熾烈な市場競争を勝ち抜く基本は、限りある経営リソースにメリハリをつけて最大限に活用することだ。基盤となるシステムの運用管理に翻弄されないことはもちろんのこと、全体最適の観点で業務プロセスを磨き上げることや、データを巧みに活かして先手を打っていく姿勢が欠かせない。そんな理想を実現するものとして注目を集めているのがWorkdayだ。その具体像とは──。
DXの進展を背景に企業間競争は激しさを増す一方だ。同業他社とのせめぎ合いはもちろんのこと、デジタルを武器にした異業種からの参入も相次ぐ。そこでの生き残りに向けて何よりも大切なのが、柔軟かつ機敏な「変化対応力」だ。しかし、多くの企業が思うように具現化できておらず、その理由の筆頭に挙がるのが「2025年の崖」としても広く知られるようになったオンプレミスに構築したレガシーシステムの存在である。その代表格が統合基幹業務システム(ERPシステム)だ。
多くの説明は不要だろう。ERPは80年代の登場以来、業務の統合管理を目的に多機能化を続け、その中にあって国内では、数々の企業が財務会計だけ、販売管理だけといったように部分的なポイントソリューションとしてERPを採用し、さらにはカスタマイズによる最適化を進めてきた。「この“あり方”が、もはや時代にそぐいません」と指摘するのは、ワークデイの八重樫謙輔氏(プリンシパル ソリューション コンサルタント)だ。競争激化への対応として企業では組織変更やビジネスの統廃合などを頻繁に行うことになるが、構成が極めて複雑化した業務システムがそれに追随しきれない。コロナ禍を機に一気に加速した、場所を問わない新たな働き方を推進する上でもネックになっている。
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耳目を集めるクラウドプラットフォームの “リーダー”
これからの企業活動の礎ともいえるデータがシステムごとに分断されていることも大きな問題だ。参照したいデータがすぐには手元に揃わない。IT部門が、求めに応じてデータを集約したり加工したりといったことを繰り返すケースもあるが、それでは迅速な意思決定ができるはずもない。変化の予兆を感じ取り、最適な意思決定をその場で下せる企業にこそ競争力が宿る時代であることを、今一度念頭に置く必要がある。
企業を取り巻くデータは種類も量も指数関数的に増えているのは周知の通り。オンプレミスでの管理にこだわると、セキュリティやガバナンスの徹底に相応の手間や時間を取られることとなる。IT部門のリソースは限られており、“守り”ばかりに割いてしまうと、“攻め”が後手に回ってしまうのも悩ましい問題だ。
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こうした課題にどう対峙していけばいいのか。解決の方向性として昨今、熱い視線を送られるようになったのがSaaSとして提供される財務・人事・プランニングが統合されたソリューションの活用だ。ビジネスの俊敏性実現や、それを支えるためのデータ利活用などが、設計段階から最優先で組み込まれているのが最大の特長だ。短期間で導入できるのはもちろんのこと、運用管理の手間やコストも大幅に抑えられる。APIによる外部連携で高い拡張性が約束されるのも魅力だ。
オンプレミスに軸足を置いてきた大手も続々とクラウド対応を打ち出しているが、そうした中で、IT調査会社のガートナーが市場のリーダーと位置付け、ユーザーも急拡大させているのがWorkdayだ。「創業当初からクラウドのみのサービス提供に特化しているため、過去のレガシーERPをクラウドに載せ替えるだけのソリューションとは一線を画しています」と八重樫氏。
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目先の対応では“改修の連鎖”から逃れられない!
その特徴であり強みが、次の4点である。1つ目は、基本性能の高さだ。先の「当初からクラウドのみのサービス提供に特化している」というのは、特にクラウドの黎明期に不安視されがちだったレスポンスやセキュリティに真っ向から挑んできたという意味でもあり、独自の技術力で解決し磨きをかけてきた。「オブジェクトデータモデルの採用をはじめ、セキュリティに関する仕組みや監査への対応など従来のアーキテクチャーでは実装が現実的でなかったことを可能としてきました。さらに応答速度については『データセンターに届いてから1秒以内のレスポンスを返すトランザクションが50%以上』というSLAを提供し、2021年1〜10月の実績としては95%以上を誇っています」。
2つ目が、例えば現場で入力された購買リクエストから発注、受領、支払い、さらに部門別損益計算書などへの反映までの、一連のプロセスの効率化/自動化を支援する機能群だ。すべては計画、実行、分析のサイクルを一つの基盤で回せるようすることを念頭に実装されており、次のアクションへとスムーズにつながっていく。プロセスの要素のみならず、それを動かす「人」に重きを置いていることも他との大きな違いとなっている。
3つ目が、サイロ化しないよう全体最適の観点で一貫したデータ管理を実現した点だ。すべてのアプリケーションがアクセスする核としてデータモデルが定義されている。データが意味することや形式がアプリケーションによって揺れることはない。それが故に、データを探し出す過程において、余計な加工や変換などの処理は不要であり、これが「必要な時に必要なデータが手に入る」ことを可能にしている。
