NTTデータ経営研究所、JTB、日本航空(JAL)は2020年7月27日、リゾート地で仕事をする「ワーケーション」の効果を検証する実験を実施した。実験の結果、ワーケーション実施中に業務効率が20%程度上がり、ワーケーション終了後も5日間は効果が持続したことが判明した。心身のストレス反応は、参加前と比べて37%程度下がり。歩数は2倍程度に増えたという。
ワーケーションは、リゾート地や地方など、普段とは異なる場所で働きながら休暇取得などを行う仕組み。NTTデータ経営研究所、JTB、日本航空(JAL)は今回、ワーケーションの効果・効用に関するエビデンスの獲得と、効果的なワーケーション施策の策定・普及を目的に、実証実験を実施した。
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沖縄県のカヌチャリゾートでワーケーションを実施した(写真1)。研究チーム企業の所属メンバーを中心とした男女18人が参加した。ワーケーションの効果測定手段として、Webアンケートを実施するとともに、リストバンド型の活動量計「Fibit Charge3 HR」を使って活動量や睡眠時間などの行動データを収集した。
実験環境として、無線LANが使えてソーシャルディスタンスを保持した執務エリアを用意した。また、宿泊部屋の自室でも仕事ができるようにした。解析の方法として、実験参加者一人ずつの尺度得点を個人内で標準化し、ワーケーション前の時点をベースとして、その後の変化を反復測定分散分析および多重比較によって調べた。
プレワーケーション期間(2020年6月19日~6月25日)、ワーケーション期間(2020年6月26日~6月28日)、ポストワーケーション期間(2020年6月29日~7月3日)の3つの期間それぞれについて、Webアンケートと活動量計によるデータ収集を実施した(図1)。取得したデータ項目は、表1の通りである。
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尺度名 | 尺度概要 |
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Segmentation preference(公私分離志向) | 生活における仕事とプライベートのメリハリの付け方の好みを問う尺度 |
リカバリー経験 | 1日の仕事が終わった後の時間の過ごし方(リカバリー経験)を問う尺度。「コントロール(プライベートの過ごし方を自分で決められる)」、「心理的距離(仕事と距離を置ける)」、「リラックス(リラックスできる)」、「熟達(自分の成長に時間を使える)」の4項目に分かれる |
ワークエンゲイジメント | 仕事に対する活力、熱意、没頭の程度を問う尺度。仕事に関連するポジティブで充実した精神状態が反映され、この指標が高いと従業員個人の生産性や心身の健康状態が高く、またそういった従業員が多い企業は、収益性が高く、離職率・無断欠勤が大幅に少ないことが明らかになっている |
職業性ストレス | 労働に際して発生するストレスを含む身体的・心理的状態を問う尺度。2015年12月より施行されたストレスチェック制度で使用される「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」の一部 |
仕事のパフォーマンス | 仕事の状況や成果について問う尺度。WHOが定める国際的な生産性の指標であるWHO-HPQ、並びに新職業性ストレス簡易調査票から「規定された職務遂行」と「創造的な行動」の項目を利用 |
組織コミットメント | 自分の所属する組織に対するコミットメントの強さを問う尺度。「継続的(今会社を辞められない)」、「規範的(価値観として転職すべきでない)」、「情動的(会社の中で自分を家族の一員のように感じる)」の3種類に分かれる |
罪悪感 | ワーケーション中の罪悪感を問う尺度(独自尺度) |
職務満足度 | 仕事の満足度を問う尺度(独自尺度) |
主観的健康感 | 主観的な健康状態を問う尺度(独自尺度) |
主観的メンタル状態 | 主観的な不安傾向等を問う尺度(独自尺度) |
直近の業務内容(ワーケーション中) | ワーケーション中の業務内容を問う設問。実施内容、結果、実施人数等を聴取(独自尺度) |
直近の自由時間の過ごし方(ワーケーション中) | ワーケーション中の直近の自由時間の内容を問う設問。実施内容、結果、実施人数等を聴取(独自尺度) |
活動量(歩数・その他消費カロリーなど) | リストバンド型の活動量計「Fitbit Charge3」(実験期間中常時着用)により計測 |
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