[インタビュー]
「ウォーターフォール型との使い分けは無意味、すべてにアジャイル開発を」
2018年12月26日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)
米Pivotal Software(ピボタル)のCEOを務めるロブ・ミー(Rob Mee)氏。1990年代と早い段階からアジャイル(Agile)開発を実践し、リードしてきたことで知られる人物だ。そんな同氏にインタビューする機会があったので、アジャイル開発に関するいくつかの疑問を尋ねてみた。
「アジャイル開発が向かない分野はない(遅かれ早かれ、すべてアジャイルになる)」
「今後は企業のエグゼクティブ層にアジャイルが広がり、組織のあり方や予算執行もアジャイルになっていく。それに向けてアジャイルの手法を進化させる」
2000年代はeBay、GoogleやTwitterといったテクノロジー企業、2010年代には欧米の大手企業に対し、アジャイル開発を中心とする新時代のソフトウェア開発手法を伝授し、成長を支援してきたのが米Pivotal Software(2012年まではPivotal Labs)である。そんなPivotalを1989年に設立し、30年にわたって同社を率いるロブ・ミー氏(写真1)は、アジャイル開発の現状や今後をどう見ているのか。来日した同氏に聞く機会があった。
冒頭のコメントはその一部である。ウォーターフォール(Waterfall)型開発とアジャイル開発の関係は、アリストテレスの時代の物理学と今日の物理学の関係に似ており、長年正しいと信じられてきた古い物理学が、新しい物理学に取って代わられたのと同様、そのうちアジャイルが主流になるというのだ。以下、一問一答形式でレポートする。
アジャイル開発はもともと大規模システム向けだった
――日本では何度かのブームを経て、改めてアジャイル開発への関心が高まっています。一方でアジャイルが適するのは小規模な開発である、要件を定義できるシステムにはウォーターフォール型開発が向く、といった意見も少なくありません。例えば、その定義はさておき"エンタープライズ・アジャイル"(大規模向けアジャイル開発)という言葉もあります。大まかに言って、アジャイル開発は小規模なシステムやサービス向けであり、大規模なものや企業内の業務システムには適さないというわけですが、ロブさんはどう考えていますか。
アジャイル開発手法は、システムやサービスの規模や特性と関係ありません。2つの理由を挙げることができます。まず1990年代、アジャイルが提唱されたとき、対象は企業向けの大規模システムでした。周到に計画し、進捗もマネジメントしているはずの大規模なシステム開発プロジェクトの多くが成果を挙げられなかったからです。ウォーターフォール型開発に変わる手法が必要とされ、アジャイル開発が登場しました。もともと、大規模なミッションクリティカルシステムのためだったわけで、これが理由の1つです。
大企業では広く普及するには至りませんでしたが、2000年代に入ると(Pivotal Labsがサポートした)eBayやGoogle、Twitterといったテクノロジー企業、あるいはソフトウェア開発のスタートアップ企業でアジャイルの利用が広がり、そして完全に定着しました。こうした企業が、なぜアジャイルを採用したのかは推察いただけると思いますし、大規模なサービスにアジャイル開発が適さないという指摘が完全に的外れであることも、お分かりいただけますよね。
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