富士通研究所は2020年10月16日、商業施設、公共機関、街中などの複数箇所に設置した防犯カメラの映像から同一人物を探索できるロバスト人物探索技術を開発したと発表した。これまで専門家が手動で行っていた人物探索作業を自動化する。富士通研究所の独自データで評価したところ、90%以上の精度を達成した。富士通研究所は今後、2021年度中の実用化に向けて、同技術の精度向上を図る
富士通研究所が開発したロバスト人物探索技術は、商業施設、公共機関、街中など複数箇所に設置した防犯カメラの映像から同一人物を探索する技術である(図1)。専門家の知識がなくても自動で高精度な人物探索ができる。富士通研究所の独自データで評価したところ、90%以上の精度を達成した。
様々な映像シーンでの人物探索を可能にするため、人の服装などから得られる約100種類の静的属性に、人の行動から得られる約100種類の動的属性を加えた、約200種類の探索属性を推定する。さらに、過去の映像シーンで推定した人物の全属性と、その人物を探索するために専門家が選択した属性の種類をAIに学習させ、自動選択モデルを作成する。これにより、新規の映像シーンでも、推定した全属性を自動選択モデルに入力することで、そのシーンに最適な探索属性を自動で選択できる。
例えば、複数の防犯カメラ映像で、防犯カメラの設置位置と人物との距離が遠い場合は「服の色」、時間経過が大きい場合は「歩容」、身体が隠れてしまっている場合は「耳の形状」というように、映り方や時間の経過による変化に応じて最適な探索属性を自動で選択する。同技術を活用することで、様々な防犯カメラ映像からの様々なシーンで、映像解析による迅速かつ正確な人物探索が可能になる。
背景について同社は、防犯カメラの映像が、商業施設や公共機関などで不審人物や迷子の探索に活用されていることを挙げている。「一方で、より迅速かつ正確な情報を取得することを目的に、防犯カメラの設置台数は増加している。それにともない映像データ量は増大し、映像解析などに工数がかかっている現状がある」という。