医薬品・化粧品・日用品の卸売業を営むメディパルホールディングス(本社:東京都中央区)は2023年3月14日、物流センター倉庫のピッキング作業をAIで効率化したと発表した。事業会社のメディセオが利用する物流センター「神奈川ALC」で2023年3月にAIの実運用を開始した。同センターで2020年11月から行ってきた検証で、ピッキング作業者の総移動距離を最大22.6%削減した。同センターへの導入を皮切りに、同様のピッキングシステムを採用する8カ所の物流センターに順次展開する。
医薬品・化粧品・日用品の卸売業を営むメディパルホールディングス(以下、メディパル)は、物流センター倉庫のピッキング作業をAIで効率化した。事業会社のメディセオが利用する物流センター「神奈川ALC」(横浜市戸塚区)で、2023年3月にAIの実運用を開始した。本稼働前の実証実験では、ピッキング作業者の総移動距離を最大22.6%削減するなど、AIの有効性を確認済みである(写真1)。
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神奈川ALCは、ピースピッキングシステム(注文に対して出荷最小単位で在庫から集めるシステム)を採用している。今回の同センターへのAIシステムの導入を皮切りに、同センターと同様にピースピッキングシステムを採用する8カ所の物流センターにも順次展開する。
導入したAIシステムは、2つのAIアルゴリズムを実装する。1つは、マルチオーダーの組み合わせを最適化するアルゴリズム。同一商品をまとめてピッキング可能とし、作業者がピッキングの際に立ち寄る場所や回数を最小限にする。もう1つは、作業順序を最適化するアルゴリズム。ピッキング作業順序を制御することで、物流センター内の集中(渋滞)を回避する(図1)。
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2020年11月から実施してきた実証実験では、3000行のデータと28人の作業者を対象に、(1)現行システムによる作業と、(2)AIが出力したピッキングデータを利用した作業の2つを実施し、効率を比べた。移動距離の実測値を比べた結果、AIを使うことで移動距離が最大で22.6%減った。神奈川ALCは、管轄エリアの医療機関に対し、1日あたり平均で約7万行の出庫作業を行っている。ピッキングの生産性が向上することで作業時間が短くなる。
AIシステムには、富士通のクラウドサービス「Picking Optimizer」を採用した。「物流センターの出荷作業において、一人のピッキング作業者が同時に複数の出荷先への商品をピッキングするマルチオーダーピッキング作業を最適化し、センター内ピッキング作業効率を向上させる」(富士通)としている。
なお、メディパルはこれまでも、庫内作業の省人化などを目的に、物流機能の自動化を推進してきた。2009年に神奈川ALCにおいて、得意先オーダー別ピッキング(得意先別の梱包)を始め、その後、各地域に展開済み。2023年中には「阪神ALC」(兵庫県西宮市)が稼働を始め、欠品や間違いのない物流網を全国に広げる計画である(関連記事:メディパル、物流センター「阪神ALC」に数理最適化AIを用いたピッキングシステムを導入)。