エンタープライズサーチで企業が得られる恩恵は、必要な情報が見つかるという単純なものではない。日常的に発生する情報に含まれる潜在的な価値を、製品やサービスにおいて顕在化させることができるのだ。エンタープライズサーチがもたらす、真のインパクトをまとめた。
ビジネスの現場では今、より高い付加価値を創出するために、これまで以上に高度な情報活用が求められている。だが、実際にはその難易度は日増しに高まるばかり。ありとあらゆる業務に情報システムが浸透して、各システムが日々発生・蓄積する情報が飛躍的に増加したためだ。コミュニケーションチャネルの多様化によって情報の管理が複雑化したことも、情報活用を一層難しくしている。逆説的だが、情報量の増大が情報活用を阻害するのである。
インターネット上だけでなく、企業内でさえ情報が氾濫する。そんな時代だからこそ、ファイルサーバーやグループウェアなど企業内のさまざまなシステム(データソース)にアクセスして、横断的に情報を検索するエンタープライズサーチに注目すべきだ。エンタープライズサーチはデータベース内の構造化された情報だけでなく、文書ファイルのように構造化されていない情報を含め、フォーマットに関係なく検索対象に加えられるので、企業は情報活用のレベルを劇的に改善できる(図1)。
ご存知の通り、システムの中から条件に見合う情報を探すサーチ技術は、古くから存在する。だが、従来の技術は「意図した検索結果が得られない」、「アクセスできないデータソースがある」など、企業にとって致命的ともいえる課題を抱えていた。適切でない情報や限られた情報しか得られなければ、結局は使われなくなってしまう。これでは、新サービスの企画や製品開発、業務改善の方針の判断を経験や勘に委ねる現状から抜け出せない。
ところが、上記の課題はテクノロジの進化によって解消され、エンタープライズサーチのユーザビリティは確実に向上した。今では幅広いデータソースを対象に検索して、ユーザーの属性や意図に応じて結果を表示したり、ナビゲーションによって必要な情報に効率よくアクセスしたりできる。「サーチ技術?そんなの役に立たないよ」といった固定観念を捨て去る必要がある。
エンタープライズサーチはコミュニケーションツールとしての役割も果たす。まず検索によって適切な情報が見つかることで「情報とヒト」をつなぎ、続いて情報の作成者と検索者、すなわち「ヒトとヒト」を結びつける。そこから最終的に、部門や担当業務など組織の枠を越えたコラボレーションに発展する。
このような特性を持つエンタープライズサーチは、もはや単なる情報探しのツールではない。エンタープライズサーチに積極的な企業は、情報活用に欠かせないプラットフォームとしてエンタープライズサーチを位置づけている。
日本企業の強みに磨きをかける
企業にとってエンタープライズサーチの利点は、玉石混交の情報から“玉”となる情報を見つけられること。このことは、日本企業がこれまで成長の源泉としてきた強みに、さらに磨きをかける可能性を秘めている。
国内の製造業やサービス業は現場の知恵や顧客の声を効果的にすくいあげ、新コンセプトの製品開発やきめ細かい顧客サービスによってビジネスイノベーションを実現し、競争力を培ってきた。もともと、こうした「非構造化情報」をどう活用するかは、業務として定型化しづらく、情報の扱い方も個々の担当者の感性に依存するしかなかった。だがエンタープライズサーチは、こういった非構造化情報の管理・活用を企業が組織的に推進して、イノベーションを加速する切り札の1つになり得る。
製品開発や顧客サービスなど、企業の戦略と密接に関わるコアプロセスの改善に用いると、生産性の向上や競争優位の確立に直結する大きな成果を上げられる。実際、研究・開発業務でエンタープライズサーチを活用すれば、研究に要する総コストや開発工数の削減だけでなく、研究者のアイデアを活性化して、より創造的な成果を生み出す効果が期待できることはいくつかの企業ですでに実証されている(表1)。逆に言えば過去に実施した膨大な数の研究成果や試行の記録が、多くの企業において活用されないまま埋もれているのだ。
業種 | 活用分野 | 期待される主な効果 |
---|---|---|
輸送機器メーカー | 研究・開発業務プロセス |
|
消費財メーカー | 販売店からの問合せ窓口業務プロセス |
|
精密機器メーカー | アフターサービス業務プロセス |
|
アフターサービス業務にエンタープライズサーチを導入した場合も同様だろう。既存製品の弱点を的確に補い、しかも使い勝手がよい製品を生み出すことも可能になる。エンタープライズサーチによって、既存製品の修繕情報や顧客対応の内容を見つけやすくなるので、次期製品の設計に反映しやすい。
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