[インタビュー]

普及に伴い露呈するRPA活用の諸課題、解決のカギを握るのはIT部門─ガートナーのアナリストがコツを解説

ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ シニアディレクター阿部恵史氏

2020年1月27日(月)杉田 悟(IT Leaders編集部)

国内では業務部門や事業部門など利用部門主導で導入されることが多いRPAだが、導入が進むにつれ「思ったように適用範囲を広げることができない」「個別導入を放置して野良ロボットが増えている」などいくつか課題も現れている。その際「課題解決のカギはIT部門のかかわり方にある」と指摘するのは、ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門ITインフラストラクチャ&セキュリティ シニアディレクターの阿部恵史氏だ。同氏にRPA市場の最新動向とRPA導入におけるIT部門のかかわり方のポイントを聞いた。

 日本では、労働人口減少や働き方改革などを背景にRPA市場が急成長を遂げている。BizRobo!、WinActorなどの国内ベンダーのRPA製品(BizRobo!は米KofaxのOEM)が早々に支持を集め、確固たるポジションを築いて市場を形成してきた。一方、先行して導入したユーザーの一部からは、RPAで、投資に見合う十分な成果を得ることの難しさを指摘する声も聞こえてきている。

 日本国内の状況を見るに、RPAは、IT部門や専任のRPA活用推進組織が推進している場合のほかに、業務部門や事業部門といった利用部門が直接リセラーとやり取りを行い、導入を推進している例が多いのが特徴だ。そのため、利用領域の拡大、システム改変への対応といった課題が持ち上がると、利用部門では対応できなくなり、IT部門に助けを求めることもある。

 ガートナー ジャパンでRPAのアナリストを務める阿部恵史氏は、RPAの導入・運用におけるIT部門の重要性を説いており、今回その詳細を聞かせていただくことができた。2019年10月に米ガートナーが発表したRPA製品のベンダーポジション指標であるマジッククアドラント(図1)を取り上げたうえで、ツール選定のヒントともなるグローバル市場動向について聞いたうえで、IT部門がRPA導入・活用にどうかかわっていくべきかを解説してもらった。

図1:RPAツールのマジッククアドラント(出典:ガートナー ジャパン)
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RPAマーケットはまだまだブルーオーシャン

──RPAのマジッククアドラントが初めて公開されました。日本では急成長を遂げたRPAマーケットですが、世界的にはどうなのでしょうか。

 グローバルのRPA市場は、2018年の総収益が約8億5000万ドル(約931億円)程度でした。これはマーケットとしては小規模ですが、ガートナーが公式に追跡しているソフトウェア下位セグメントの中では、RPAが成長率が最も高い前年比63%増を記録しています。

 マジッククアドラントでは米UiPath、英Blue Prism、米Automation Anywhereの3社がリーダーに位置しています。市場評価額は2018年11月時点でUiPathが30億ドル超、Automation Anywhereが26億ドル、株式を公開しているBlue Prismの時価総額が約14億ドル。いずれも短期間で急速に価値を上げています。

 RPAマーケットは世界的に好調で、この3社が牽引役になっています。日本においては、早々と日本市場に参入したUiPathがトップグループに位置していますが、あとの2社は遅れを取っています。しかしこの3社はいずれも日本法人を設立しており、体制強化を図っています。今後もビジネスを伸ばしていく可能性は高いと思います。

写真1:ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門ITインフラストラクチャ&セキュリティ シニアディレクターを務める阿部恵史氏

──日本のRPAマーケットは、急激に成長してきた感が強いのですが、まだ成長の余地は残されているのでしょうか。

 市場がレッドオーシャンになると、人の顧客を奪い合わないとビジネスを伸ばせなくなります。RPA市場はまだ、新規顧客や自分たちの既存顧客の中で適用範囲を広げていくというアプローチを取るだけでビジネスが伸びるブルーオーシャンの状態にあるので、しばらく成長は続くでしょう(図2)。

図2:日本におけるRPAの導入状況(出典:ガートナー ジャパン、2018年12月)
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──RPAをスモールスタートしたユーザーの多くが、適用範囲を広げる際に苦労しているという声も聞きます。

 その説明を行うまえに、デスクトップ型RPA、サーバー型RPAの定義を明らかにしておきましょう。明確な定義がないのが現状ですが、稼働するすべてのロボットを一元的に管理する機能があるかどうかで判断するのが分かりやすいかもしれません。デスクトップ型RPAは、自分のPC上で動いているロボットの管理は行えますが、他のPCで動いているロボットの管理は行えません。すべてのPC上のロボットを一元的に管理できるのがサーバー型RPAです。

 デスクトップ型RPAは、個人のPCや小規模な業務処理を自動化するもので、スモールスタート導入が可能です。コストも安価なものが多く、スモールスタートしているユーザーの多くがデスクトップ型RPAを導入しています。そういったユーザーは、RPAの適用範囲を広げる際に共通の課題にぶつかることがあります。「どうやって全体のガバナンスを担保していけばよいのか」という課題です。

 実際、「他社ではどうやっているのか」「今使っているツールは適用範囲を広げることを考えたときにどうなのか」といったユーザーからの問い合わせが増えています。その解決策として考えられるのが、管理やガバナンスの観点からの支援機能を備えたサーバー型RPAツールに乗り換えるという方法です。

 一元管理の機能があれば、社内で動いているロボットの稼働状況を全体的に見渡せるので、個別最適に陥っていたものを全体最適にすることが可能になります。よく言われるのが、作成したまま使われずに放置してある「野良ロボット」対策にもなるということです。

──マーケット的にもデスクトップ型優位からサーバー型優位に移行しているのでしょうか。

 デスクトップ型からサーバー型にマーケット自体がはっきり移行している、というのは当たりません。日本ではデスクトップ型RPAから始まっているので、初期に導入していたユーザーは本来サーバー型が適している領域でもデスクトップ型を導入していました。そういったユーザーが、後から登場したサーバー型に乗り換えているというのはあるでしょうね。

 デスクトップ型RPA、サーバー型RPAそれぞれに適した領域があって、どちらがすぐれているというものでもありません。適材適所で使い分けるというのが、理想的な使い方だと思います。

──かつてはサーバー型と言えばBlue Prismといったイメージが強かったのですが、最近では他のRPA製品ベンダーもサーバー型の機能を備えつつあるのでしょうか。

 はい。今では多くのベンダーが、サーバー型、デスクトップ型両方の機能を合わせ持ったツールを提供しています。Blue Prismに限らず、マジッククアドラントのリーダーに選ばれた他の2社もサーバー型の機能を持っています。Blue Prism以外はデスクトップ型RPAの機能も備えており、ハイブリッドで使えます。UiPathはもともとがデスクトップ型RPAだったのですが、後でオーケストレーションという管理機能を加えることで、サーバー型としての機能も有するようになりました。

 日本で大きなシェアを持つRPAテクノロジーズのBizRobo!ですが、そのOEM元になっている米Kofaxも統合管理機能を提供しています。また、デスクトップ型RPAツールとして知られているWinActorも、開発元のNTTアドバンステクノロジが管理サーバー機能をクラウドで提供するManager on Cloudを、販売を担うNTTデータが管理統制を行うWinDirectorを開発し提供しています。これらを組み合わせることでサーバー型機能を備えたと捉えることができます。

●Next:RPAにAIを適用することに何がもたらされるのか?

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