[ザ・プロジェクト]

RPAからプロセスマイニングへ、現場から始める業務改革─中外製薬の2030年を見据えた長期ビジョン

2021年6月9日(水)杉田 悟(IT Leaders編集部)

RPAは、今や多くの企業が何らかの形で導入するメジャーなツールとなっている。DX(デジタルトランスフォーメーション)に直接かかわるものではないものの、生産性向上だけでなく業務の見直しに活用している企業は多い。中外製薬は、業務改革のためにRPA導入プロジェクトを開始、より大きな成果を求めてプロセスマイニングの導入を検討するに至ったという。RPA導入の現状とプロセスマイングを検討するに至った経緯を、デジタル・IT統轄部門 ITソリューション部 部長の小原圭介氏に聞いた。

デジタル基盤の強化で新薬創出も

 IT Leaders では、以前よりプロセスマイニングに注目してきた(関連記事[特集] プロセスマイニングの衝撃)。プロセスマイニングは、基幹システムなどのログデータを基に、業務プロセスを自動的に分析・可視化し、最適化のための洞察を得る手法のことで、国内での導入事例も増え始めている。

 少し付け加えると、2021年2月に独SAPが独Signavio、4月には米IBMが伊myInvenioの買収を発表するなど、大手ITベンダーによる有力プロセスマイニングベンダーの買収が相次いで発表されている。世界的に取り組みが進むDXにおける重要なツールとして、プロセスマイニングにスポットが当たり始めている。

写真1:デジタル・IT統轄部門 ITソリューション部 部長の小原圭介氏

 今回、製薬大手の 中外製薬にRPAについて話を聞いたところ、「次はプロセスマイニングツールを予定している」という言葉にたどりついた。あくまでも予定で、実際に着手しているわけではないが、どのような経緯でRPAがプロセスマイニングにつながったのか紹介したいと思う。

 同社は2020年にDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」(図1)を発表しており、経済産業省の「DX銘柄2020」「DX銘柄2021」にも選ばれている。

図1:中外製薬のDXの全体像(出典:中外製薬)
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 このビジョンでは、「デジタルを活用した革新的な創薬創出」「すべてのバリューチェーン効率化」「デジタル基盤の強化」という3つの基本戦略を掲げている。製薬会社にとっての生命線である新薬創出を最大の目標に、バリューチェーンにおける生産プロセス、営業プロセスを効率化しリソースをR&Dに集中させる、そしてそれを実行するためのデジタル基盤を強化する、というものだ。

従業員ひとりひとりがデジタル体験を

 デジタル基盤については、単にITインフラを強化するだけでなく、全社一丸でDXに取り組むための、企業風土の変革や従業員の意識改革が含まれているという。これを同社ではDXの「社内ごと」化と呼び、すべての従業員がDXを意識するようになることを目指している。

 RPAは、その一翼を担っている。というのも、RPAは従業員が自分たちの業務に適用することで便利さを実感できる。一種のデジタル体験だ。「従業員ひとりひとりがRPAに取り組むことで、ITリテラシーの向上や業務改革を意識するきっかけになることを期待している」と小原氏はいう。

 中外製薬がRPAの導入を開始したのは2018年だった。推進にあたっては、CFO直下の全社プロジェクトに位置付け、RPAを「Reconsider Productive Approach=生産的アプローチの再考」という言葉に置き換えた。ロボットの導入を目的とせず、業務自身を見直すことを目的にしようという考え方だ。

 このときはまだ「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」は策定されていなかったが、単に現場の生産性向上を目指すのではなく、業務プロセス改革が意識としてあったことがうかがい知れる。

●Next:RPAを適用する業務の条件とは?

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