企業経営にとって何よりもスピードが求められる昨今、スマートフォンをはじめとするモバイル端末の業務活用はもはや“マスト”。「セキュリティ上の懸念がある」という話は、EMM(Enterprise Mobility Management)などの技術進歩に照らせば言い訳に過ぎない。CIOなどIT戦略を統括するリーダーには、最新ソリューションの価値を見極める選択眼が求められている。
スマートフォンやタブレットといったモバイル端末が着々と進化を遂げているのに加え、気の利いたアプリの裾野が広がっていることも相まって、我々は日常生活の中で多大な恩恵を受けている。慣れ親しんだ“豊かな体験”をビジネスの現場にも持ち込んで業務を高度化しようという動きが活発化するのは必然の流れ。もはや“モバイルマスト”の時代を迎えたといっても過言ではないだろう。
そうした状況下、日本企業のモバイル活用の実状や課題とは? うまく使いこなすために必要となる基盤やその選択ポイントとは? ──企業向けのモバイルソリューションを早期から手掛けてきたアイキューブドシステムズのキーパーソン2人と、国内外のIT市場動向を常にウォッチし続けているアイ・ティ・アールのアナリストが「傾向と対策」を語り合った。
日本企業におけるモバイル活用の実態とは
―モバイルというキーワードはすっかり世の中に定着した感がありますが、実際のところ日本企業におけるモバイル活用はどの程度まで進んでいると見ていますか。
舘野 ITRでは毎年、会社支給のスマートフォンの導入率を調査しています。その結果によると、2013年に28%だったのが2017年の時点で53%に達しています。内訳は、全社的(従業員の半数以上)に導入している企業が24%、特定部門で導入している企業が29%です。ちなみにタブレットの導入率はこれより少し低く、全社的導入が18%、特定部門での導入が28%といったところです(図1)。
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もちろん、「今まで携帯電話(フィーチャーフォン)を支給していたのが、スマートフォンに変わっただけではないか」という指摘があることも認識しており、実際にそうした企業は少なくないと思います。それでもスマートフォンを手にした社員の間から、「せっかくならこの端末でメールも確認したい」「チーム全員のカレンダーも共有したい」といった要望が次々に出てくるのは自然なことでしょう。こうした背景から、モバイル活用に踏み出す企業は確実に増えていると見ています。使いこなしのレベルはどうかという点はひとまず置いておくとして、仕事にモバイル端末を使うという大きな流れは、止められないものですね。
林 舘野さんの分析は、私たちの肌感覚とも完全に一致しています。仮に最初のきっかけはフィーチャーフォンからの機種交換だったにせよ、スマートフォンの導入が呼び水となってメールやカレンダー、電話帳(連絡先)などのアプリを使い始めたことが、モバイル端末をより効果的に活用しようという動きにつながっているケースが少なくありません。
中光 その後、Office 365やG Suite、Dropboxといったクラウドサービスの利用が広がっていき、さらにはSFA(営業活動支援)やCRM(顧客関係管理)などの業務システムとの連携を進めていくというのが、モバイル活用の典型的な発展の姿ですね。
舘野 加えて最近の傾向として目立っているのが、ビジネスチャットの導入です。これまでPCを使っていなかったフィールドワーカーも含め、LINE WORKSやChatworkなどを使って業務上のホウレンソウ(報告/連絡/相談)を行うようになりました。チャットならすでに日常生活でも慣れ親しんでいるだけにハードルは低く、企業のモバイル活用にブレークスルーをもたらすキラーアプリとなっています。
セキュリティ上の懸念はもはや言い訳にもならない
―そもそも現在の企業にとってモバイル活用が不可避となっているのは、どんな理由があるのでしょうか。
舘野 色々とありますが、最近では人手不足という要因が非常に大きいと感じています。例えば店舗スタッフが在庫を確認するたびに、いちいちバックヤードまで足を運んでいたのでは接客に手が回らなくなってしまいます。同様にアフターサービスやメンテナンス、建設・施工、物流などあらゆる現場で人手不足の問題が顕在化し、モバイル活用でその場で何とかできるようにするといった業務の抜本的な効率化や再設計が“待ったなし”になっているのです。
