[調査・レポート]
業界俯瞰図が示す「対話型AI」の急速な広がり
2018年12月27日(木)杉田 悟(IT Leaders編集部)
今やテレビのニュースで取り上げられない日がないほどの大ブームとなったAI(人工知能)。オープンソースのAIサービスの進展も後押しして一気に参入企業が増加し、一大商圏を構成している。一口にAIといっても、マシンラーニング(機械学習)にディープラーニング(深層学習)、画像認識に音声認識などさまざまあるが、このうち音声認識系の「対話型AI」に着目し、その業界/ビジネス動向を分析したのが慶応義塾大学 環境情報学部教授の山口真吾氏だ。同氏の研究室が2018年11月に公表したカオスマップ「対話AIビジネスの業界俯瞰図」をはじめとする3つのグラフを通して、対話AIの動向を読み解く。
深層学習の次は「対話型AI」
昨今のAIブームのきっかけは、ビッグデータ解析や演算処理技術の大きな進化により、その理論を比較的に安価に実践できるようになったディープラーニング(深層学習)と言われている。この領域の研究に取り組む慶応義塾大学 環境情報学部教授の山口真吾氏は、マーケットの方向性として「深層学習の次に来るのが対話AI」と考えている。それが、本稿で紹介するカオスマップ「対話AIビジネスの業界俯瞰図」を作成した理由という。
対話型AI(対話AI)とは何か。山口氏によると、「人間が用いる自然言語(音声、言葉、文章)の意味を自然言語処理技術や音声認識技術・音声合成技術などを用いてコンピューターに理解させ、人間とコンピューターの間のコミュニケーションを実現するAI」、つまり人と自動で会話するAIのことだという。チャットでユーザーの問いに自動返答するチャットボット、ユーザーの呼びかけに音声で返答するスマートスピーカー(AIスピーカーという呼び方もある)、面と向かって会話を楽しめるコミュニケーションロボットなどがその代表格である。
チャットボットは、いまだPoC(Proof of Concept:概念実証)どまりが多い、企業のAI利用にあって、いち早く本格導入が進んでいる分野だ。コールセンターやカスタマーサポートなどは、利用シーンが特定されており、文章が定型化しやすいため、AI開発が比較的容易と言われている。オペレーターとの併用で省力化と高精度化を実現する試みも行われている。
スマートスピーカーは、アマゾン・ドットコムの「Amazon Echo」、LINEの「Clova Wave」、グーグルの「Google Home」が2017年より相次いで国内発売されている。また、コミュニケーションロボットは、ソフトバンクの「Pepper」に続けとばかり、複数の大手ITベンダーやロボット専業ベンチャーから、多くのロボットが発売されている。これらは、アプリやスキルを追加できるプラットフォームとなっており、多くのサードパーティーに門戸を開いているためエコシステムを形成しやすく、実際に多くの企業が参入している。だからこそ、マーケットの広がりが期待できるわけだ。
対話型AIビジネスの業界俯瞰図
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図1は、山口氏の研究室が作成した「対話AIビジネスの業界俯瞰図」の2018年10月版である。対話型AIビジネスに携わる企業を、そのポジションによって「クラウドプラットフォーム提供企業」「消費者向けサービスの提供企業」「ソリューション・システムのプロバイダ企業」「デバイスメーカー」に分類している。
詳細は俯瞰図を見ていただくとして、掲載企業数は再掲も含めて136社。内訳はプラットフォーム提供企業が8社、導入先企業である消費者向けサービス提供企業が35社、ソリューションやシステムのプロバイダー企業が61社、デバイスメーカーが32社となっている。
●次ページ:山口研究室による、対話型AIビジネスの現状分析と未来予測の資料
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