらかじめスケジュールが立てられるものであればよいが、この事前申請ルールでは商品配送のようなサービスは実現しにくい。

 ともあれ、歴史が浅く、実績も少ないドローンというデバイスに対する最初のルールであることを考慮すれば、この内容は概ね納得できるものであろう。ただし、このルールがドローンのビジネス活用を阻害してきたことは事実である。

 このルールのうち、特に障壁となるのが、目視外と第三者上空の飛行禁止だ。最新のドローンの中には、航続距離が100kmを超えるような機体もあるが、操縦者の目の届く範囲しか飛ばせないとなれば、その活動範囲はせいぜい半径数百m程度に限定される。建物の裏側や山を越えた向こう側なども飛ばせない。

 こうした規制がドローンの活用を阻害している状況は国側も十分承知しており、国土交通省と経済産業省は、昨年9月に「無人航空機の目視外及び第三者上等での飛行に関する検討会」を設置。計6回の検討会が開かれ、今年3月に目視外飛行に関するガイドライン「無人航空機の目視外飛行に関する要件」が取りまとめられた。

無人航空機の目視外飛行に関する要件 概要(http://www.mlit.go.jp/common/001232089.pdf)無人航空機の目視外飛行に関する要件 概要(http://www.mlit.go.jp/common/001232089.pdf
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 要件の内容は上図およびリンク先を参照していただきたいが、このガイドラインは離島や山間部などにおけるドローン配送を想定した内容となっており、一定の条件を満たしたうえでの目視外飛行(事前申請なし)を認めるものである。

 現在、このガイドラインは法的効力を持っていないが、今年中にも航空法の運用ルールに加えられる見通しになっている。人口の少ない地域に限定されるとはいえ、いよいよドローン配送が現実のものとなるわけだ。

より厳密な安全対策が求められる第三者上空飛行

 さて、目視外飛行についてはガイドラインが示された。では、第三者上空飛行のほうはどうか。

 ここで改めて第三者上空飛行の意味を説明しておくと、墜落事故などを起こしたときに第三者を巻き込む可能性が高い場所での飛行ということであり、その場所とは国勢調査の結果による人口集中地区とされている。人口集中地区は、1平方kmあたりの人口が4,000人以上の地区であり、その上空は許可がないとドローンを飛ばせない。これがどれくらい厳しいルールなのかは、国土地理院のサイトで人口集中地区を調べればよくわかる(下図)。

東京周辺の人口集中地区(地理院地図 http://www.gsi.go.jp/chizujoho/h27did.html)東京周辺の人口集中地区(地理院地図 http://www.gsi.go.jp/chizujoho/h27did.html
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 ご覧のとおり、東京23区はすべて人口集中地区である。状況は大阪や名古屋も同様であり、その他の地方でも県庁所在地周辺はたいてい人口集中地区になっている。事前申請すれば飛ばせるとはいえ、このルールの下では都市部でドローン・ビジネスを展開するのは現実的ではない。

 第三者上空飛行の安全を確保するのは容易ではないが、そこへ向けた取り組みも始まっている。5月30日、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、ドローン(無人航空機)を対象とする新たな安全評価基準の開発に着手したことを発表したのだ。目視外かつ第三者上空を飛行するドローンの安全性をいかに担保するか、というのがその目的である。安全評価基準の内容がどのようなものになるのか、現時点では不明ではあるが、将来的に第三者上空飛行を認める方向性が示されたと見てよいだろう。

 ビジネス的には、早期の基準の取りまとめを期待したいところだが、ことは人命に関わるので慎重な検討が必要である。人がいない山間部や海上であれば「落ちちゃいました」で済むが、交通量の多い道路に落ちて玉突き事故にでもなれば大惨事だ。第三者上空飛行のリスクは非常に大きい。

 そのためこれから検討される安全評価基準の中には、機体性能に関する項目が盛り込まれることになるだろう。ドローンには自動姿勢制御機能などの操縦サポート機能が搭載されているが、その性能を同じ評価軸を使って評価できるようにする必要がある。国は自動ブレーキ搭載車などの運転サポート機能を備えた自動車向けに「安全運転サポート車」基準を設けているが、それと同種のものがドローンにも必要とされている。

 そして将来的には、安全評価基準の対象を完全無人操縦にまで広げることが求められるようになるだろう。現在のドローンの性能は無人操縦が可能な領域に入ってきているし、ビジネス・ニーズもそこにあるからだ。ドローン1機ごとに熟練の操縦者が張り付かないといけないルールの下では、操縦者の確保が難しくなるうえ、人件費がビジネス活用のネックとなるからだ。

自社のビジネスに必要なドローンとは何か

 さて、ドローンに関する法整備が進む中、企業人には、ドローンを自社のビジネスにどう活用するかという視点が求められる。

 「空を飛ぶだけのドローンにできることなど、たかが知れている」と思われる向きもあるだろう。たしかに、一般的なドローンでできるのは、カメラやセンサーで情報を集めること、物を運ぶことくらいである。ただし、「あり物のドローンを使わなければならない」という決まりがあるわけではない。一般的なドローンでできないのであれば、一般的でないドローンを作ればよいのだ。

 4月9日にKDDIは、産業用ドローンを開発するプロドローンという会社と資本提携を結び、関連会社化したと発表したのだが、このプロドローンは面白いドローンを作っている会社である。同社の製品としては、水面に着水して水中撮影ができるドローンや、壁面や天井面に張り付くことができるドローン、大型ロボットアームを備えたドローンなどがある。こうした会社と組めば、自社のビジネスに必要なドローンを生み出すことができるだろう。

 自社のニーズに合わせてドローンをカスタマイズできるとなれば、ドローンの活用領域は格段に広がる。活用のパターンとしては、人件費や人手不足で数カ月や1年に1回といった頻度でしかできない作業を、ドローンで肩代わりするというのが王道であろう。例えば、ビルの窓清掃を行うドローンがあったらどうだろう。コストを増やさずに清掃頻度を上げることができ、テナントにも喜ばれるのではないか。

 現在は法整備がようやく進展を見せた段階ではあるが、第三者上空飛行が解禁になったときを見据えて、今から動いても早すぎることはないはずだ。

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