[市場動向]

NICT、既存の光ファイバを用いて毎秒301テラビットの伝送実験に成功

2023年12月1日(金)IT Leaders編集部

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は2023年11月30日、現在市中に敷設されているものと同じ光ファイバを用いて、毎秒301Tbit(テラビット)の伝送実験に成功し、世界記録を更新したと発表した。既存の光ファイバでは未使用だった新しい波長領域を開拓するため、光増幅器と光強度調整器を新たに開発し、多数の波長を利用可能にすることで達成した。今回開発した技術が通信需要が高まる将来において、光通信インフラの通信容量拡大に貢献するとしている。

 情報通信研究機構(NICT)は、現在市中に敷設されているものと同じ既存の光ファイバを用いて、毎秒301Tbit(テラビット)の伝送実験に成功し、世界記録を更新した。

 既存の光ファイバでは未使用だった新しい波長領域を開拓するため、光増幅器と光強度調整器を新たに開発し、多数の波長を利用可能にすることで達成した。今回開発した技術が通信需要が高まる将来において、光通信インフラの通信容量拡大に貢献するとしている(図1)。

図1:マルチバンド波長多重を用いた光ファイバ伝送イメージ(出典:情報通信研究機構)
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 「増大し続ける通信量に対応するため、光ファイバで使用可能な波長領域を拡大したマルチバンド波長多重技術の研究が進んでいる。新たな波長領域の利用は、既設の光ファイバを用いた伝送システムを延命し、多額の設備投資をせずに通信容量を増やす方法として有用である。また、研究が進む新型光ファイバとマルチバンド波長多重技術の組み合わせで、将来にわたって光ファイバ伝送システムの大容量化が可能になる」(NICT)

 NICTはこれまで、希土類添加光ファイバを用いた増幅器とラマン増幅の増幅方式を駆使して、商用利用中の波長帯(C帯、L帯)に加え、一般的に商用化されていないS帯も使用した光ファイバ伝送システムを構築し、大容量伝送を実証してきた。さらなる大容量化には新たな波長領域の開拓が必要だが、これまでE帯を含んだマルチバンド波長多重光ファイバ伝送システムは実現されていなかったという。

 今回、NICTのフォトニックネットワーク研究室を中心とした国際共同研究グループが製作したE帯向けビスマス添加ファイバ光増幅器・光強度調整器を利用して、既存の光ファイバで世界最大の波長領域を持つ光ファイバ伝送システムを開発した。伝送システムは、光ファイバ、複数の光増幅器(ビスマス添加光ファイバ増幅器、ツリウム添加光ファイバ増幅器、エルビウム添加光ファイバ増幅器、ラマン増幅)、送受信器、光強度調整器、合波器/分波器などで構成する(図2)。

図2:伝送システムの概略図(出典:情報通信研究機構)
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 E帯、S帯、C帯、L帯を合わせて、世界最大の27.8THz(テラヘルツ)の周波数帯域幅(212 nmの波長幅)、1097の波長数(E帯: 315波、S帯: 315波、C帯: 200波、L帯: 267波)を用いて、毎秒301テラビットの波長多重信号の51km伝送を達成した。信号の変調に情報量が多い偏波多重QAM方式を採用し、64QAMをE帯、256QAMを S帯、C帯、L帯に用いた。過去の成果と比較して、伝送容量23%、周波数帯域幅41%の増加を達成している(表1)。

表1:過去の成果との比較(出典:情報通信研究機構)
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 「Beyond 5G(6G)では、新しいサービスにより爆発的に通信量が増加することが予想される。既存の光ファイバ伝送システムに新たな波長領域を導入して伝送容量を拡大することで、既設システムの耐用年数の延長に貢献できる。さらに、新型光ファイバと組み合わせることで、将来にわたる通信需要の増大に対応可能な光ファイバ伝送システムの実現が期待できる」(NICT)

 NICTは今後、光ファイバ伝送システムのさらなる伝送能力の向上を目指し、波長領域の拡張を目指す。また、マルチバンド波長多重技術と新型光ファイバを駆使して、将来の通信需要を支える光通信インフラの基盤の確立を目指すとしている。

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