デジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流の中、ビジネスに資するIT活用の前提として、ITインフラの重要性が一層高まっている。IT部門にとって、各種業務システムの基盤を安心して任せられるデータセンター事業者は、DX推進のカギを握るパートナーと捉えられる。今回は、九州電力グループの通信事業/データセンター事業を担うQTnetに注目。同社が2019年9月に開設した「Qicデータセンター博多駅」の特徴を中心に、QTnetのデータセンター/ITインフラソリューションの導入メリットを見ていく。(撮影:坂野則幸)
通信事業者のQTnetと、データセンター(DC)事業者のキューデンインフォコム(Qic)。九州電力グループの両社は九州地区ではおなじみの企業である。その両社が、グループの新戦略の下で2019年7月1日に合併し、“新生QTnet”が誕生した。
新生QTnetは、光ブロードバンドサービス「BBIQ」や格安SIMサービスの「QTmobile」、法人向けサービス「QT PRO」に、「Qicデータセンター」が加わり、幅広いサービスラインアップを揃えることとなった。「合併でシナジーをさらに効かせるかたちで、お客さまに、より緊密なサービスを提供できるようになりました」(QTnet 執行役員 営業本部副本部長 法人営業部長の淺井希修氏、写真1)。
そんなQTnetが、3拠点目となる「Qicデータセンター博多駅」を開設し、2019年9月に運用を開始した。既存2拠点(「Qicデータセンター福岡姪浜」「Qicデータセンター福岡空港」)のスペックを上回る高信頼ファシリティを備えた最新DCである。
都市型DC「Qicデータセンター博多駅」の特徴
新DCは、福岡空港から地下鉄で2駅のJR博多駅から徒歩数分の場所にある。既存拠点を訪れる利用者が月に約2,000名にも及ぶことを踏まえての、快適なアクセスを特徴とする。淺井氏は、「以前、首都圏以外のDCは広大だが不便な土地に建てるのが主流でしたが、当社では、お客さまが作業に赴かれる際の利便性を考えて、3拠点とも交通至便な場所にある都市型DCを標榜しています」と説明する。
高い利便性に加えて、災害発生リスクは低い。政府の「全国地震動予測地図2018年版」によれば、今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は東京の48%、横浜の82%に対して福岡は8.2%である。「そもそも福岡は日本海側に位置し、南海トラフ地震の津波リスクも低いです。さらに、Qicデータセンター博多駅は、サーバールームや電源設備もすべて建物の2階以上に設置し、水害などへの対策にも力を注ぎました」(QTnet 法人営業部 副部長 兼 データセンター営業グループ長の中川公士郎氏、写真2)。
中川氏によると、建物は高減衰積層ゴムを用いた免震構造となっていることで非常に堅牢性が高く、さらに高信頼ファシリティの証であるJDCCファシリティスタンダード・ティア4を満たす設計となっているという。
ファシリティスペックに目を向けると、九州電力グループならではの電力供給体制が光る。異なる変電所から2系統の受電方式を採用し、1ラックあたりの電力供給量は実効8kVA、最大30kVAまで対応する。安定した電力供給は、ビッグデータ解析やディープラーニングといった需要にも十二分に応えられるだろう。
他方でサーバー保守時の快適性を担保している。DC内のラックに設置したサーバーへ別室からLANケーブル経由でアクセスできるサーバーアクセスブースに加えて、ユーザーのBCP/DRの災害復旧拠点や、一時的にDC内に拠点を構えたい際など、柔軟に利用できるBCPオフィスを提供している。「既設2拠点でもBCPオフィスはご好評をいただいています。そうしたお客さまの声からも、BCPオフィスのニーズの高まりを感じています」(中川氏)
サイバー脅威や内外関係者の不正リスクを鑑みて、建物全体のセキュリティ強化にも余念がない。建物入口からサーバーラックまでに、ICカードリーダーや生体認証など7段階セキュリティを配備。監視カメラによる24時間365日の有人監視体制を設けている。
一方で、ユーザーの利便性を損なわない配慮もなされている。「空港のようなボディチェックを導入するDCもありますが、あまり厳しくすると入退室が煩雑になります。利便性とセキュリティのバランスを重視した仕組みを追求しています」(中川氏)
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