DXを見据えたIoTの拡がりや5Gの実用化などを背景に、データ活用のテクノロジーが急速な変化を遂げている。とりわけ分析=アナリティクスでは、データを物理的に1カ所に集めた上で人手で処理する「Visual Analytics」に限界が見えてきた。今後はAIによる自動化やリアルタイム処理による「Immersive Analytics」へ主流が移っていくだろう。そうしたトレンドを踏まえた、これからの最適なデータアーキテクチャとはどんなものか。「データマネジメント2021」のセッションでは、データ仮想化基盤「Denodo Platform」で実績を持つ、Denodo Technologiesの貞森雄介氏(プリセールスエンジニア)が最新動向を解説した。
BIデータ活用は「集める」から「つなぐ」へ変化する
セッションの冒頭、Denodo Technologiesの貞森雄介氏(プリセールスエンジニア)はビジネスインテリジェンス(BI)の歴史を振り返り、いま飛躍的に進化・多様化したデジタルとクラウドを追い風に、BIは新たなステージに突入していると指摘する。ではその新しいBIの特徴とはどんなものだろうか。ガートナーが2021年に発表した「データと分析のトレンド」では、大きく3つの項目が挙げられている。
① データとアナリティクスのイノベーションの加速
従来のビッグデータ中心の分析から、「小さくて広いデータ」までをカバーした分析へ移行。その基盤となるデータファブリックを媒介とした、より目的に合わせた柔軟でリアルタイム性にも優れた分析へと、環境が急速に変化してゆく。
② より効果的なXOpsによるビジネス価値の可用性
XOps(データ、機械学習、モデル、プラットフォーム)を活用して、よりよい意思決定を可能にし、データと分析をビジネスに不可欠なものに変える。
③ データソースが分散されていることを前提とする
データとそこから得られたインサイトを、グラフを使って関連付けて、より多くの人々がその成果を利用できるように環境を整えていく。
「これからは、1カ所に大量のデータを集めて高度な知見を持った専門家が分析するのではなく、あらゆる場所にあるデータソースをつなげて、AIによる自動化やリアルタイムのデータ処理で活用していく時代になります。その基盤となるのが『データファブリック』、すなわちあちこちに分散しているデータリソースを仮想化テクノロジーを用いて、統合された一つのデータ群としてハンドリングするプラットフォームです」(貞森氏)。
Denodo Technologies株式会社 プリセールスエンジニア 貞森雄介氏(※お写真ご提供ください)
多種多様なデータを「つなぐ」Denodoプラットフォーム
では具体的に「データファブリック」とは、どんなものなのか。貞森氏は「Denodoプラットフォーム・アーキテクチャ」(以下、Denodoプラットフォーム)を例に説明する(下図参照)。
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まず一番下の階層にある「分断された多種多様なデータソース」は、企業や組織の内部にあるさまざまなデータの総称だ。これら多種多様なデータを仮想化テクノロジーによって1つにまとめるのが、データ利用者とデータソースの間に存在する「Denodoプラットフォーム」だ。
「データの利用者が、バラバラなデータソースをBI分析に利用しようとした際に、Denodoプラットフォームがその間に立って必要なデータを収集し、統一されたビュー(見え方)に加工してデータ利用者に提供します。この働きによって、どんなデータソースでも、データ利用者がすぐに使えるデータマートとして提供可能になるのです」(貞森氏)。
ここでデータ利用者が得られるメリットは大きく3つ。1つ目は、「データへのアクセスポイントを一元管理できる」ことだ。この結果、どんなデータでもビジネスの要請に応じてスピーディに抽出・加工・分析が行える。もちろん情報セキュリティ面でも、監視ポイントを1つに絞れる意義は大きい。
2つ目は、「クエリの最適化」だ。BI分析では非常に高度で複雑なクエリが必要だが、Denodoプラットフォームの「クエリ最適化機能」なら、最も効率の良いクエリプランを自動的に立てて実行してくれる。この結果、データ転送量が最小化され、処理完了までの時間を大幅に短縮できる。
3つ目は、VRサービスなどに不可欠の「リアルタイム処理」だ。Denodoプラットフォームは、データをキャッシュに置き、随時データソース側で変更された差分だけを取得・マージした上で処理結果を返す。まさに、現在BIの中で注目のキーワードである「Immersive Analytics」に不可欠のテクノロジーなのだ。
分析エンジンからユーザー/管理者用ツールまでを網羅
貞森氏はさらに、Denodoの提供する「データ仮想統合プラットフォーム」の全体像と機能の特徴について掘り下げていく。これは「SQL-on-Anything」と呼ばれるBIエンジンを中心に、システム管理ツールやユーザー向けのフロントエンドツールなど、BI分析に必要な機能が網羅されたものだ。中でも「クエリ最適化エンジン」と「Advancedキャッシュエンジン」の2つは、プラットフォームの分析パワーを支える核となる。
「この他にも『SQL-on-Anything』には、みずからのノードに関する操作を監視・診断するジョブスケジューラが搭載されていて、ノードの振る舞いを自動化できます。またこのプラットフォーム上の各機能モジュールは、従来のETL処理に比べると非常に小さいフットプリントで動けるのも特徴です」(貞森氏)。
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BI分析のプラットフォームで気になるのは、やはりセキュリティだ。その点、Denodoのデータ仮想統合プラットフォームは、Active DirectoryやLDAPと連携してセキュリティ制御を行う機能を備えている。中でも注目は、「行列レベルマスキング」だ。その名の通り、データベース上の知られてはならない情報に、行・列単位で細かくマスキングを設定できる機能である。
たとえば製品のユーザーリストなどがあった場合、居住地域を特定できないように郵便番号だけを隠す。またマイナンバーなどの機密情報があった場合は、一律にその列を隠してしまうといったことが可能になる。またDenodoのプラットフォーム上で設定されたマスキングは、外部のツールからアクセスしてきた場合も有効であり、ネットワーク経由でデータを覗かれる心配もない。
無料トライアルを公式Webサイトで提供中
セッションの最後に、貞森氏は改めてDenodoのデータ仮想統合プラットフォームの優れた機能と使いやすさを強調。ぜひ一度、実際に操作して見て欲しいと訴えた。
「そのために当社では、論理データファブリック製品をスタンドアロンで試用できる『DenodoExpress』を公式ウェブサイトで提供しています。ダウンロードしてデスクトップにインストールすれば、すぐにお使いいただけます」(貞森氏)。
ローカル環境にインストールすることが難しい場合は、AWSまたはMicrosoft Azure上に公開された「Test Drive」が利用できる。また「Denodo Standard Free Trial」という30日間無料トライアルも別途用意されている。
「もしこうしたツールの利用が難しい場合や、詳しい評価内容のご質問などがあれば、すぐにご連絡ください。さまざまなユースケースをご用意しています」と貞森氏は呼びかけ、セッションを終えた。
●お問い合わせ先
Denodo Technologies株式会社
URL: https://www.denodo.com/ja
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