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[ユーザー事例]

データの戦略活用でDXを推進─東京海上日動がデータ統合/分析基盤の構築で目指したこと

2020年3月24日(火)杉田 悟(IT Leaders編集部)

東京海上日動火災保険がインフラ戦略、データ戦略、組織・プロセス戦略で構成される「次世代フレームワーク」を構築して、グループのデジタル化を推進している。2020年3月5日、一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)主催の「データマネジメント2020」のセッションに登壇した東京海上日動火災保険 IT企画部 部長で、東京海上日動システムズ エグゼクティブオフィサー デジタルイノベーション本部長を兼務する村野剛太氏が、同フレームワークに基づくデータ統合/分析基盤の構築プロジェクトを紹介した。

新たな取り組みで見えてきたデジタル化への課題

写真1:東京海上日動火災保険 IT企画部 部長で、東京海上日動システムズ エグゼクティブオフィサー デジタルイノベーション本部長を兼務する村野剛太氏

 東京海上日動システムズは、東京海上グループのIT戦略を担う情報システム会社である。東京海上日動火災保険と東京海上日動あんしん生命のITに関して企画、提案から設計、開発、保守、運用までを行っている。

 東京海上日動火災保険のIT企画部 部長と東京海上日動システムズのエグゼクティブオフィサー デジタルイノベーション本部長を兼務する村野剛太氏(写真1)が取り組んだのが、グループのデジタル化に向けた「次世代フレームワーク」の構築である。

 保険業界は、デジタル化の進展により大きな変革期を迎えている。顧客嗜好が多様化し、ビッグデータやIoTにより価格競争や付加価値サービス競争が激化している。自動運転の登場により従来のリスクが極少化する一方で、サイバーリスクなど新たなリスクが出現している。

 東京海上グループでは近年、新たな取り組みを積極的に行ってきた。ユーザーにドライブレコーダーを提供するテレマティクスサービスや、ウェアラブルデバイスを使った東京海上日動あんしん生命の「あるく保険」などIoTを活用した施策のほか、AIやモバイル、SNSなど、新たなITを活用したサービスを投入してきた。

 社内の業務効率化・利便性向上に向けても、AIを使って照会応答サポートや手書き漢字認識、人工衛星画像の解析を行っているほか、RPAの導入、ブロックチェーンの活用なども始めている。

 このような取り組みを行ってきた結果、いくつかの課題が見えてきた。「例えば、PoC(Proof of Concept:概念検証)フェーズまではスピーディーに進められるが、本開発のフェーズで躓くため、サービス提供に時間がかかっていました。これは、基幹システムとの連携やデータ整備に時間を要するためです」(村野氏)

 また、システム間が密結合しているものが多く残されており、システム数が増大すると複雑性が増す状態になっていた。このままだと、さらにシステムを増やしていくとサービス品質や生産性の低下を招きかねない。

 社外との連携サービスも増加しているが、システム連携やデータの高度活用の際に、連携先企業の法務やセキュリティに関する整理が不十分で、プロジェクトのボトルネックとなっていた。

 これらの課題を解決し、デジタル化を確実に進めていくために構築したのが「次世代フレームワーク」(図1)だ。「インフラ戦略」「データ戦略」「組織・プロセス戦略」で構成されており、これによりデジタル化の進展による環境変化に迅速かつ効率的に対応し、システムが肥大化・複雑化していくリスクを回避するのが狙いだ。

図1:東京海上グループの「次世代フレームワーク」(出典:東京海上日動システムズ)
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SoE、SoR、SoIを切り分けシームレスに連携

 インフラ戦略は、SoE(Systems of Engagement)、SoR(Systems of Records)、SoI(Systems of Insight)の3つの領域の役割と目指すべき方向を明確に定め、シームレスに連携できるインフラを構築する、というもの。

 デジタル化を実現するためには、高度なデータの利活用が不可欠となる。既存の環境では、ユーザー接点のシステム(SoE)と契約管理のシステム(SoR)が密結合で連携していた。そのため、いざ分析するとなると、いろいろなところからデータを抜き出してきて、そのたびごとに処理を行うという手間がかかっていた。各システムのデータが十分に統合/活用されていない状態だったという(図2)。

図2:DX推進前のインフラ(出典:東京海上日動システムズ)
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 そこで、あやふやだったSoE、SoR、SoI、それぞれの役割と目指すべき方向性を明確に定めて完全に別システムとして構築、連携は疎結合で行うことにした。SoEはスマートフォンなど顧客の求めるUX(ユーザーエクスペリエンス)でシームレスにつながり、迅速に新サービスを開発できる環境を用意する。SoRは変化に柔軟に対応できるシンプルなシステムにする。SoIは散在しているデータを統合管理して、リアルタイム活用を可能にするという方針を決定した(図3)。

図3:DX推進後のインフラ(出典:東京海上日動システムズ)
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●Next:データレイクとデータラボからなるデータ統合/活用基盤の詳細

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