JR西日本のコンタクトセンターを運営するJR西日本カスタマーリレーションズ(JWCR)は、コンタクトセンターでの通話内容を要約する用途で生成AIを導入した。2023年5月~8月の検証では要約作業を含めた後処理時間を18%~54%削減した。AIスタートアップのELYZA(イライザ)がAzure OpenAI ServiceのGPTをベースに開発した生成AIを利用した。ELYZAが2023年9月21日に発表した。
JR西日本のコンタクトセンターを運営するJR西日本カスタマーリレーションズ(JWCR)は、コンタクトセンターでの通話内容を要約する用途で、生成AIを導入した。2023年5月~8月に実施した検証で要約作業に要する時間を削減できたことから、本番運用を開始した(画面1)。
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JWCRのコンタクトセンターでは、月間で約7万件の問い合わせを電話で受け、応対記録をテキストで保存している。その際、オペレーターが応対記録を要約しているが、要約作業に大きな労力がかかり、オペレーターごとに要約品質のばらつきもあったという。
新たに導入したAIシステムでは、電話応対後、音声認識によって書き起こしたテキストを貼り付けるだけで、自動で要約結果を出力できるようにした。これにより、オペレーターによる要約作業やスーパーバイザーによるチェック作業にかかる負荷が減るほか、要約品質が均質化することでVOC(顧客の声)も分析しやすくなる。
検証では、AIの精度を検証したほか、要約AIの利用有無による後処理時間の長さを比較した。後処理時間が長い3つの業務領域 (問い合わせ、意見・要望、介助申込) に対して、電話要約AIを利用すると、後処理時間が18%~54%短くなった(図1)。
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生成AIに、ELYZAがAzure OpenAI ServiceのGPTをベースに開発したものを使っている。問い合わせ内容によってGPT-3.5とGPT-4を使い分けることで、精度を大きく下げることなくコストを抑えている。
また、AIシステムの構築にあたっては、要約処理の前に音声データからフィラー(不要語)を除去してAIが要約しやすい形式にデータを整える前処理システムを開発。加えて、要約出力後にJWCRの表現や表記のルールにしたがって記載を修正する後処理システムも開発した。