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スパコンを活用した「津波災害デジタルツイン」の開発に着手─東北大、北大、NECなど5組織

2023年9月26日(火)IT Leaders編集部

東北大学、北海道大学、NEC、RTi-cast、LocationMindの5組織は2023年9月25日、「津波災害デジタルツイン」の開発を同年9月に開始したと発表した。津波におけるハザードと社会への影響を予測し、適切な災害対応をリアルタイムで提示する。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) の研究課題「スマート防災ネットワークの構築」の活動として取り組む。

 東北大学、北海道大学、NEC、RTi-cast、LocationMindの5組織が開発に携わる「津波災害デジタルツイン」(研究開発責任者:東北大学教授 越村俊一氏)は、津波におけるハザードと社会への影響を予測し、適切な災害対応をリアルタイムで提示するシステムである(図1)。

図1:津波災害デジタルツインの仕組み(出典:東北大学、北海道大学、NEC、RTi-cast、LocationMind)
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 津波災害発生時の対応においては、人流への影響、建物の被害分布、交通網を含むライフラインなど被害状況の早期把握が必要である。「しかし災害時に、これらのデータをリアルタイムで入手し、迅速かつ効果的な対応に結び付けることは困難だった」(5組織)。

 こうした中、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では、AI技術を活用して、津波や風水害における人的被害の軽減、災害対応機関の人手不足解消、迅速な災害対応などを目指した研究開発を推進してきた。

 津波災害デジタルツインは、研究課題「スマート防災ネットワークの構築」(プログラムディレクター:東京大学教授 楠浩一氏)の活動として取り組む。2011年3月発生の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の甚大な津波災害の教訓を踏まえて開発した「リアルタイム津波浸水被害予測システム」の発展形に位置づけられる。

 2023年8月から東北大学サイバーサイエンスセンターで運用を開始したスーパーコンピュータ「AOBA」(NECの「SX-Aurora TSUBASA」を中核に構成)や、国内の各スパコンを活用し、日本の津波災害に対するレジリエンスの向上に貢献するとしている。

 津波災害デジタルツインは、(1)ハザード予測層、(2)社会影響予測層、(3)最適対応層の3機能で構成する。3機能について以下のように説明している。

 (1)ハザード予測層では、津波浸水範囲や浸水被害などのハザードを正確に予測する。空間分解能10mという詳細な津波浸水予測を地震発生から5分を目安に完了させる。災害前後の地震動・地殻変動や潮位条件・沖合水位などの地球観測データと、海岸施設や重要施設など社会基盤のセンシングデータをリアルタイムで取り込み、シミュレーション予測を行う。

 (2)社会影響予測層では、ハザード予測層から得られる浸水予測データを基に建物被害や人流への影響を予測する。特に、携帯電話の位置情報を活用した人流データなど社会動態データをリアルタイムで取り込むことで、マシンラーニング(機械学習)を活用した曝露人口のリアルタイム予測や、人流の滞留予測などが可能になる。また、平常時も人流データの時系列のモニタリングにより、大きな人流変化がある大規模なイベントや災害の発生を迅速に検知する。

 (3)最適対応層では、ハザード予測層と社会影響予測層が出力したデータを入力として、予測される社会への影響・被害を最小化・回避するための適切な対応を導き出す。SX-Aurora TSUBASAによる疑似量子アニーリング技術と量子アニーリング技術を併用し、組み合わせ最適化問題として処理する。

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