オリンパス(本社:東京都八王子市)は2024年11月19日、内視鏡の映像処理をクラウドで実施するクラウド内視鏡システムの実証実験をNTTと共同で実施し、ネットワーク遅延が要求仕様の範囲内に収まることを確認したと発表した。具体的には、サーバーから約150km離れた環境で遅延値1.1msとなり、目標の1/10で転送が可能なことを実証した。
精密機器・医療機器メーカーのオリンパスは、2024年3月からNTTと共同で、クラウド上で映像処理を行う内視鏡システムの実証実験を行っている。その結果、ネットワーク遅延が要求仕様の範囲内に収まることを確認した(図1)。
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「現在の内視鏡は、内視鏡装置内で全機能を処理しており、性能の限界やメンテナンス性が課題となっている。また、リアルタイムでの遠隔診断など新たなニーズが生まれている。こうした中、映像処理などの処理負荷が高い一部機能をクラウドで分担する“内視鏡のクラウド化”が議論されている」(オリンパス)
内視鏡映像をクラウドで処理するためには、内視鏡機器とクラウドを接続するネットワークが重要である。ネットワーク遅延が大きいと、内視鏡の操作に対する映像の遅れが発生し、内視鏡の操作者に違和感を与える。実験では、許容するデータ転送の遅延値を、4K/60fps映像の1フレーム以内(16ms以内)にすることを目標に定めた。
実証実験のシステムは、オリンパスの内視鏡と、高速低遅延を特徴とするNTTの全光ネットワーク(APN:オールフォトニクスネットワーク)「IOWN APN」を組み合わせて構成した(図2)。内視鏡映像を入力するデバイスから約150km離れた映像処理を行うサーバー間をAPNで接続している。
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内視鏡スコープで撮影した映像をエッジデバイスに送り、映像を非圧縮のままAPNを通じてサーバーに転送した。サーバーは、処理済みの映像を返送し、最終的に操作者が閲覧するモニターに処理後の映像を出力した。実験の結果、遅延値は1.1ms秒と、目標の1/10 で済んだ。
また、距離約5mのケーブルによるローカル接続(内視鏡内での処理を想定)環境との比較では、内視鏡操作者の目視確認で、遅延と揺らぎの両面で差が感じられないことを確認(画面1)。「APNの遅延時間は、映像処理のボトルネックにはなり得ないことを実証した」(両社)としている。
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