三菱重工業とNTTは2022年4月25日、NTTの光イジングマシン「LASOLV」を活用し、熟練者に頼っていたプロジェクト人員計画を自動化する共同実証を実施したと発表した。実証の結果、人員計画の作成に要する工数を大幅に削減できる可能性を確認している。
三菱重工とNTTは、NTTの光イジングマシン「LASOLV」(写真1)を活用し、熟練者に頼っていたプロジェクト人員計画を自動化する共同実証を実施した。実証の結果、人員計画の作成に要する工数を大幅に削減できる可能性を確認している。
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三菱重工で、実業務の工事日程、要求スキルと人数、派遣候補となる作業員の情報、現地サイト間の移動時間、などのデータを準備した。これらのデータに対し、制約条件を満足する人員計画を探索するイジングモデルをNTTが構築した。イジングモデルは5万ビット規模である。
実証では、点検対象プラント数26カ所、工事数29件、作業員141人、日数64日間の期間で、保有スキルや連続勤務日数、勤務時間上限、プラント間移動日数、休暇予定といった主要な制約条件を満たす人員計画の解候補を、光イジングマシンのLASOLVを使って導出した。
この結果、従来は人手で1カ月程度かけて作成していた人員計画を、非常に短い時間で得られることを確認したという。今回の成果は、人員以外のリソース計画立案にも適用可能としている。今後は、実用化を目指し、システム化など実業務への適用検証を進める。さらに、カーボンニュートラルやエナジートランジションに向けた、重要な事業課題の解決に関する取り組みを進めていく。
なお、光イジングマシンのLASOLVは、NTTが研究開発に取り組む、新しい原理に基づいた計算システムである。相互に結合した多数の光パラメトリック発振器(OPO)パルスが、全体として最も安定となる位相の組み合わせで発振することを利用し、組み合わせ最適化問題の解を導出する。LASOLVは常温で動作し、光の性質を利用して解を高速に得られることから、これまで困難だった課題を解決できることが期待されている。
「プラント点検工事には熟練者によるリソース計画が必要になっている。プラント点検工事とは、国内外に納入した発電プラントなどの構成機器の健全性を確認し、必要な部品交換や補修を定期的に行う工事であり、さまざまな検査や補修スキルをもった作業員を複数の現地に派遣する必要がある。このため、人員計画では、現地間の移動や要求されるスキルと人数、連続勤務日数や残業時間などの制約条件を満足させることが求められる」(両社)。
NTTと三菱重工は、2014年に研究開発連携に関する基本契約を締結し、NTTの研究所が持つ研究開発成果を三菱重工のエネルギー・環境、交通・輸送などの社会インフラ関連製品や国内外の工場・建設現場などに適用する取り組みを開始した。この取り組みの1つとして2018年3月に、光イジングマシンLASOLVの実用化に向けた共同プロジェクトを開始した。