東京都練馬区は2023年3月27日、住民税と国民健康保険税の滞納整理にAIシステムを活用する2つの実証実験を開始すると発表した。調査先の候補をAIが提示するシステムと、職員の習熟度に応じて滞納案件をAIが振り分けるシステムである。富士通Japanと共同で実施する。練馬区は、実証結果を基に、住民税/国民健康保険料の収納率と徴収額を向上させ、4億円以上の徴収効果を目指す。
練馬区は、住民税と国民健康保険税の滞納整理にAIシステムを活用する2つの実証実験を開始する。(1)調査先の候補をAIが提示するシステムと、(2)職員の習熟度に応じて滞納案件をAIが振り分けるシステムである。
実験のスケジュールとして、2023年3月27日から同年6月末にかけて効果を測定し、同年7月から同年9月末にかけて検証/考察を実施する。実証実験の結果を踏まえ、住民税/国民健康保険料の収納率と徴収額を向上させ、4億円以上の徴収効果を目指す。
(1)調査先の候補をAIが提示するシステムを開発する。滞納者の所得や税務情報、過去の調査履歴などのデータと、ベテラン職員の財産調査の進め方をAIに繰り返し学習させることによって、調査先とすべき銀行や保険会社などの候補を提示する。
システム開発によって、調査先の選定時間を短縮できるようになる。経験が浅い職員でもベテラン職員と同等の成果が得られることを目指す。従来、調査先を決めるための時間として、滞納案件1件あたり平均約30分かかっていたという。これを約5分に短縮することを目指す。
「滞納整理では、滞納者の所得や資産などの有無を見極めるため、地方税法に基づいて複数の財産調査を行っている。滞納者の過去の調査履歴など多岐にわたる情報を整理して調査先を的確に絞るにはベテラン職員のノウハウが不可欠だが、職員は3年から4年で人事異動することが多く、人材不足が課題だった」(練馬区、富士通Japan)
(2)職員の習熟度に応じて滞納案件を振り分けるシステムも開発する。それぞれの職員が自身の習熟度に適した案件を担当することで、収納業務全体の効率化と底上げにつながるかを検証する。
「難しい案件ほど調査時間や作業工数がかかる。開発するシステムでは、過去の財産調査の作業記録を基に、調査時間や作業工数の相関関係をAIに学習させる。案件の難易度と職員の習熟度を推定し、案件の割り当て候補を提示する」(練馬区、富士通Japan)