[インタビュー]
DXの源泉─ニューノーマルで求められる人事・人材管理のトランスフォーメーション
2022年3月3日(木)河原 潤(IT Leaders編集部)
当初はいずれ終息すると思われたコロナ禍が長期化。多数の企業で経営ないしは事業の継続が危ぶまれたり、ニューノーマル=価値転換でビジネス戦略の変更を余儀なくされたりと、ビジネスの不確実性は高まる一方である。そんな環境下で、企業経営の源泉とも言うべき人事・人材管理の分野には、この先何が求められるのだろうか。人事・人材管理クラウドサービスで知られる米ワークデイ(Workday)の日本法人社長、正井拓己氏に、同社の戦略・アプローチを含めて聞いた。
人事・人材管理と財務管理の統合がなぜ必要か
──ワークデイは創業から今年で17年、日本法人は9年。競争の激しい分野・市場で成長を続けてきています。これまでを振り返って、ビジネス上のブレークスルーはどのあたりになりますか。
欧米企業で先行したデジタルトランスフォーメーション(DX)のトレンドの中で、ワークデイ自身も大きな成長を遂げることができました。日本市場にフォーカスしてお話しすると、2013年の設立時点で、人事・人材管理市場にはすでに国内外のベンダーが揃っていました。そんな中で、ワークデイ日本法人の立ち上がりを支えてくれたのは、各国に拠点を展開してグローバリゼーションが進んだ企業です。そうした先行ユーザーが成果を上げているのを見て関心を持たれた他の企業が検討し、「Workday HCM」の導入を決めてくださる。こうして広がっていきました。
──人事・人材管理は、単にシステムを導入するという話ではなく、企業の文化や業務プロセスの変革を促すような製品分野ですが、国内のユーザーにはそのあたりも正しく伝わっていったのでしょうか。
はい。システム部分だけではなく、人事制度や人材育成、社内のプロセスも含めてトータルで変革に取り組むような企業にWorkdayを選んでいただいています。近年、国内でもDXのトレンドが来たことで、そのプラットフォームとして検討してもらえています。
──財務管理クラウドサービスの「Workday Financial Management」の国内提供が2021年9月に始まりました。欧米では10年以上の歴史を持つ製品ですが、日本市場での投入にかなりの期間を要しています。
Workday HCMとWorkday Planningに、Workday Financial Managementが加わり、日本でも3つのソリューションが揃いました。いずれも、当社が掲げる「エンタープライズマネジメントクラウド」のビジョンに欠かせないソリューションとなります。
Financial Managementについては、以前から日本の商慣習、消費税や源泉徴収など税制への対応を機能として実装することに取り組んできました。さまざまな顧客、パートナーと対話しながら、国内の企業にも安心して使っていただける財務管理ソリューションを追求しました。
特徴は、やはりHCMとの緊密な連携・統合で、他の財務管理ソリューションでは実現できていないことです(図1)。両者の一体化は、そもそもピープルソフト(PeopleSoft)の技術とノウハウを持ってワークデイが設立されたときから一貫しているコンセプトです。
ワークデイは、「人事本部長とCHROは役割が異なります。人事のオペレーションではなく、HR(Human Capital)を強くするのがCHROのミッションです」と、ずっと言い続けてきました。財務管理分野でも同じで、財務・経理部長とCFOは異なります。その考え方に基づいて、HCMをCHROの、Financial ManagementをCFOのビジョンをそれぞれ実現するためのツールとして提供しています。
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これまで人事・人材管理と財務管理は切り離された、個別の仕組みとして考えられていました。でも、そうした考え方では今後立ち行かないと認識する企業が、日本でもこの数年で急速に増えています。ですので、Financial Managementは、市場の機が熟したタイミングで、満を持してのリリースになったと思います。
──既存の国内HCMユーザーはFinancial Managementにどんな感触を持ったのでしょう。
HCMのすべての顧客と細かなレベルでのディスカッションができているわけではありませんが、ポジティブな反響をいただいております。多くのお客様が「財務管理・会計システムのこれから」を熱心に検討されているところです。欧米の先進企業が人事・人材管理と財務管理を連携させて、経営環境の変化に高いアジリティをもってタイムリーに対応できているという事実に関心を寄せられています。
──ローカライズに相当な労力と時間をかけたとはいえ、Financial Managementは、設計思想的に、欧米の商習慣が根底にあると思います。日本のユーザーとしては、欧米由来のところに寄せて使うかたちでしょうか。
Financial Managementの主要の機能に関して、十分に日本化されていると考えています。とはいえ、在庫管理や購買などいくつかの面で、欧米と日本で考え方や習慣が異なっているのはそのとおりです。「総じて気に入ったが、この部分だけは日本のやり方に合っていないと導入が難しいね」といった声もいただいていますので、フィードバックして、より使いやすい製品にしていきます(画面1)。
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「この機能はこう変えていくべき」と言ってくださるお客様とはぜひタッグを組んで、日本発で機能をエンハンスして、やがてグローバルの顧客にも使っていただく。そんな協働をさせていただけると嬉しいですね。
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