サーバーの集約と稼働率の向上、電力消費の削減などに向けて、仮想化OSの採用が急ピッチで進んでいる。だがF5ネットワークスのダン・マット上級副社長は、「サーバーレベルの仮想化は、まだ始まりに過ぎない」と言い切る。
「世界トップクラスの大手企業、Web企業や通信会社は、アプリケーション配信ネットワークの仮想化とファイルストレージの仮想化を進めている。前者を実現すれば、例えばアクセス数やネットワークのトラフィックの状態に関わらず利用者は快適なレスポンスを得られる。後者はシステムを運用する企業にとって、ストレージコストを最適化するために重要だ」。これらが揃えば、企業は自分のやり方でクラウドコンピューティングを実現できるという。
そうした“企業内クラウド”に向けて、F5は「BIG-IP」と「ARX」という製品を提供する。BIG-IPは独自開発の専用OS「TMOS」を搭載したスイッチ機器とソフトウェア製品群。Webアプリケーションの高速化やデータのキャッシングなどアプリケーション稼働のチューニングをネットワーク側で可能にする。ARXは大量のNAS(ネットワーク接続ストレージ)機器を仮想化、1台の巨大なストレージに見せる装置である。
ただし単にBIG-IPやARXを導入するだけで、想定した性能や効果が得られるわけではない。そこでF5は主要なIT企業との提携・協業を進めている。マイクロソフトやヴイエムウェア、オラクル、SAPなどだ。2008年秋には、日立製作所とSOA基盤であるCosminexusとBIG-IPで、富士通とはストレージシステムであるETERNUSとARXに関して協業を発表している。
開発者支援も行っており、「DevCentral」と呼ぶオンラインコミュニティには約3万人が参加しているという。