4つ目が、ビジネス要件への高い順応性だ。これも独自のアーキテクチャーに支えられているが、管理の仕方やプロセスに容易に手を加えられるなど、高い柔軟性と俊敏性が確保されている。八重樫氏は、「目先の問題回避のためのシステム改修では、結局は見直しを繰り返すことにより個別最適化の問題から逃れにくいのが現実です。対してWorkdayであれば、全体最適を実現した構造により、抜本的な改革が可能で、変化対応も加速させられます」と力を込める。
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クリック操作だけで関連データを深掘りしつつ探索
現場のユーザーがスムーズに利用できるWorkdayの使い勝手の良さが、これらの強みを下支えする。トップページには、「処理が必要な依頼」「会社からの通知」など、作業を行うために必要な情報を集約。過去の操作履歴の機械学習を通じて、利用頻度が高いアプリなども表示する。そこからクリック1つで、必要な機能やレポートを呼び出すことができる。つまりユーザー一人ひとりに最適化された画面が提供されるわけだ。
そのうえで、全体最適によるデータ管理のメリットを感じられるのが、各アプリの呼び出し後、関連データのリンクをたどる感覚で深掘りしつつ探索するシーンだ。例えば、経費レポートの承認画面では、寄せられた経費申請から申請者の過去の申請内容や違反率などを、また、損益計算書の確認画面では経費について、どのエリアの、どの部門で、どんなカテゴリとして計上されているかなどを、所属する組織の人材データも含めて確認できる。「業務の計画や実行など、様々な分析も直感的に行え、例えば特定の業務について、拠点別の人員配置や人件費把握を通じて、組織の最適化につなげられます」と八重樫氏は説明する。
変化対応のためのシステムの手直しも容易だ。例えば、マネージャー向けの事業別の業績確認画面は組織変更もリアルタイムで反映され、そこに所属する人材の配置を分析することで、新たなビジネス機会を探ることができる。つまり、Workdayは分析による変化の迅速な察知とともに、既存の管理法の柔軟な見直しを可能とする基盤としての機能も併せ持つ。大きな変化対応のための、Workdayの開発環境を使った機能追加にも可能となっている。
ユーザーはすでにグローバルで9500組織、5500万人
しかも、Workdayはいまだ進化の途上にある。中でもワークデイが現在、注力しているのが各種分析でのAI活用だ。すでに、「採用」「組織」「タレントパフォーマンス」「ダイバーシティ」「退職」の5領域において、地域別や事業別など自動的にグルーピングを行い、全社平均と乖離が大きなものや時系列で変動の大きいものについてビジネスリーダーに潜在的な課題として文章で指摘するピープルアナリティクスや、経費管理での異常値検出機能を実装。自社のポジションの把握支援に向け、業種や企業規模、国などの切り口から、自社のダイバーシティや離職、報酬などの水準を、他のWorkdayユーザーと比較するベンチマークサービスの提供もすでに開始している。「操作性だけでなく機能についても、あらゆる面で拡張を続けています。事業統合などの増加を踏まえて、外部連携による会計データの取り込み時にも機械学習で自動仕訳をする機能なども用意しています」(八重樫氏)。
こうした総合力が高く評価され、Workdayのユーザーはグローバルで9500組織を数える。国内でも日立製作所やソニー、日産自動車をはじめとする大企業を中心に、多くの企業がユーザーに名を連ねる。「スモールスタートこそがクラウドの価値と謳う声も多いようです。しかし、エンタープライズアプリケーションのように企業活動全体を支援するものに関して言えば、貴重な資産であるデータの価値を最大化するにも、ある程度広範囲に導入した方が効果を享受しやすいと言えるでしょう。Workdayでは、グローバル企業における現地法人の可視化など、利用の開始直後から多様な全社データの活用に乗り出せます。世界の市場で熾烈な競争を繰り広げており、危機意識の高い企業ほどWorkdayは好評です」とは八重樫氏の弁だ。
激しい変化の中でデータが行くべき道を指し示す
ワークデイでは今後、人材や財務データを中核に、計画、実行、分析のサイクルをより短期に回す基盤としてもWorkdayを進化させていくという。その一環として、従業員のスキルデータを基に、社内公募中の職務についてレコメンドや、キャリアプランニングなどを行う「キャリア・ハブ」機能を2022年3月に追加し、自律的なキャリア開発を支援する計画だ。
併せて、従業員のエンゲージメントを高め、優秀な人材を引きとめておくために、従業員の声を匿名のフィードバックで集め、マネージャーに行動の指針をレコメンドする機能も提供している。従業員のライフサイクルを業務プロセスだけでなく、意識面にも踏み込んでサポートをし、経営戦略を人材マネジメントの面からバックアップできる体制が整っている。
技術革新や国際情勢、自然環境…様々なことが重層的に影響して、先々を読むのが益々難しい世の中を迎えようとしている。そうした中で企業が臨機応変に立ち回るには、データからちょっとした変化の予兆を掴み取って、よりよい意思決定を速やかに下していくことが欠かせない。その基盤となるのが正しくWorkdayであり、難しい局面での持続的成長をがっちりと支援してくれる。
●お問い合わせ先
ワークデイ株式会社
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