業務アプリケーションに分析・レポートの機能を加えたいと考えた時に、自社開発するとなると開発時間やコストがかさみ、高度な分析機能を提供し続けるには継続したアップデートが必須となる。それらを解決するのが、すでに完成されたBIツールをアドオンする“組み込みBI”という選択肢だ。「データマネジメント2021」のセッションに、Yellowfin Japanの林勇吾氏が登壇し、「組み込みアナリティクスで既存アプリケーションをアップグレード! 新ビジネスをスピーディに構築する方法とは」と題して、BI機能をアプリケーションに組み込むメリットと成功事例を紹介した。
アプリケーションの一機能としてBI機能を組み込める「Yellowfin」
ブラウザベースのBIプラットフォーム「Yellowfin」は、グローバルでも高い評価を受けている。その実力は、米GartnerのMagic Quadrant(Analytics & BI Platform部門)において8年連続で掲載、2年連続で「ビジョナリー」に選出されたことからもうかがい知ることができるだろう。
Yellowfinの大きな特長の一つが、企業情報システム向けのBIツールとして利用できるだけでなく、他のアプリケーションにBI機能を付加する“組み込みBI”の使い方が可能なことだ。Yellowfin Japanの東アジア事業責任者 林勇吾氏は、「組み込みBIの売上規模は日本ではまだ2割程度ですが、グローバルではすでに売上の5割以上を組み込みBI用途が占めています」と述べる。
Yellowfinの組み込みBIを活用すれば、CRM/SFAや人事などの業務アプリケーションにデータ分析や可視化したグラフなどのBI機能を組み込み、作業を途切れさせることなく、アプリケーションと一体化した機能としてデータ分析が可能になる。例えば、顧客や取引先などに向けたプラットフォームやメンテナンスサイト、情報共有ポータルサイトなどに組み込み、外部向けに情報提供をすることも可能になる。
これによって、業務アプリケーションを提供する企業は、競争優位性の確保と維持、アップセル機会の創出や業務効率化といった様々な効果を期待することができる。
国内企業の組み込み成功事例
林氏は、組み込みBIで成功を収めた事例の1つとして、NTTテクノクロス社のコールセンター向けAIアプリケーション「ForeSight Voice Mining」を紹介した。同社は、従来レポート作成機能を自社開発していたが、Yellowfinにリプレースすることで、大幅な開発コストの削減に成功した。
同アプリケーションを利用しているコールセンターユーザーは、Yellowfinを組み込んだダッシュボードを使って、例えば「この日はクレームが多かった」「この日の顧客満足度が高かった・低かった」など“今何が起こっているのか”を簡単に把握することができる。さらに、今後はYellowfinの自動分析機能を活用して“なぜそういうことが起こったのか”の分析についても提供していくことを計画中だ。
AIアプリケーション“ForeSight Vice Minig”
組み込みBIで成功を収めたもう一つの例として、中古車販売店向けにBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供しているリバイス社の事例も紹介された。同社は、中古自動車販売業界向けのCRMアプリケーションのなかで、顧客コンサルティング機能を提供しており、そこでのデータ分析/ダッシュボード機能としてYellowfinを採用した。
Yellowfinを採用することで、リバイス社は、それぞれの企業向けに個別でレポートを作成する必要はなく、デザインやコンテンツの開発に集中し、サービスを迅速に提供することができたという。
こうした分析・レポートの仕組みを顧客向けに提供したいと考えた時、「5年前であれば自社で“作る”(自社開発)という選択肢を採る企業も多かったが、BIの機能が高度化するにつれ、“使う”(BIの組み込み)という選択をされる企業が増えてきた。“餅は餅屋”でやっていただいたほうが良いのではないか」と林氏は述べた。
比較項目 | 作る(自社開発) | 使う(BIの組み込み) |
---|---|---|
初期開発コスト | 3rd Partyのチャートライブラリなどを利用しスクラッチ開発 | BIのライセンスを購入し開発(設定) ローコード・ノーコード開発 |
