日本ハム(本社:大阪府大阪市北区)は、加工事業における需要予測と在庫引当業務にAIを導入し、欠品抑制と在庫適正化を実現した。SAPジャパンおよびアクセンチュアの支援の下、SAP Business Technology Platform(SAP BTP)を活用したシステムを構築し、2025年4月に全面稼動させた。SAPジャパンが2026年4月21日に発表した。
日本ハムは、ニッポンハムグループとして国内外72社体制で事業を展開している。同社は全国に物流センターを展開しているが、センターごとに業務が個別化していた。加工事業では在庫の引当や需給計画の立案を担当者の経験と勘に頼っており、判断のばらつきから欠品や過剰在庫が生じていた。属人的な業務プロセスが業務負荷を高め、ヒューマンエラーを招いていた。
2018年、同社は基幹システムの刷新プロジェクトに着手した。SAP S/4HANAへの移行と並行して、周辺システムにおいてはAIの活用にも取り組んだ。AIを活用した在庫引当システムは2022年4月に最初の拠点で稼働を開始し、全センターへの展開を完了している。AIを活用した需要予測システムも2025年4月に稼働させた(図1)。
図1:日本ハムがS/4HANAとSAP BTPで構築した基幹システムおよび周辺システムの概要(出典:SAPジャパン)拡大画像表示
DX推進部部長の長谷川憲史氏は「単なる工数削減ではなく、AIを業務プロセスに組み込むことで、誰でも高い精度で業務を遂行できる体制の構築を目指した。熟練社員が減る中、AIとデータによってオペレーションの転換を図ることが狙い」と述べる。
システムの導入にあたっては、SAP Business Technology Platform(SAP BTP)によるSide by Side開発により、S/4HANAのコアに手を加えることなくAI機能を拡張した(図2)。合意形成においても、早期にプロトタイプを経営層や現場に示し、言葉による要件定義にともなう認識のズレを防いだ。この結果、パイロット拠点を起点に全センターが主体的に参加する機運が生まれ、当初計画より1年前倒しでの展開完了につながった。
図2:日本ハムがAIを活用して効率化した3つの業務(出典:SAPジャパン)拡大画像表示
システム稼働後は、欠品率が前年比で明確な改善効果を示し、在庫水準の最適化も達成した。需要予測では、営業担当者が手作業で行っていた過去データの分析と予測値の入力を自動化でき、販売計画の作成工数が大幅に減る見込みである。在庫引当業務でも、複雑なルールをAIが自動判別することで組織全体の業務水準が向上した。
次の取り組みとして同社は、生成AIを活用したフード発注システムのPoC(概念検証)を進めている。食肉部門では現在、営業担当者が商談先でメモした注文内容を電話やFAX、メールで本社に送り、受注担当者が手作業でシステムに入力している。新システムでは、音声やチャットでの自然言語による入力をもとに生成AIが発注データへと自動変換し、SAP S/4HANAに連携する。長谷川氏は「実現できれば、現場の事務作業は実質的にゼロに近づく」と期待している。
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