2023年6月に創業25周年を迎えた米エクイニクス(Equinix)。グローバルで展開する大規模データセンターや、データセンター間のインターコネクションで知られる同社が近年注力するのは、AIやアナリティクスが大量に走るデジタルインフラに求められるプラットフォームの提供だ。日本法人のエクイニクス・ジャパンは2023年7月10日、2023年度の事業戦略説明会を開き、注力領域での戦略や取り組みを説明した。
国内外で進んだデータセンターの新設・買収
2023年6月に創業25周年を迎えたエクイニクス。1998年にインターネットエクスチェンジ‘IX)事業からビジネスをスタートし、2000年代は主にデータセンターやデータセンター間のインターコネクションの事業をグローバルで展開。その後のクラウドの出現に早い段階で対応し、クラウドサービスの根幹を担う各国のデータセンター間をつなぐエコシステムを整備してきた。
発表会の冒頭、エクイニクス・ジャパン 代表取締役社長の小川久仁子氏(写真1)は、グローバルおよび日本での2023年前半までの動向を、データセンター、パートナーシップ、デジタルサービスの3つの軸から振り返った。
まずエクイニクス全体のハイライトとして、グローバルの事業エリアが拡大。APAC、EMEA、米国の3地域でデータセンターの新設や買収が進んだ1年だった。グローバルネットワークの相互接続サービス「Equinix Fabric」などのデジタルサービス事業も順調に展開が進んだという(図1)。
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図2は日本国内のハイライトである。2022年は日本においてもデータセンター拡充が進んだ。東京や大阪の都心型データセンターは顧客からの需要が高く、当初の計画よりも数カ月前倒しで拡張を行った。
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小川氏は、顧客の成熟度に合わせ、デジタルインフラで必要とされていく要素として、「さらなる分散化」「より柔軟なクラウドへの接続性」「エコシステムのさらなる活用」「オンデマンドへの高い需要」「サステナビリティへの高い要求」の5つを挙げた。
AIの能力を最大化するインフラ/プラットフォーム
上述の5要素を踏まえ、小川氏はエクイニクス・ジャパンが2023年に注力する戦略を説明した。掲げたのは、「AIと『Platform Equinix』の融合」、「エコシステムの進化」、「サステナビリティの実践」である。
これらの前提となるのが、デジタルインフラの役割を前提とした図3のプラットフォーム構想である。グローバルブランドのIBXデータセンターを基盤に、インターコネクションサービスによってITインフラサービスとデジタルサービスを融合する構想だ。ユーザーは、1つのプラットフォーム上で相互接続し、デジタルエコシステムに参加した形でビジネス推進を行う。「エクイニクスのプラットフォームがマーケットプレイスとなって、さまざまなサービスを届けようとしている」(小川氏)という。
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小川氏によると、エクイニクスは、AIの能力を最大化するインフラ/プラットフォームに注力し、すでにグローバルでは「Platform Equinix」の先進事例も現れている。その実装にあたり必要な要件として、大量のデータを扱えるインフラ、クラウドの近接性、低遅延、自動化を挙げた(図4)。
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そのグローバル事例の1つが、オーストラリアのシドニーを拠点とするAIの医療テック企業Harrison.aiの取り組みである。Harrison.aiは、AIによるX線診断ソリューション開発のために必要な計算能力を持つデジタルインフラへの拡張を求め、シドニーにあるIBXデータセンターと契約し、NVIDIAの「DGX A100」をシステム稼働基盤に選んだ。
新しいインフラはAWSのシンガポールリージョンに直接接続し、そこをハブに、AIモデルのトレーニングとデータ収集を実行する海外の放射線科医ネットワークと相互接続を確立した。ビジネス成果として、肺疾患のより正確な診断を可能にする世界初の胸部X線画像ソリューション「Annalize CXR」の立ち上げに成功したという。
図5は、エクイニクスのグローバルクラウドエコシステムの最新マップだ。小川氏は、「見てのとおり、グローバルでさまざまなクラウドベンダーの接続拠点を有している。多様な顧客のビジネスを支援できる環境を備えていることを示すものだ」と強調した。
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●Next:英OQCの量子コンピュータ稼働基盤、サステナビリティ施策
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