競争優位性 | 想定通りの画面の開発は可能だが、常に開発工数を意識して実施 | BIの持つ全ての分析・ビジュアライズ機能を利用可能 |
市場投入までの時間 | ゼロから開発するため、一般的に中長期 | ありものをすぐに使えるので一般的に短期〜中期 |
コンテンツの追加 | 開発者が実施 | ビジネスユーザーでも実施可 |
ユーザーの利便性・UX | 主に与えられたものを見る 便利だが想定内の機能 |
ユーザーが自らコンテンツを作成 ユーザーの想像を超える機能 |
組み込みBIの製品選定のポイント8つ
林氏は、組み込みBIの製品選定のポイントとして下記の8つをあげた。
- 分析の基本機能はあるか
- アナリティクスのトレンドを追いかけているベンダーか
- 既存システムとシームレスに統合できるか
- データセキュリティは担保できるか
- 自社に合ったアーキテクチャか
- 組み込み実績はあるか
- 継続的なサポート
- 戦略的・長期的パートナーシップを築けるか
林氏は「Yellowfinは創業当初から組み込み用途のために製品を作っている」と述べ、これら8つのポイントをすべてクリアできていることをアピールした。
注目すべき特異なデータを自動で可視化する
Yellowfinは、BIに求められる機能を一通り揃えている。分析対象のデータを準備するデータプレパレーション機能を持つほか、ユーザーにデータ分析機能を提供するダッシュボードやレポート機能も備える。
また、YellowfinのBI機能のメリットとして、分析を自動化する機能も紹介された。例えば、「シグナル」機能を使うと、時系列のデータから自動的にパターンを見出して、統計的に異常な値をグラフ化して通知してくれる。また、「インサイト」機能を使うと、欧州と日本の売上の差の要因などを自動で分析してくれる。
Yellowfinなら、ダッシュボードの開発も容易だ。コードを書くことなくビジュアル開発できるが、開発者向けにはコードを記述するモードも用意している。HTML/CSS/JavaScriptを使って、思い通りのダッシュボードを作ることができるのだ。
その他に、組み込みを想定したYellowfinの特長として「デザインを自由に設定できること」がある。Yellowfinのロゴを表示することなく、組み込み先のアプリケーションの一機能として溶け込ませることが可能になるのだ。PC向けだけでなく、iOS/Androidのモバイルアプリについても同様にデザインの自由度は高い。
林氏は、実際にお酒の販売管理アプリケーションにYellowfinを組み込んだデモンストレーションも見せた。アプリケーション内にYellowfinのグラフをシームレスに、あたかも最初からグラフ機能を持っているかのように統合し、組み込んだダッシュボード画面上で、販売店別や酒の種類別の売上なども参照できる。結果を価格帯で絞り込んだり、7月の売上だけを見てみたりといったドリルスルー操作も可能だ。過去の発注データを参照しながら、実際の発注作業を行うようなことも可能にしている。
Yellowfinは、Webベースで単一アプリケーションとして動作しつつ、マルチテナント型でサービスを運用できる。1つのレポートをテナントごとに見せ分ける運用も可能で、3000テナントを提供しているユーザーもいるという。
林氏は最後に、「ビジネスの成功のためには、これまで何も分析やビジュアライズの機能を提供してこなかった企業であっても、まずはベーシックな、データを抽出してCSVやPDFの形でダウンロードできるようにするようなところから始めて、さらにその先のステップとして、基本的なレポート機能やダッシュボード機能を追加し、いずれは、作業の流れを途切れさせず、あたかも一体化したシステムであるかのように使えるBIソフトの組み込みも検討していただけたら」と語り、セッションを終えた。
●お問い合わせ先
Yellowfin Japan株式会社
所在地:東京都中央区日本橋小網町11番8号
URL:https://yellowfin.co.jp
Email:sales.jp@yellowfin.bi
Tel 03-6667-0282
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