矢野経済研究所は2025年5月29日、国内企業が利用するERP/CRM/SFAにおけるSaaSの利用率を調査し、経年比較と導入予定分析を発表した。た結果を発表した。2016年調査と比べて利用率が増加し、財務・会計は5.7ポイント、人事・給与は8.3ポイント、販売管理は3.9ポイントのそれぞれ増加となった。
矢野経済研究所は、ERP(統合基幹業務)、CRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援)の各業務アプリケーションにおけるSaaSの利用率を調査した。2024年6月~10月の調査期間で、国内の民間企業を対象に、ERP(財務・会計、人事・給与、販売管理、生産管理・SCM)およびCRM/SFAの導入実態に関する調査を実施し、453社の有効回答を得ている。調査結果から、経年比較と導入予定の分析を示している。

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2016年調査と比べて、各業務アプリケーションでSaaSを選択する企業が増加している。財務・会計は5.7ポイント、人事・給与は8.3ポイント、販売管理は3.9ポイント、生産管理・SCM(プロセス製造業)は5.5ポイント、生産管理・SCM(加工組立製造業)は0.3ポイント、CRM・SFAは39.6ポイントとそれぞれ増加している「新機能をいち早く使えることなどが、SaaSの利用増につながっている」(矢野経済研究所、図1)。

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矢野経済研究所は、「新規導入・更新計画あり」の企業が「次回はSaaSを予定している」と回答した割合を挙げ、SaaSを選択する企業は今後も増加するとしている。生産管理・SCMは回答対象数が少なく参考値として扱うものの、それ以外では、次回はSaaSと回答した企業の割合が2割を超える。財務・会計は25.6%、人事・給与は32.4%、販売管理は21.2%、CRM・SFAは35.3%だった(図2)。
「販売管理や生産管理・SCMは、これまで自社開発の割合が高かったが、SaaSのシステム運用・保守負荷の少なさは人材不足を課題にする企業にとってメリットがある。今後、この領域でもSaaSへの移行が進むと見られる」(同社)。
同社は、国内企業がERPを導入する際、不足する機能をアドオンで補うことが多いが、近年は製品の機能に業務を合わせるFit to Standardのアプローチを選択するプロジェクトが目立つことを挙げ、SaaSが導入しやすい環境が醸成されたとしている。とはいえ、すべて標準状態のままで導入するケースは少ないという。
また、SaaSベンダー各社が、自社に不足する機能を補ってユーザーに提供する手段としてAPI連携に注力している点を指摘。クラウドサービスならではの柔軟性や多様性が、今後もSaaSの利用率を押し上げると指摘している。