ドイツ IT・通信・ニューメディア産業連合会(Bitkom)が先頃、ドイツ主要都市におけるスマートシティプロジェクトの調査・評価「Smart City Index 2019」を発表した(Smart City Index 2019)。調査は、国内の人口10万人以上を擁する81都市を対象に、5分野/96詳細項目について評価がなされた結果だ。それによると、トップは北ドイツのハンブルク、2位と3位は南西部のカールスルーエとシュトゥットガルト、4位はベルリン、5位はミュンヘンという結果となった。
スマートシティの定義
最初に、スマートシティ(Smart City)の定義を確認しておく。百科事典の『知恵蔵』を引くと以下になり、一般的にそのように解釈されている。
──ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などの先端技術や、人の流れや消費動向、土地や施設の利用状況といったビッグデータを活用し、エネルギーや交通、行政サービスなどのインフラ(社会基盤)を効率的に管理・運用する都市の概念。環境に配慮しながら、住民にとって、よりよい暮らしの実現を図る。都市の規模により、スマートタウン、スマートコミュニティと言われることもある。(出典:朝日新聞社『知恵蔵』)
この定義のポイントは「ICTやAIなどの先端技術を活用して暮らしを便利で快適にする」という点にある。IT依存の要素がかなり強く感じられる。
一方、ドイツではITが重要だとの認識は日本と変わらないが、どちらかと言えば、住民の生活感覚からの評価に重点が置かれているように見える。一例として、ドイツのコンサルティングファームのローランドベルガーが発表したスマートシティの評価項目と各項目の配点を示す(図1)。

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図1にあるように、大きく活動領域(Action Fields)と実現手段(Enablers)で構成され、実現手段は計画(Planning)とインフラ・ポリシー(Infrastructure & Policy)の中分類がある。全体では20近くの評価項目が挙げられている。
Bitkomスマートシティ指標に見る独主要都市の“本気度”

それでは、本題であるBitkomが発表した「Smart City Index 2019」(画面1)、すなわち2019年度のスマートシティ指標について見ていこう。Bitkomはスマートシティ指標として、1.行政、2.ICT、3.エネルギー・環境、4.モビリティ、5.社会・地域コミュニティの5分野に分けて評価している。
この5分野に合計、96もの調査項目が挙げられている。これらの項目には、当然のことながらハード面も多いが、「住民の暮らしやすさ、快適さ、地球環境への配慮」などのソフト、サービス面の項目もしっかりと調べられている。例えば、地球環境への配慮という点では項目3.7で、排気ガスの少ないバスの現有台数や将来計画数までもが調査されており、ドイツ人の地球環境配慮への真剣さがうかがえる。
そしてBitkomは、調査対象となったドイツ国内の人口10万人以上の81都市について、Bitkomの指標に基づき精査、上位17都市のランキングを公表している(図2)。なお、表1には5分野それぞれの詳細項目名を記しておく。

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こういったランキング/評価が客観的数値と共に公表されているのを見るにつけ、日本との大きな差を感じる。日本の総務省も、スマートシティについて世界各国の実施例を調査し「総務省におけるスマートシティの展開について」という資料を公開している。だが、それよりもまず、日本の諸都市ごとの取り組みの実情はどうか、という評価観点からの調査は見当たらない。ぜひ、このBitkomのような客観的指標を算出して、国内の実態を公表していただきたいものだ。
●Next:Bitkomスマートシティ指標5分野の各項目
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