一方、マネジメントやホワイトカラーの業務でも今まで以上に迅速な意思決定が求められるようになり、「どこにいても必要な情報にアクセスできる」「誰とでもすぐにコミュニケーションを取れる」といったモバイルの価値に改めて脚光が当たっていると言えるでしょう。
―あらゆるビジネスが“モバイルありき”でなければ回らなくなっているのですね。
舘野 別の見方をすれば、モバイルという言葉は遠からず“死語”になると考えています。今、モバイルと言われているのは、その対義語として据え置き型のデスクトップ端末があるからですが、IoTの世界がどんどん拡大していく中で、スマートフォンやPCのみならず、インターネットにつながるあらゆるデバイスを用いて今後のビジネスは行われるようになると思われます。わざわざモバイルと銘打つまでもなく、それが世の中の前提となるわけですね。
中光 キャリア各社も「高速・大容量」「超低遅延」「同時・多接続」を特徴とする5Gサービスを2020年に開始する予定で、あらゆるデバイスがインターネットと常時接続される時代はそこまで来ています。
―なるほど、どんな企業もモバイル活用を躊躇している場合ではなく、もはやセキュリティ上の懸念などを取り組みの遅れの言い訳にはできませんね。
中光 スマートフォンはポケットに入る小ささで、しかも出先にも携行するものだから紛失や盗難の可能性が高い。だから、情報漏洩などのリスクと常に背中合わせで危険だと考えるのは短絡的かと思います。SIM付のスマートデバイスは常時接続しているため、リアルタイムで管理下におけますが、誤解を恐れず言えば、監視・管理の眼が行き届いていないWi-FiだけのノートPCを外に持ち出す方がはるかに危険であり、実際にそうした使い方を看過している企業は少なくありません。
舘野 おっしゃる通りで、iOSやAndroid、あるいはWindows 10にしてもモバイルOSはそれ自体が非常にセキュアな設計がなされており、この2、3年で管理機能も急速に強化が進んでいます。リモートロックやリモートワイプは当然のこと、OSのアップデートなどガバナンスに関わるような作業もリモートから行えるようになりました。ユーザーインタフェースを持たないIoTデバイスをどうやって制御していくのか、その課題解決を模索する中で確立されてきた新技術の数々が現在のモバイルOSには、どんどん組み込まれています。
中光 そうした中で、ますます大きな役割を果たしていくのがEMM(Enterprise Mobility Management)ソリューションです。モバイルOSの管理機能と連携しながらインターネットに常時接続されたデバイスの状態を監視し、安全性を担保します。例えば、PCの持ち出しをセキュリティポリシーで厳禁としていた金融機関においても、EMMが搭載されたスマートフォンやタブレットについては社外利用を許可するケースが出てきました。EMMに対する技術的、そして社会的な信頼が高まってきた証左とも言えると思います。
EMMソリューション選定で重視すべきポイント
モバイル端末を業務用途で安全かつ効率的に活用する上で不可欠となっているEMMソリューション。かつては専業ベンダーが目立っていたが、昨今はメガベンダーも参入するようになってきており市場は活況だ。もっとも、ユーザーからして見ればどの製品も大同小異に映り、何を比較材料とすべきか判然としない部分も否めない。自らの選択眼を養うために、何を知っておくべきなのか──。
―世の中には数多くのEMMソリューションが存在しており、ユーザーの立場からは、何がどう違っているのかよく分からず、どのベンダーの製品を選べばよいのか判断に迷っています。あらためてアイキューブドシステムズが提供しているEMMプラットフォーム「CLOMO」の特徴を教えてください。
営業本部長 林 正寿 氏
林 テクノ・システム・リサーチさんの調査によると、私たちのCLOMOは国内EMM市場で7年連続シェアNo.1(※注釈参照)を達成しました。国産ベンダーならではの“近距離”での親身なサポートや、厳しい眼を持つユーザーに鍛え上げられた使い勝手の良さが高く評価された結果と考えています。
とはいえ、競合他社も基本的に似たような点をアピールしているので、お客様にしてみれば選択がとても難しいと感じられるのもまた事実でしょう。そうした中での当社ならではの差異化ポイントとして訴求できるのは、主要なモバイルOSベンダーとの関係性の深さです。
例えばGoogleは、法人利用に適したスマートデバイスの推奨プログラム「Android Enterprise Recommended」を推進していますが、2019年1月16日に私たちは世界で9社しか承認されていない同プログラムのEMMパートナーの1社に選定されました。GoogleのAndroid開発チームからも「日本で一番Androidに詳しいエンジニアはアイキューブドシステムズに集まっているのでは」という言葉をいただくほど緊密な技術交流を行っており、他社の追随を許さない強みとなっています。
