[市場動向]

保守サポート切れのIT機器を継続利用できるサービスとは? ─事業者のネットワンネクストにその内実を聞く

2020年7月20日(月)齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)

メーカー保証や保守サービスが終了するサーバーや通信機器などのIT機器を、廃棄・買い替えすることなく継続利用できる──こんなサービスが定着する可能性が出てきた。機器の所有権を買い取り、保守サービスを含めて定額で利用し続けられるようにするものだ。どんな場合に向くのか、ユーザーにとってのメリットは何か。サービス提供で先行するネットワンネクストに聞いた。

まだ使えるサポート切れIT機器を継続利用

 現在、さまざまな分野で製品、サービスを任意の期間、定額で利用できるサブスクリプションサービスが登場している。サービスの利用料を変動費として計上することで固定費を削減できることから、B2Bでの利用も進んでいる。

 IT分野でも、SaaSに代表されるソフトウェアの利用形態として広がりを見せている。しかしハードウェアは、レンタルやリースすることはあっても、サブスクリプションは広がっていない。機能や性能が急速に向上するハードウェア――サーバーやネットワークなどのIT機器――は数年ごとに更改するのが一般的だし、部品供給の問題もあるのでメーカー保証が切れたら買い換えが必要になるからだ。

写真1:ネットワンネクスト 代表取締役社長の福本英雄氏

 この状況を変えるべく、メーカー保証が切れた機器であっても定額で使い続けられるようにするサービスが登場した。1年間は使い続ける必要があるが、その後はいつでも契約を解除できる点で、サブスクリプション型のサービスと呼べる。

 このサービスを提供するネットワンネクスト代表取締役社長の福本英雄氏 (写真1)は、「『まだ使えるIT機器を定期的に入れ換えるのはもったいない。使い続けたい』という声を多く聞いていました。そこで、2017年にネットワンシステムズの新規事業としてサービスを提供し始めたところ、かなりの引き合いをいただくことができました」と話す。

 それを受けてネットワンシステムズは、2019年1月に専業会社のネットワンネクストを設立している(関連記事ネットワン、サブスクリプションサービス(サブスク)の拡大で新会社「ネットワンネクスト」設立)。とはいえ実はこのサービス、単純ではない。「第三者保守」「再生品販売」「レンタル」という3つのサービス(図1)を組み合わせることで成立しているのだ。どういうことか、見ていこう。

図1:ネットワンネクストが展開する3つの事業(出典:ネットワンネクスト)
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第三者保守、再生品販売、レンタルを組み合わせる

 メーカー保証や保守サービスが終了するIT機器の所有権をネットワンネクストが買い取り、ユーザーは月々定額で利用し続けるというのがIT機器のサブスクリプションサービスだ。第三者保守により、一般的なレンタルやリースでは含まれない保守サービスを付けたことで、ユーザーは安心して機器を使い続けることができるようになる。

 ハードウェアをサブスクで提供するための大前提が保守、具体的には第三者保守である。購入かリースかはともかく、保守切れになった製品を使い続けられるようにするためには、メーカー以外が保守サービスを提供する必要があるから当然だろう。このためにネットワンネクストでは扱うIT機器に精通したエンジニアを多数擁している。

写真2:ネットワンネクスト 取締役の北野雄太氏

 ただし、それだけでは不十分。というのもハードウェアは構成部品が物理的に壊れたり、耐用年数を迎えたりする。機能を発揮させ続けるには故障の原因になる部品を修理したり、交換できなければならないのだ。「欧米では、メーカー保証が切れたあとに第三者が機器を保守することは一般化していて、機器や部品を調達するためのマーケットも確立しています」(同社取締役の北野雄太氏:写真2)。

 しかし、国内ではそうではないし、保証が切れた製品になると当然、メーカーから部品調達することもできない。ここに生きてくるのが中古再生品の販売を行っていること。レンタルアップ品、中古品、部品取り用の故障品などから、修理に必要な部品を調達するわけだ。ネットワングループとして、保守部材約7300種類・8万点を超える保守部材を全国約56カ所の物流拠点に配置し、全国のユーザーに短時間で配送できる体制を構築しているという(図2)。

図2:ネットワングループの保守体制(出典:ネットワンネクスト)
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 品質管理についても、「エキスパートオペレーションセンター(XOC)」および「品質管理センター」と呼ばれる専門の部署を設置し、入庫前の外観検査や出荷前の起動確認等による安定動作確認をルール化している。XOCや品質管理センターは関東圏・関西圏でのBCPに対応し、災害時にもサービスを継続して提供するミッションがあるという。

 第三者保守と再生品販売に加わって、サブスクの形でサービス提供を可能にしたのが(矛盾するようだが)レンタルである。例えばユーザーの資産だったIT機器を同社が購入し、ユーザー企業には使用価値を提供する。保守切れになっても書類上の操作だけでIT機器を使い続けることができる。一方で「IT機器の性能や機能が足りなくなった。しかし買い換えの予算はない」というユーザーの場合には、スペックを満たした中古再生品に保守サポートを付与した形で提供する。

 サービスの対象機器は、当初はシスコシステムズやジュニパーネットワークスなどのネットワーク機器だけだったが、現在はデルやHPEなどのサーバー製品、EMCやネットアップなどのストレージ製品に広げている(表1)。なおネットワンネクストは、このサービスを「スペックレンタル」(関連記事ネットワンネクスト、故障時の製品交換サービスを含んだネットワーク機器のレンタルサービス)と名付けている。

表1:保守対応メーカー(出典:ネットワンネクスト)
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●Next:IT機器のサブスク、そのメリットは?

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