国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、地球環境のシミュレーションに用いるスーパーコンピュータの次世代版「次期地球シミュレータ」をNECに発注した。新システムは、ベクトル型スパコン「SX-Aurora TSUBASA」を利用する。2021年3月から運用を開始する。
海洋研究開発機構の地球シミュレータは、地球環境のシミュレーションに用いるスーパーコンピュータである。地球環境、海洋資源、海域地震、火山活動に関する研究開発、得られるデータの連携、これらのデータの数値解析などを担う。
初代の地球シミュレータは、2002年に運用を開始した。現行機は第3世代にあたる。初代機から現在に至るまで、NECのベクトル型スパコン「SXシリーズ」を採用している。ベクトル型スパコンの特徴は、メモリー性能が高いことである。大容量データを一括処理する大規模シミュレーション用途に向く。
今回、第4世代に当たる次期地球シミュレータをNECに発注した。新システムは、SXの現行機種「SX-Aurora TSUBASA B401-8」(写真1)を684台(合計5472台のベクトルエンジンを搭載)を中心とし、最大理論性能は19.5PFLOPS(ペタフロップス)。従来システムの約15倍の性能で、消費電力はほぼ同等、設置面積は約半分である。GPU(米NVIDIA製)搭載のPCサーバー機も組み合わせる。
性能の向上によって、従来では難しかった複雑なシミュレーションや、より大規模なシミュレーションを高速に行えるようになる。地球環境問題の解決や地殻変動、地震発生などの未知なる因果関係の解明、自然災害の予測と対策などへの貢献を期待している。
なお、現行機のSX-Aurora TSUBASAは、x86とベクトルプロセッサを組み合わせたスパコンである(関連記事:NEC、x86とベクトルプロセッサを組み合わせた新型スパコン「SX-Aurora TSUBASA」)。最新型のSX-Aurora TSUBASA B401-8では、水冷方式を採用し、実装密度を高めている(関連記事:NEC、ベクトル型スパコン新機種「SX-Aurora TSUBASA B401-8」、水冷で実装密度を2倍に)。