[To-Be デジタルリーダー[ITリーダーとIT部門の明日の姿・役割]]
若者のエンプラIT離れ? だからこそITリーダーがIT部門の価値と魅力を高める!─LINE片野氏×クックパッド中野氏(第1回:後編)
2019年3月26日(火)河原 潤(IT Leaders編集部)
あらゆる企業の経営課題となったデジタルトランスフォーメーション。その潮流は、ITの高度活用で経営を支えてきたIT部門自身にも「転換」を要求している。IT部門、それを率いるITリーダーがこの先どうあるべきで、何を担って経営に資するのか──。自社での実践を通じてこのテーマに対峙するクックパッドのITリーダー、中野 仁氏と各社キーパーソンの対談を通じて明らかにしてみたい。第1回は、LINEの執行役員としてサービス開発と社内ITとを共に見る片野秀人氏との、忌憚なきトークを前後編の2回にわたってお届けする。(構成と写真:河原 潤)
■LINE 執行役員 Enterprise ITセンター センター長 片野秀人氏
■クックパッド コーポレートエンジニアリング部 部長 中野 仁氏
──前編はこちら。現場で日々業務に追われながらも、キャリア形成も含めて、長期的なビジョンを持てるかどうかという、片野さんのご指摘のところから。
人材もシステムも、成長を見据えた戦略がないとダメ
中野氏:そう、現場にバッファがない状態で日常が進むのは本当にまずいです。長期的なことも考える余裕がないと、行き詰まってしまう。
片野氏:やらないことを決めて業務プロセスを見直すにも人ありきなので、先を見越して人材を集めるという考え方が必要なのだと思います。直近のタイムスケールだけを見て話をすると、「本当に採るの? 持てあますんじゃない?」という話になるけれど、長期的に見たら人材は必要な投資ですという話ができないといけない。そういう長期的なスケールで戦略を立てて、コーポレートとかバックオフィスの業務改善を進めていく。そんな計画が引けるかどうかがとても大事なのではないでしょうか。
中野氏:当社でERPの導入を検討しているときに聞いた、ツイッター(Twitter)社の話を思い出しました。ツイッターがERPを入れたときはまだ200~300人の会社規模だったそうです。外資系だと、他にも同じような事例が複数ありますが、日本の感覚だとその規模ではERPはまだ早い、「勘定奉行」などの中小企業向けパッケージで十分などと言われます。
だけど、海外ではグローバル標準なERPが選ばれる。北米系の会社は株式公開する時点でグローバル展開が前提にあって、市場と株主が要求するハードルが高く、グローバル規模での成長は必須で期待されているからかなと。早くスケールするように、資金調達がある程度できた段階でコーポレート系を作り込んでしまうのではないかと。
統合は早くやるに越したことはないです。ある程度の企業規模になり放置されてグチャグチャになったシステムやプロセスを直すのはものすごく大変で、それこそコンサルファームなどに大金を払って何とかしちゃうところもある。それで何とかなればいいけれど、重要な部分を外部に丸投げしているので、大金を払って中途半端で残念な結果になったという話もよく聞きます。
本来は上場からグローバル展開までは一気にいけるようなシステム設計であるべきではと思っています。日本企業は「身の丈に合った」と言いながら、小さなシステムを何度も入れたり入れ直したりする。更改に一体いくらかかるのか、その労力で何ができたか、という話じゃないですか。
片野氏:確かに、確かに。
中野氏:あと、「ERPは運用が大変だから嫌だ。小回りが効く小さなシステムがいい」という声。これ、システムの大小の問題以前の話じゃないかと思うのです。戦略的な目的が曖昧な組織の統廃合やM&Aの連発、社内ITにおいては異常に複雑な承認や評価プロセス、運用負荷だけが高い福利厚生制度……こんな具合ではシステムの規模に関係なくオペレーションコストは跳ね上がります。それって一体何の成果があるんでしたっけ?と。ただでさえ上場コストが高くつくところに、輪をかけてオペレーションを複雑化させるという。
そんな判断軸が曖昧で例外処理が多い、複雑怪奇なオペレーションを回せるのは、柔軟性とオペレーションレベルが高めの日本人の正社員をバックオフィスに貼り付けるからこそできることだと思います。安定雇用を前提とした属人性が高い組織だからこそ実行できる。IT部門では不安定でどうしようもないシステム運用を正社員が回すとかもその1つの例ですね。方針と仕組みの不具合を人材が現場で何とかしちゃう。戦略的なアレさを戦術レベルで吸収してしまうからギリギリまで露呈しない。
しかも、人が足りないのにシステム投資も渋ったり。「雇用を生み出す」的な大義の元に「コスト意識」といってシステム投資はちゃんとやらない。結果、オペレーションは現場にばら撒かれて溢れる。「手オペ」でズルズルと戦力を逐次投入していく。そうなると、最終的には仕組みではなく人力で解決し続ける体質になってしまいます。
会社が少し大きくなると、コーポレート部門が極端に大きくなるのもそこに原因があるのではないかと思います。社員数に比例してルーチンワークが異常に増えてしまうのですよ。最近採用難で慌てて「働き方改革」という名目でシステム投資をやっているようですが……。
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