買収による相乗効果で不況の乗り切りを図る[日本オラクル 証券コード4716]
2009年5月25日(月)長橋 賢吾(フューチャーブリッジパートナーズ 代表取締役)
先の見えない不況の中、多くのIT企業が受注の大幅な落ち込みという厳しい状況に直面している。そんな中で買収による相乗効果を軸にした戦略により、厳しい時代を乗り切る構えの企業がある。日本オラクルだ。今回は、同社にスポットを当てる。
日本オラクルの事業ポートフォリオ
周知のことだが、日本オラクルは自社でR&D(研究開発)や、買収をしているわけではない。意思決定をするのは親会社の米オラクルであり、日本オラクルは国内におけソフトウェア製品のライセンス販売や、保守サポート、コンサルティングを手掛けている。
同社の事業ポートフォリオを見てみよう。08年5月期の売上高1141億円は、大きく4つのセグメントに分けられる。(1)データベース・ミドルウェア分野(以下、DB&M/W)でのライセンス売上407億円(売上比35.7%)、(2)ERP・CRM」(以下、Apps)が64.2億円(売上比5.6%)、(3)データベース・アプリケーションなどのソフトウェア更新・保守などのプロダクトサポート(以下、サポート)が502億円(売上比44%)、(4)コンサルティング・教育事業などが166億円(売上比14%)である。
4つのセグメントが今後どう展開していくのか。これを考えることが同社の企業価値を判断する上で欠かせない。そのヒントが図1に示す各セグメントの売上高前年比の推移だ。05年5月期〜08年5月期までのDB&M/W分野のライセンスの成長率は年平均+2.3%。一方、Apps分野は同+22.7%、サポート分野は+12.8%、コンサルティングその他は+10%である。ただしサポートやコンサルティングは、DB&M/W、Appsのライセンス販売に依存するので重要なのはDB&M/Wなどだ。
「Innovation&Acquisition」戦略
前述のように、DB&M/Wライセンスの売上高成長率は+2.3%と低い伸びとなっている。とはいえIDC Japanの調査によれば、2005年〜2010年までの国内データベース市場の成長率は年平均+3.0%。日本オラクルがシェアの過半を占めることを考慮すれば、+2.3%の成長率は妥当といえるだろう。
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