事業の俊敏性追求や品質向上を支えるものとして、業務プロセスのボトルネックをどう見つけるかに関心が集まっている。2019年9月に都内で開催された「プロセスマイニング コンファレンス 2019」(主催:インプレス IT Leaders)にプロティビティLLCでディレクタを務める佐渡友裕之氏が登壇。デジタルトランスフォーメーション(DX)とプロセスマイニングの関係、同社の支援策などを語った。
DXによって組織のコアビジネスを継続的に改善する
1970年代のパーソナルコンピュータの登場、1990年代からのインターネットの台頭、そして2000年代からのモバイルコンピューティングの出現──。デジタライゼーションは、働き方や生活を変える大きな波として我々に影響を与えてきた。今なお様々なデジタル技術が登場しており、企業はそれらの活用を前提に自らの在り方を大きく変革すること、最近のキーワードでいえばデジタルトランスフォーメーション(DX)を成し遂げることが眼前のテーマになっている。
セッションに登壇した佐渡友氏は「DXはエンドツーエンドの永続的かつ累積的な進化であり、その進化に身を置くことによって組織のコアビジネスは継続的に改善します」と指摘する。紙や人を置き変え、単に自動化を進める取り組みというよりも、組織改革やプロセスの改善、テクノロジーやベストプラクティスの活用によって、ビジネスの在り方そのものを変えていくことがデジタル化の本質なのである。
「正しくデジタル化を図ることは、他社との違いを際立たせる絶好の機会ともなります。企業は、個別に最適化されたやり取りを、あらゆるチャンネルを通じていつでもどこでも提供できるようになり、顧客やパートナーに感謝され、成長をもたらしながら、豊富な情報のコラボレーションを具現化できるようになります」(佐渡友氏)。
そうした企業のデジタル化の取り組みを支援するのがプロティビティだ。同社は27カ国における75超の拠点で、ガバナンス、リスク、内部監査、経理財務、テクノロジー、オペレーション、データ分析におけるコンサルティングサービスを手掛けている。
網羅性を担保し深い洞察を得る手法がプロセスマイニング
佐渡友氏は、BPR(Business Process Re-engineering)に代表されるこれまでの企業の業務プロセス変革の取り組みについて触れながら、現在はトータルなビジネスパフォーマンスの向上を目指すBPI(Business Performance Improvement)へとフォーカスポイントが変化していると強調。BPIは業務プロセス変革よりも目的が広範囲で、質も異なり、取り組みの難易度は増すことになる。
「デジタル技術はかつて、業務プロセスを補助する役割でしかありませんでした。しかし、それらの級数的な進化により、すべての業務を網羅して可視化、モニタリングし、ボトルネックの発見やトップライン伸長のためのネタを瞬時に拾い、事業運営や経営に役立てることができるようになりました。それを可能としたのがプロセスマイニングです」(佐渡友氏)。
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プロセスの分析には様々な手法があるが、その中でもプロセスマイニングは迅速で深い洞察力を提供できることが特徴だという。「プロセスマイニングの基本概念は、データサイエンスとプロセスサイエンスの架け橋という位置付けです。データサイエンスは帰納的アプローチで網羅性の担保が難しいというリスクがあります。一方、プロセスサイエンスは演繹的アプローチで、現実を反映することが難しいというリスクがあります。それらをつなぎ、網羅性を担保しながら、深い洞察を得る手法がプロセスマイニングといえるでしょう」と佐渡友氏は説明する。
Celonisを使ったPOVサービスを提供
プロセスマイニングのメリットとして佐渡友氏は大きく次の5つを挙げる。
- 内部統制を犠牲にすることなく、会社の全体コストを削減するためのより効果的な方法を発見すること
- 日常的なルーティン作業に費やす時間を削減し、付加価値の高いビジネスにフォーカスできること
- KPIを含むより広範囲なプロセス分析を実施し、非ルーティン業務が生じても安定性を維持できること
- 組織が複雑な規制要件を遵守していることを継続的に保証すること
- データが膨大かつ常に変化している中で、意思決定のためのよりインサイトのあるタイムリーな情報を提供すること
これらのプロセスマイニングの価値を享受するために、プロティビティではプロセスマイニングツールを導入する企業に向けて、POV(Proof of Value)事前診断とPOVの実行、本格導入の支援を手掛けている。ここで用いるツールはCelonisだ。「POVで対象システムと対象業務を確認し、プロセスマイニングの効果検証、業務プロセスの分析、課題解決案の検討などを行い、Celonisの導入可否を判断できるようにします」と佐渡友氏。
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さらに同氏は、Celonisを使ったPOVの事例やデジタル化の成熟度マップ、デジタル組織へのロードマップなどを説明。その上で「デジタル化の波に乗り遅れないためには、デジタル成熟度を上げることが不可欠です。そのためにはロードマップを持ち、プロセスの成熟度に応じた自動化の優先付けを実施することが必要です。プロセスマイニングはそのための強力なナビゲーションツールになるのです」と訴えた。
●お問い合わせ先
プロティビティLLC
東京都千代田区大手町1-1-3 大手センタービル22F
TEL. 03-5219-6600[代表]
E-MAIL. tokyo@protiviti.jp
http://www.protiviti.jp
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