ヘルステック──医療分野でのテクノロジー活用の歴史は長いが、近年は特にAIや種々のデータの高度な活用が、医療のレベルを数段引き上げている。多数の企業がヘルステックに取り組む中で、老舗にして主要プレーヤーの1社が米マイクロソフトである。日本マイクロソフトは2022年10月21日、説明会を開いて、ヘルスケア分野における同社の最新の取り組みを紹介。先端的なITを駆使したプレシジョン医療などをについて説明した。
AIやデータ活用が医療を変える
日本マイクロソフトによると、同社がグローバルでヘルスケア(医療・製薬)分野の課題解決に取り組む企業・組織への支援を始めてから35年以上が経過したという。
近年の同社の取り組みの1つに、AIを用いたディスカバリ/デリバリなどによるプレシジョン医療(Precision Medicine:精密医療)がある。プライバシー、セキュリティ、組織をクラウド上で管理したうえで、データ中心型のアプローチでAIを活用して、より精密な医療を支援するものだ。
米マイクロソフト Head of Strategy Pharma & Life Sciences GM WW Healthcareのエレナ・ボンフィグリオーリ(Elena Bonfiglioli)氏(写真1)は、「多種多様なデータが医療分野に変化をもたらしているが、(医療機関や従事者は)いわばデータの洪水の中にあるのが今である。適切なデータ管理こそが命を救う」と語った(図1)。
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一方で、プレシジョン医療の前提となる膨大なデータの管理・活用にあたっては次のような課題があるという。
●共有コンピューティングへの需要が高まり、オンプレミスセンターにおける待ち時間が長時間化
●技術やセキュリティのアップデートに多大なコスト・時間がかかり、最新のツールへのアクセスが遅延
●データタイプが多岐にわたり、格納場所も分散しているため、接続や統合が困難
●技術的サポートの欠如により、既存ワークロードのクラウド移行が困難
これらの課題を解決するための、セキュアなクラウドプラットフォームを構築し、データを処理・管理することが可能になれば、医療とITの組み合わせによって、画期的な治療・新薬の可能性は広がっていく、というのがマイクロソフトの考えだ。ボンフィグリオーリ氏によると、「新しいパートナーシップやコラボレーションが、医薬、ライフサイエンス、臨床研究、プロバイダーなどの組織で生まれていくことに期待したい。これらは医療に大きなメリットをもたらす」と強調した。
その実践として、マイクロソフトは医療機関などとパートナーシップを結んでプレシジョン医療に取り組んでいる(図2)。一例が、米国立衛生研究所(NIH)と進めているデータコラボレーションのグローバル化だ。そこでマイクロソフトは、大規模な開発に求めアッレルクラウドリソースを提供している。取り組みでは、適切なガバナンス/セキュリティの下、ルールベースのアクセスの確立が重要だという。
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●Next:医療機関とのパートナーシップ、医療医薬分野の国内顧客の動向
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