TISは2023年5月16日、AI非財務定性審査クラウドサービス(SaaS)「二十一式人工知能付自動与信審査回路」(開発元:H.I.F.)を販売すると発表した。情報が乏しい新規取引先や、創業/スタートアップ企業の与信審査が可能になる。
TISが販売する「二十一式人工知能付自動与信審査回路」は、H.I.F.による、AIを活用して非財務情報を定性調査する与信審査クラウドサービス(SaaS)である(図1)。情報が乏しい新規取引先や、財務状況を評価しにくい創業/スタートアップ企業の与信審査が可能になる。
H.I.F.は、与信審査サービス、信用保証業、家賃保証業、決済代行業、債権流動化事業、銀行代理業などを営む事業者。2022年1月に二十一式人工知能付自動与信審査回路をリリースしている。
拡大画像表示
専用のAIモデルを用いることで、従来の法人向け与信審査で評価する「財務状況」に加えて、非財務面の与信審査が可能になる。非財務面を評価することで、財務主体の審査モデルとは異なる観点でデフォルトリスクを提示可能になる。
具体的には、企業のホームページやSNS、登記簿謄本といった公開情報を基に審査を実施する。この仕組みにより、これまでに取引がない新規取引先の審査も可能である。財務情報を入手できる場合は財務情報を含めて審査する。
約3万件の企業取引データ(遅延や貸倒事故データ含む)に共通する定性的な企業の特徴を学習し、「債権保全」観点で審査を実施する。公開情報が少ない企業であっても、類似する企業取引データを利用して、信憑性のある評価が可能としている。
過去の取引データをAIに学習させることで、デフォルト率を0.176%(HIFにおける過去取引約3万件弱の引受債権を対象に算出)に抑えるとしている。この数値は、業界平均である1.08%(2022年12月の日本リスク・データ・バンク会員金融機関約70社におけるデフォルト率)の約6分の1に当たる。未回収リスクが低いことから、同サービス提供元のH.I.F.が債権保証サービスを提供する。
TISは、金融業向けの融資や審査に関するサービス提供の経験を活かし、同サービスの活用提案や導入支援を行う。導入後も、個別のカスタマイズに対応する。今後は、SaaSの提供だけでなく、導入企業ごとの独自の評価項目を審査モデルに反映して提供する個社カスタマイズも検討する。さらに、現在の評価項目に加えて、ESGやSDGsなどの評価軸の追加を検討している。