[To-Be デジタルリーダー[ITリーダーとIT部門の明日の姿・役割]]
「運用超大事」「システム統合こんまりメソッド」…強いIT部門の実践─LIXIL岩﨑氏×クックパッド中野氏(第2回:中編)
2019年9月17日(火)河原 潤(IT Leaders編集部)
あらゆる企業の経営課題となったデジタルトランスフォーメーション。その潮流は、ITの高度活用で経営を支えてきたIT部門自身にも「転換」を要求している。IT部門、それを率いるITリーダーがこの先どうあるべきで、何を担って経営に資するのか──。自社での実践を通じてこのテーマに対峙するクックパッドのITリーダー、中野 仁氏と各社キーパーソンの対談を通じて明らかにしてみたい。対談第2回では、LIXIL IT部門 システムインフラ部 部長 岩﨑 磨氏との、忌憚なきトークを前中後編の3回にわたってお届けする。(構成と写真:河原 潤)
■LIXIL IT部門 システムインフラ部 部長 岩﨑 磨氏
■クックパッド コーポレートエンジニアリング部 部長 中野 仁氏
技術やアーキテクチャを自社でしっかり握る、ここがコア
──前編はこちら。変革の過程で、IT部門としてベンダーやSIerなど外に投げてよいものと、絶対投げてはいけないものがある、という話の続きを。
中野氏:この話をしていると、エスタブリッシュな会社でよく言われている、旧来の情報システム部門の足腰の立たなさみたいな議論にどうしてもなってきてしまいますね。
岩﨑氏:そうですね。今ちょうどやり始めているのは、LIXILのIT部門として、僕らは何を握らないといけないかという精査です。それは結局のところ、アーキテクチャ、技術なんですよね。
中野氏:エンタープライズアーキテクトの仕事。
岩﨑氏:まさしく。そこをあらためてちゃんと握ろう、作ろうぜ!と。それがコアになってIT戦略の実現に向けて的確な意思決定ができる精鋭チームの確立が肝だと思います。
中野氏:確かに。素地としてのフレームワークをデザインしたうえで、諸々を落とし込んでいく。エンタープライズアーキテクトってそういう考え方じゃないですか。完全にフレームワークのアプローチで、まず全体設計を用意したうえで、「全体はこうで今回はここを」という会話ができるかどうか。ここは絶対外に出してはダメ。コンサルに丸投げもダメ。自分たちの頭で考えないと、結局実行できないから。
岩﨑氏:まさに。もちろん失敗もあるかもしれないけど、そのリスクも取ったうえで、自分たちの経験、ノウハウにしていくことができる。
運用7割、ここが超大事
中野氏:コンサルに頼んでも運用までは面倒見られないし、ノウハウは外に逃げる。極端な言い方をすると、導入は受託開発だったりするので自分ごとですが、運用については「人ごと」になりますよね。これは構造的に仕方ないところもある。また、「コンサル側の空洞化」も起きていると思っています。コンサルのSIer化が進んでいて、企画から入ってがんばって導入まではやる。ただ、売り物だった企画機能が劣化していたり、運用をやってないから運用設計が甘かったりする。
岩﨑氏:この会社に入って、インフラで一番言っているのは運用の大切さですね。サービスデリバリーで全部のプロセスが100あるとして、結構みんな作ることはがんばる。僕の中でシステム開発のプロセスというのは物を買ってから捨てるまで、全部で100。そのうち作るプロセスなんて、はじめの10。その後の70は運用。最後の20というのが、廃棄やマイグレーションです。だから、開発って実は全体の10分の1しかないし、運用から見たらわずか7分の1。しかも、捨てたり移行したりには、作ったコストの倍かかってくる。
中野氏:わかります。導入時点では、絶対にすべての要件や課題を消し込めないはずだから、運用、保守、微修正といったプロセスは実のところ同時並行で走る。一連の工程に対して直接深くかかわれるのはIT部門しかいない。まったくの新規プロジェクトだと外部スタッフを入れる話にもなるけど、普通ここは絶対内部ですよね。アウトソースするにしても「本来自分たちでできるのだけど、人手が足りないのでお願いする」というのが大事なんだと。
岩﨑氏:運用7割をしっかりやれるか、ここを重要視できるかどうか。実際は運用を軽視する人が結構多い印象があります。「運用、とりあえず外にお願いしてしまおう」とか。でも本来、ITプロジェクトはこの運用にすべてがある。ありとあらゆるノウハウや課題がつまっていて、LIXILだと、国内だけで1兆円の売り上げを支えているのはこの運用なんです。いかに大事にとらえるか。そしてこういう重要な部分を担う人材にフォーカスして、きちんと評価することが本当に大切です。
●Next:残存する古いシステムの弊害と、統合時の「こんまりメソッド」
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