三菱重工業と日本IBMは2021年5月6日、二酸化炭素(CO2)の流通を可視化するデジタルプラットフォーム「CO2NNEX(コネックス)」の構築に向けて協力すると発表した。現状では貯留や転換利用に限られているCO2の用途を拡大し、カーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現に貢献していくとしている。三菱重工はフィジカル世界(実社会)におけるインフラ構築、日本IBMはサイバー世界のデジタルネットワークを担う。
三菱重工業と日本IBMが、カーボンニュートラル(脱炭素社会)を見据えたプロジェクトとして、デジタルプラットフォーム「CO2NNEX」の構築に向けて協力する(図1)。二酸化炭素(CO2)の流通を可視化・整流化することによって、現状では貯留や転換利用に限られているCO2の用途拡大に寄与する。
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「世界各国が2050年までにカーボンニュートラルを実現すべく取り組む中、CO2を回収して貯留・転換利用するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)への期待が高まっている。現状、回収されたCO2の行き先は廃棄コストを払って貯留するか、または価値資源として取引するかのいずれかである。CO2を資源化する需要を高めるため、現状の課題を顕在化させるとと共に、回収・輸送・貯留・分配・転換利用といったプロセス全体を最適化する仕組みを構築することが重要だ」(両社)
この仕組みを担うのがCO2NNEXであり、サイバー空間上におけるCCUSバリューチェーンの可視化を目指す。「実社会ではこれまで、回収後の総量・移送量・購買量・貯留量などといった別々のフェーズでしかCO2の流通を見ていなかった。CO2NNEXでは、流通の全体をつないで可視化する。証跡を残すことで、投資やコストの観点で検証することも可能になる」(両社)
両社によると、CO2NNEXは、CO2を販売したいエミッターと、CO2を購入したい需要家をマッチングするプラットフォームとして機能する。工業や農業、燃料などの新用途に対する供給を実現し、CO2活用の裾野を広げていくことに寄与する。
CO2NNEXの構築にあたり、三菱重工と日本IBMはそれぞれの強みを生かし、以下の分野を担う。
三菱重工は、フィジカル世界のインフラ構築に関わる。例えば、CO2の排出・回収・圧縮・輸送・貯留・分配・利用など流通の要所に、CO2の物理量や状態を監視してデータを有効利用するスマートメーターを設置する。排気ガスからのCO2回収技術や実績に加えて、顧客とのつながりや知見を生かす。
日本IBMは、サイバー世界のデジタルネットワーク構築に関わり、CO2NNEXのシステム構築を担う。プロジェクトには各業界の知見を持つインダストリーコンサルタントが参画し、デジタル基盤の企画と検証を行う。「IBM Blockchain Platform」やハイブリッドクラウド技術、バリューチェーンを可視化・自動化するAI技術などを活用する。
2021年5月からは、デジタル基盤の実証実験に向けたPoC(概念実証)を行い、具体的に検討を進めていく予定である。