[ザ・プロジェクト]

オープン系統合に仮想化を!活用地道な作業でコストを4割圧縮─カシオ計算機

ザ・プロジェクト 第2回

2008年11月26日(水)川上 潤司(IT Leaders編集部)

カシオ計算機は2008年10月までに、社内に散在していたオープン系の部門サーバー360台を統合。マシンルームで一元管理することで、大幅なコスト削減を成功させた。先進的な取り組みが順調に進む裏には、失敗を恐れない探求心と地道な検証作業があった。(聞き手は本誌副編集長・川上潤司)

─ 仮想化技術を使ったサーバー統合を進めていますね。

矢澤 はい。部門サーバー500台を対象に、2005年後半から統合を進めています。部門サーバーとは、ユーザーが自部門の予算でハードやソフトを購入し、自分たちで運用しているサーバーのことです。これまでに、360台分のサーバー機能を64台に集約しました。

─ それらはすべて、仮想化による統合ですか。

国吉 いいえ。今のところ、仮想化しているのは155台分です。仮想化することが目的ではありませんから。

─ なんでもかんでも仮想化しているわけではない?

国吉 システムの用途によって、統合の手段を使い分けているんですよ。例えば、サプライチェーンマネジメントのような大規模かつミッションクリティカルなシステムや、仮想化に対応していないシステムは、そのまま1枚のブレードを占有させます。このほか、各部門のファイルサーバーは、大容量ファイルサーバーに集約しています。

─ それにしても、IT部門の目が行き届かないサーバーが社内に500台も乱立していた。何に使っていたんですか。

国吉 主に情報共有用のファイルサーバーや、イントラネットで情報発信するためのWebサーバーです。

矢澤 うちの会社は、研究開発部門をはじめITに詳しい社員がたくさんいます。ちょっとしたサーバーなら、自分たちで構築できてしまうんですよ。

─ 確かにそれは台数が増えますね(笑)。効果はどうだったんですか。

国吉 まず、サーバー投資額の削減ですね。IT部門による一元管理や集中購買により、調達や運用にかかるコストを40%圧縮できました。このほか、ユーザー部門の負荷軽減や運用品質の高度化、セキュリティ強化といったメリットもあります。

─ なるほど。これまでの投資額は?

矢澤 今のところ、1台を統合するために100万円前後というところでしょうか。それが360台分ということです。社内にはまだ140台の部門サーバーが残っていますが、これらについても取り組みを継続し、2009年には統合し終える予定です。

インフラ改革3つの取り組み

写真:矢澤 篤志氏
矢澤 篤志
カシオ計算機 執行役員
業務開発部長
1981年にカシオ計算機入社。海外営業や物流企画などの部門を経験後、1996年に業務開発部に配属。ERPシステムをはじめとする大規模プロジェクトを手がける

─ 3億6000万円は大きい。きっかけはやはりコスト削減だったんですか。

矢澤 まずご理解いただきたいのは、今回の部門サーバー統合は情報インフラ改革という大きな流れの1つであるということです。

─ というと?

矢澤 話は2002年にさかのぼります。この年、創業以来初の赤字に転落した当社では、徹底したコスト削減と業務効率化が急務になっていました。そこで、社内のIT部門である我々は2003年、情報インフラ改革という一連の取り組みを開始したわけです。今回のサーバー統合は、この改革における第3の取り組みなんですよ。

─ ほかの2つの取り組みとは?

国吉 簡単にお話ししましょう。まず、2003年に国内外の拠点を結ぶネットワークを刷新しました。インターネットVPNや広域イーサネットを採用し、グループ内の通信を大幅に高速化・低価格化したんですよ。

─ そのころ、インターネットVPNを導入している企業はほとんどなかったと記憶しますが。

国吉 はい。通信ベンダーも「まだ安定していないので、おすすめできない」と言っていました。でも、我々としては新しいものでも効果があるなら取り入れたかった。もちろん、2〜3カ月かけてきちんと検証はしましたよ。

山崎 それが、都道府県ごとにNTTの局内設備が異なっていたんです。このため、かなり広い地域をカバーして検証しなければなりませんでした。実際、拠点によっては接続できないところもありました。ルーターの設定を変えるなど工夫して乗り切りましたけど。

─ 淡々とおっしゃいますが、ネットワークの不具合を見つけて原因を特定し、解決するまでにはかなり手間がかかるはずだ。本当に2〜3カ月で済んだ?

国吉 …いや、本当はもうちょっとかかっています(笑)。

─ 山崎さんのがんばりもあって、ネットワークを無事刷新できた。次は?

矢澤 2004年に、基幹業務システム向けサーバーの統合を開始しました。従来、IBMのSystem iで動く基幹業務システムがグループ会社を含めた20拠点に分散していたんです。

─ System iというと、以前はAS/400と呼んでいたホスト機ですね。

国吉 そう。当時、ホストの世界ではCPUを論理的に分割する技術が確立し、仮想化はもう当たり前。しかも前年のネットワーク刷新により、システムを遠隔利用する環境は整っていました。

─ そこで、本社にサーバーを集約することにした。

山崎 ええ。すでに、20台のうち17台分の機能を2台に集約済みで、2009年には残る3台分の統合も完了する見込みです。最終的に、物理的なサーバーは2台になります。

画像:図1
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