セブン銀行がAI、データ活用の全社拡大を進めている。2023年3月9日、JDMC主催の「データマネジメント2023」に同社 コーポレート・トランスフォーメーション部 AI・データ推進グループ グループ長 中村義幸氏が登壇。同行が取り組んでAI、データ活用の成果を紹介し、今後全社拡大を進めていくにあたっての重点施策を説明した。
業務部門でAI活用を浸透させたトライ&エラー
セブン銀行と言えば、コンビニや駅構内でよく見かけるおなじみのATMのイメージも強いが、現在では全国2万6000台以上も設置されているという。そんな同行が注力しているのがAIやデータ活用の全社への拡大だ(図1)。
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セブン銀行 コーポレート・トランスフォーメーション部 AI・データ推進グループ グループ長 中村義幸氏(写真1)は、AIへの取り組みを次のように説明した。
「業務部門は現業で忙しく、AIをどう活用してよいかわからない。そこで、AIデータ部門のメンバーが業務部門に入って、業務の現状の可視化、AIで解決できる課題の発掘、収益貢献、データサイエンティスト育成の観点など、解決すべき課題に優先順位をつけていった」。
図2は、発掘した取り組みやテーマの一例だ、これらを並行して進めていった(図2)。「取り組んだものの、よい結果につながらない。そんなケースも少なくない。不確実性は高いが、自問自答しながらトライ&エラーでやるしかなかった」(中村氏)
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初めはトライ&エラーでも、継続によって成果が生まれやすくなる。中村氏は、主な取り組みとして以下の3つを紹介した。
●ATM現金管理の高度化:ATMの出入金に合わせ、全国の各拠点から現金を補充・回収していた。近年は電子マネー化の動きから、現金の増減も以前とは変化している。そこで、各ATMの日次入出金をAIで予測し、効率化を図っている。
●コールセンター問い合わせ内容の自動整理:コールセンターの顧客対応スタッフは電話応対に注力すべく、応対後の記録は比較的簡素にしている。結果、顧客満足度が上がったものの、対応を分析するための情報が少なく、問い合わせの傾向がつかみにくかった。そこで、問い合わせの音声をテキスト化したデータを自然言語処理にかけ、問い合わせ内容の分類を行っている。
●インドネシアにおけるATMの設置判断:以前はスコアを基に行っていた設置判断をAIが行っている。ルールベースでは設置できていなかった部分の利用件数を精緻に予測し、採算性が見込める場所に設置していく。データが蓄積されるたびにAIの精度も上がり、直近では新設置の5割近くがAIベースで設置できている。「AI活用以前は機会損失部分だったので、これは大きなビジネスインパクトを出した事例だ」(中村氏)
●Next:全社レベルのAI活用に向けた4つの重点施策とは
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