ダイキン工業は2020年7月14日、日立製作所が提供するSCM(サプライチェーン管理)のシミュレーション技術を導入したと発表した。フッ素化学製品に関するグローバルの5カ所の製造拠点、9カ所の販売拠点、数百品目を対象に、2020年6月から稼働している。KPIを最大化する生産・販売計画の立案を支援する。需要変動にも対応する。
ダイキン工業は、化学事業において、SCMをシミュレーションする技術を導入した(図1)。複数の製造・販売拠点の需給バランスを基に、利益、売上、キャッシュフローなどのKPIを最大化する製造・販売施策や生産計画を自動で提示してくれる。新型コロナウイルス感染症の影響などの急激な需要変化にも即応する。
拡大画像表示
ダイキン工業は従来、「どの製品を、どの拠点でどれだけ生産し、どこで販売するか」といった製造・販売施策を、担当者が手作業で立案していた。今回、シミュレーションシステムを導入したことで、従来の60倍のパターン数を短時間で作成できるようになった。これにより、意思決定に要する時間を約95%短縮できることを確認した。
ダイキン工業と日立製作所は2018年9月から、フッ素ゴム「ダイエル」を対象に、モノづくりプロセスの革新を目指した新たなシステムの開発・実用化に向け、協創を進めてきた。こうした流れから、日立ソリューションズが持つSCMシミュレーション技術を適用し、事業計画の立案・実行を支援するシステムの実証実験を行った。
実証実験の結果、ボトルネック工程の設備稼働率と生産能力を高めるための増産施策や、利益を最大にする調達・生産・販売経路の変更施策、現場の制約を加味した実行可能な生産計画を、自動で複数パターン提示できるようになった。製造・販売施策をタイムリーに立案できるため、迅速に意思決定できるようになった。
ダイキン工業は、これまで需給調整担当者が膨大なデータを基に手作業で立案していた製造・販売施策や生産計画について、日単位でタイムリーに検討できるようになった。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による市場の急激な需要変動に対しても、有用性が確認できた。このため、今回本格的な運用を開始した。
ダイキン工業は今後、ダイエル以外の化学品への適用拡大を図る。さらに、製造現場データの収集基盤と連携させることで、よりタイムリーかつ高精度な分析と経営判断につなげていく。