[ザ・プロジェクト]

「現場の声を反映したAIモデル開発を自らの手で!」ユナイテッドアローズが取り組むEC/物流の業務改革

2023年2月15日(水)齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)

アパレルのセレクトショップを展開するユナイテッドアローズ(本社:東京都渋谷区)は、EC展開や店舗運営などにIT技術を積極的に導入してきた。同社は事業戦略の一環として2017年頃からAIの活用にも取り組んでいる。試行錯誤を経て、現在は現場の声を反映させた、AIモデルの内製開発を進めている。同社 ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部の中井秀氏、福地あゆみ氏に導入の経緯や課題を聞いた。

 「ユナイテッドアローズ」「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」などのアパレルのセレクトショップを展開するユナイテッドアローズ(写真1)。国内外から調達したデザイナーズブランドや自社オリジナルの商品を合わせて販売している。

 創業は1989年10月、1990年7月に1号店をオープンして以来、20~40代を中心とした最新のファッションに敏感な顧客の支持を得て成長、現在の実店舗数は216店、従業員は3826人に上る(2022年3月末時点)。2023年3月期は「感動提供」を経営スローガンに掲げ、基本戦略「ES」「DX」「サステナ」の推進の下、販売力と商品力のさらなる向上を目指している。

写真1:ユナイテッドアローズが展開するブランド。上から「ユナイテッドアローズ」「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」(出典:ユナイテッドアローズ)
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業務特化AIが「アボカドカッター化」、予算と人材確保が大きな課題に

 そんな同社が現在、事業戦略の一環として取り組むのがAIの活用である。ビジネスへのAI活用にはさまざまな課題が存在するが、多くの企業が最も悩むのが予算と人材の確保だろう。さまざまなITベンダーがAI活用を支援するツールを提供するようになって、技術面においてはAIの取り組みをスタートさせやすくなってはいる。しかし、ツールが揃っていても、先立つ予算やノウハウを持つ人材が確保できなければ宝の持ち腐れになりやすい。

 仮に予算を確保できても、取り組みをベンダーに丸投げに近い状態でまかせてしまうケースも散見する。それだと、試行錯誤のたびにコストがかさみ、知見やノウハウが内部に蓄積されない。加えて、現場のニーズが十分に反映されず、現場で使われないAIシステムが作り上げられてしまうこともある。

写真2:ユナイテッドアローズ ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部 シニアマネジャーの中井秀氏

 ユナイテッドアローズはこれまで、ECの展開やRFIDの導入、無人レジのトライアルなど、業務でのIT活用に積極的に取り組んできたが、AI活用において多くの失敗を重ねてきたという。同社 ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部 シニアマネジャーの中井秀氏(写真2)は次のように振り返る。

 「AI活用でプラスの価値を生み出さなければ、この先、生き残っていくことが難しいという共通認識が社内にありました。そこで2017年頃からいくつかAIプロジェクトに取り組んできたのですが、ほとんどうまくいきませんでした」

 どんなことにつまずいたのだろうか。続けて中井氏はそれらのプロジェクトが失敗した理由を2つ挙げる。

 1つは、特化型AIを採用したことだ。業務の特定部分を改善するもので、それぞれで一定の成果は出たが、「言ってみれば、“アボカドを切るための専用カッター”のようなもので、複数のプロジェクトが立ち上がると、その都度専用カッターが必要になりますよね。結果としてリソースが分散してしまい、成果をうまく出せなかったのです」(中井氏)。

 もう1つは、従来型のシステム開発手法を採用したことだ。プロジェクトごとにアウトソースするベンダーを選定してゼロからスタートするため、業務調査などにも時間を要した。PoCまで進まないケースも多くあったという。「9割以上が失敗するといわれるAIプロジェクトの中で、今までのようにアウトソースでシステム開発をする仕組みでは、お金だけが出ていくことに気づきました」(中井氏)

 そうした経験と教訓から同社が採用したのが、AIモデルの開発を内製化し、現場の声を聞きながらAIモデルをアジャイル型で改善していくというアプローチだった。

●Next:ECサイト不正検知、倉庫の出荷予測をDataRobotで実現

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