ビジネスとデジタルは今や切り離せるものではない。セキュリティインシデントやサービスのレスポンス低下などは、直ちに多大なインパクトをもたらす。だからこそ、何か起こった時に速やかに健全なビジネスの状態に回復する「レジリエンス」が極めて重要だ。そのためのソリューションを手掛けるSplunkのキーパーソンに話を伺った。
「自動車の24時間耐久レースを勝ち抜くにはどうしたらよいでしょうか。どこよりも速いクルマの開発? 優秀なドライバーの獲得? いえいえ、それ以上に重要なのは刻々と変わる状況をチーム全体で即時に把握して、最適な策を打ち続けることなのです。経営とデジタルの仕組みが渾然一体となった現在の企業も同じこと。各種システムを取り巻く状況を監視し、いざという時にすぐにアクションを起こせるか否かが勝負所なのです」──。こう話すのは、Splunk Services Japanの前園曙宏氏だ。
確かに自動車の24時間レースは今や情報戦だ。気象条件、路面状況、ラップタイム、さらには車両に搭載されたセンサーから送られてくるテレメトリーなど、入手し得る様々なデータを集約して分析し、次なる手の最適解を導き出す。決して予定調和では進まない。他車との接触でボディの一部が損傷を受け空力性能が劣化するといった突発的アクシデントはつきものだ。その時に、ピットインのタイミングやパーツ交換などに関して、臨機応変に適切な判断を下せるチームが結局はチェッカーフラッグを受けることになる。
企業の事業展開においてデジタルの仕組みへの依存度はますます高まっており、そのデジタルの仕組みは複雑さをどんどんと増している。それゆえ、想定しないトラブル発生の可能性は常にあり、その際の経営へのインパクトは多大だ。ネット上の顧客向けサービスの体感レスポンスが悪くなる、従業員向けのリモートワークの仕組みがダウンする、サイバー攻撃を受けてマルウェアが紛れ込み、セキュリティ上のインシデントが発生する…。ビジネスチャンスを失うばかりか、社の信頼をも揺るがすことになりかねない。
日々、巧妙化・高度化するサイバー攻撃はもちろん、システムの障害を100%阻止することは不可能だ。つまり、何らかの原因で想定したパフォーマンスが発揮できないことが希に起こることを前提としなければならない。「将来を正確に予測することが難しい現在、企業に最も必要な能力が“レジリエンス”です。業績に影響を及ぼす何かの予兆をいち早く察知して善後策を打ったり、マルウェアに侵入された際にできるだけ速やかに平常時に近い状況に回復させたりする実戦的なスキルとノウハウとも言い変えられるでしょう。顧客や取引先などステークホルダーへの影響を考慮しながら、迅速にかつ最適な手を打てる能力を備えておくことが競争優位に立つ源泉となるのです」と前園氏は強調する。
勘と経験から脱却しエビデンスベースの判断を
では、どのように企業はレジリエンスを磨いていけるのだろうか。ベースとなるのは、データに基づいた正確な実情把握だ。「誰もが想定し得ない不確実性が連続して起こり得るデジタル社会では“勘と経験” に頼ってはいけません。データによる事実、証拠、根拠の確認などエビデンスベースでリスクを判断できる仕組みを整えることが最初の一歩です」(前園氏)。
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