ヤフーは2019年2月13日、企業や自治体が持っているデータとヤフーのビッグデータを掛け合わせて分析し、ここから導き出せるインサイト(洞察)を提供するサービスを発表した。2019年10月から提供する。説明会では、実証実験を実施済みのユーザー事例を紹介した。
ヤフーは、検索キーワードや人物属性・位置情報などのビッグデータを社外に開放する。これらは、ヤフーのアプリケーションを介して収集したデータ群である。ユーザー企業は、これらヤフーのデータを活用することにより、これまで知らなかった顧客のニーズなどが分かるようになる(図1)。
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「生活者がヤフーのサービスを利用する時間は、2013年時点と比べて2.2倍に増えている。利用時間が増えることで、得られるデータも増えている。こうしたデータをヤフー社内だけで活用していてはもったいない」と、ヤフー代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏は主張する。
ヤフー社内やグループ内では、すでにビッグデータを事業に活用している。旅行サイトを運営するヤフートラベルでは、顧客を深く理解することによって、成約率を5.8倍に高めた。ヤフーと動画配信サイト「GYAO!」を運営するGYAO(ギャオ)は、適切なコンテンツマッチングによってコンテンツのクリック率を1.7倍に高めた。
すでに実証実験で成果、江崎グリコは新商品の開発に利用
説明会では、ヤフーのビッグデータを活用した実証実験に参加したユーザーのうち4組織が登壇し、成果を報告した(写真1)。企業として江崎グリコとセブン&アイ・ホールディングスの2社が登壇し、自治体として神戸市と福岡市が登壇した。
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江崎グリコは、新商品の開発につなげるためにヤフーのビッグデータを活用する。検索キーワードとして生活者が「ダイエット」とともに検索している「栄養素X」に注目し、栄養素Xを検索している人の人物像を分析した。今後も、実証実験を継続しながら、栄養素Xに関する商品開発を進める。
セブン&アイ・ホールディングスは、生活者の真のニーズを探る手掛かりとしてヤフーのビッグデータを活用する。例えば、本質的な問題として、新婚家庭では、料理のメニューではなく食材で検索し、食材をどう料理にすればいいのかを調べていることが分かった。こうした洞察を、具体的なサービスに結び付けていきたいとしている。
他の例としては、意外な悩みが分かった事例として、忘年会に何を着ていけばいいかを検索する人が、2014年と比べて3倍に増えていることが分かった。前提の変化が見られる動向としては、「おせち×インスタ映え」とか「おせち×お洒落」とかで検索する人が多い。完成品のおせち料理だけでなく、おせち料理を作るための単品製品のニーズがある。隠れたニーズの例では、大晦日にはカニ鍋やエビチリなどのニーズがある。
興味関心の可視化、位置情報の活用、レコメンドの3つのツールを提供
2019年10月から、以下の3つのサービスを提供する。
(1)「DATA FOREST INSIGHT People」は、生活者の興味関心を可視化するツールである(図2)。人気キーワードのランキングといった俯瞰的な情報から、特定キーワードの関連語、時系列推移、性年代などの属性分布、といった詳細情報まで、幅広く分析できるツールを提供する。商品・サービスの企画などを支援する市場調査ツールとしての利用を想定している。
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(2)「DATA FOREST INSIGHT Place」は、ヤフーの位置情報データをもとに、特定エリアにおける生活者の実態や動きをまとめて可視化するツールである。指定したエリアにいる人々の属性・特徴や流出入人口の推移、地域・スポット間の人流規模などを把握できる。街づくりやイベント運営、出店計画などを支援するツールとしての利用を想定している。
(3)「DATA FOREST ENGINE Recommend」は、ビッグデータを活用して独自に開発した、ヤフーが自社サービスにも活用しているレコメンドエンジンである。顧客が持っているユーザーの行動履歴データを用いることで、大量の情報の中からユーザーに適した商品などを提示する。EC(電子商取引)など、幅広いサービスでの利用を想定している。