VDI(仮想デスクトップ基盤)が、中堅・中小企業に急速に拡がっている。その原動力となっているのが、クラウド型のVDI、いわゆるDaaS(Desktop as a Service)だ。自社でサーバーやストレージなどを導入・運用する必要がなく、料金も使った分だけ、もしくは定額で利用できる。東京エレクトロン デバイス株式会社では、このクラウド型VDIのソリューションとしてMicrosoft Azureを基盤にした「Windows Virtual Desktop」と、シンプルかつ低コストが特徴の「Workspot Cloud VDI」の2つを提供している。ここでは、クラウド型VDIの特徴やメリット、スムーズな導入に導く成功ポイントなどをご紹介しよう。
クラウド化で中堅・中小企業のVDI導入が容易に
PCのデスクトップ環境を仮想化してサーバー上に集約するVDI(仮想デスクトップ基盤)。端末運用・管理の効率化やシステムセキュリティの強化といった長所の一方で、コストや管理の難しさから、これまでは大企業を中心に導入が進んできた。
それが現在では、たとえば全社でPC端末が100台規模の中堅・中小企業でも、積極的に導入するケースが急増しているという。特に2020年の春以降は、コロナ禍によるリモートワークをセキュアに利用する手段としても、VDIは大きな注目を浴びている。だが、こうした需要の拡がり自体は数年前からすでに始まっていたと、東京エレクトロン デバイス株式会社 EC BU クラウドIoTカンパニー エンベデッドソリューション部 プロダクト1グループ グループリーダー 野﨑 智弘 氏は指摘する。
「過去10年足らずのうちに東日本大震災や大水害が続き、BCPの一環として『どこにいても仕事ができる環境』を整備しようという動きは出ていました。そうしたニーズが育っていた所へクラウド型のVDIが登場して、大企業以外のお客様にとっても十分に現実的な選択肢になってきたのが、導入増加の背景と見ています」(野﨑氏)。
従来のオンプレミス型のVDIと比較すると、クラウド型VDIは初期導入コストが非常に少ない。しかもサブスクリプションモデルなので、利用料金以外の運用・維持コストはかからない。もちろんクラウドだから、バージョンアップや障害対応を自社で行う必要もない。そうした点が評価され、もともとスタートアップや中堅・中小企業の顧客に多くの実績を持つ同社にも問い合わせが相次いでいると、東京エレクトロン デバイス株式会社 EC BU クラウドIoTカンパニー エンベデッドソリューション部 梶原 隆志 氏は明かす。
「Amazon WorkSpacesのようなクラウド型VDIの技術が登場したここ数年、かなり動きが活発になっていましたが、やはり決め手となったのは2019年10月から提供が始まったマイクロソフトのWindows Virtual Desktop(WVD)です。Windows 10マルチセッション接続という新しいサービス形態や、Microsoft Azureのクラウド基盤を介して既存のWindows環境ともシームレスに連携できる点などが注目され、多くのお客様からお問い合わせをいただくようになりました」(梶原氏)。
2020年に入ってAzure Resource Manager (ARM)へ統合されたことで、さらにWVDの人気は高まっている。それまでは環境構築にPowerShellが必須で、専任の技術者がいない企業では導入の敷居がかなり高かった。それがAzure Portal上のクリック操作で環境構築が可能になり、大幅に導入のハードルが低くなったからだと梶原氏は見ている。
導入前にチェックすべき「成功のポイント」とは?
では、実際にクラウド型VDIを自社で導入する場合、どのような点に注目して準備を進めていけばよいのだろうか。野﨑氏は、まず押さえておくべき重要なポイントが3つあるという。
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