※ 出典:「テクノ・システム・リサーチ:2016-2017年版PC資産管理/モバイル管理市場のマーケティング分析 プロダクト別売上シェア」
中光 もちろん私たちが熟知しているのはAndroidだけではありません。iOSに対応した法人向けモバイルデバイス管理サービス「CLOMO MDM」を日本で初めて開発したのも弊社で、すでに多くの実績を積んでいます。同サービスをリリースしたのは2010年11月のことで、当時からモバイル活用の最先端を走ってきた企業の皆様に私たちのEMMソリューションは採用され、育てられてきました。Windows 10も含め、マルチOS対応であり、しかも技術の深い部分を熟知して開発していることは強みでもあり誇りでもあります。
―そうしたアイキューブドシステムズのアドバンテージは、ユーザーに対して具体的にどんなメリットを提供しますか。
中光 章 氏
中光 率直なところ、現在の多くのEMMソリューションはモバイルOS自体が持つ管理機能をAPI経由で呼び出す仕組みを基本としているため、どの製品を比べても表面的な“できること”は横並びに映ってしまいます。機能ごとで比較する○×表を作ってみても、違いが今一つ見えてきません。
しかし、ベンダーごとの差異が大きくあらわれてくるのが運用面なのです。先に述べたように私たちは主要なモバイルOSの開発情報をダイレクトに入手できるので、最新のモバイル環境にどのベンダーよりも素早く対応できます。また、EMMソリューションを大規模展開する際のベストプラクティスも提供できます。単に機能要件を満たすだけでなく、CLOMOならば確実に運用していくことが可能です。
林 例えば経営陣からのトップダウンでスマートフォンの導入が決定したとき、IT部門の現場は少なからず混乱します。Windowsベースのシステム構築や運用に長けたエンジニアは社内にも数多くいますが、モバイルOSに詳しい知識をもった人材はほとんどいないからです。私たちはそんなお客様の課題にもしっかり対応します。
力あるパートナーとの協業体制の整備にも力を入れています。各社が得意としている領域の経験知やスキルを存分に活かし、ユーザー企業個別の事情に合わせながらコンサルティングや導入サポート、既存システムとの連携や統合といった様々なご相談にお応えできることにも自信があります。
舘野 お二人の話からはアイキューブドシステムズの熱い“エンジニア魂”が伝わってきます。EMMソリューションの導入を検討している企業は、そうした技術面で信頼のおけるベンダーを見つけることが、製品選定の重要なポイントとなることをぜひ知っていただきたいですね。実際、モバイルOSは頻繁にバージョンアップが行われるだけに、その変化に即応することは容易ではありません。単にそのOSに対応しているだけなのか、それとも新しく追加された管理機能までしっかり使いこなしているのか…EMMベンダーの技術力や開発姿勢が問われるところです。
しかもその違いは、カタログに記載された表面的な情報からはなかなか読み解くことができません。各モバイルOSの最新リリースノートにどんな機能が追加されたと記されているか、EMM製品はそれらにキメ細かく対応できているか、できているとしてどれぐらいのスピード感で追随できているか――。重箱の隅を突くような作業に思えるかもしれませんが、ベンダーの実力を見極めるには大事なことです。導入して何年も経たないうちに“時代遅れのEMM”に成り下がることを避けるためにも、手間を厭わず、しっかりした評価基準を持ってソリューションを選択しなければなりません。
林 舘野さんのメッセージは、お客様だけでなく私たちにとっても貴重なアドバイスとなります。モバイル活用の高度化は焦眉の急ですが、一方で環境を整えさえすればよいという単純な話でもありません。情報共有や意思決定の仕組みづくりなども含め、EMMソリューションはモバイルワーカーの業務や働き方を抜本的に見直していく基盤となる必要があります。その取り組みを主導するCIOやIT部門、そしてその先にいるエンドユーザーの皆様から寄せられる期待に、私たちは技術力で必ずお応えしていくことをお約束します。
【お問い合わせ先】
株式会社アイキューブドシステムズ
TEL:03-6450-1880
Mail:marketing-info@i3-systems.com
CLOMO紹介サイト
https://www.i3-systems.com/clomo